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機動戦士ガンダム 選別の悲願道 作者:ペラネマ
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~開戦~

主人公、ヤルカ・シュタイナー大佐は、第二コロニー群ドライヤードに所属する軍人である。彼は部下たちと共に、ドライヤードの軌道上の安全確認をする任務に就いていた。
 ここ一時間、イース少佐は艦のブリッジで本部に対して報告を行っていた。現在、彼ら第二コロニー群ドライヤード所属の第三母艦ドレッドノートの船員は、ケプラー星軌道上における偵察任務の実施中であり、被害が想定される軌道上のデブリ、他軍の宙域侵犯の際の監視が主な任務となっていた。だが、その報告が終わった後でさえ、ウェイ・イース少佐には、既に暗黙の了解となった雑務が残っていた。
「そこの君。」
ブリッジを出て、モビルスーツの格納庫に向かう途中、目の前が見えないぐらい大量のパック済み食料を、廊下の曲がり角に衝突しながら運んでいる者がいた。服装から察するに、おそらく艦の食事係だろう。イースは、雑な梱包からはみ出して宙に浮いているパックを拾ってやりながら言った。
「シュタイナー大佐はどこにおられるかわかるか?」
「・・・?、大佐なら、おそらくいつもどうり格納庫かと。・・どうかしたんですか?」
「ん。いや、少し話があってな。ご苦労。」
「はっ。少佐殿も。」
振り返ると、炊事係はさっきと同じように運び始めていた。また、はみ出したパックがこちらに流れてくる。それを不快に思った彼は、今度はそれを炊事係に投げつけた。力の方向を与えられたパックが宙を舞い、炊事係の頭に的中する。彼は何かぼやきながらそれを受け取った。
「第四中継地点まで艦内は無重力だ。前を見て進めよ!」
「は、はい!」
一歩踏み出しただけで、何もせずともこの空間では体は前に持続して進むことができる。イース少佐は、こんな無重力があまり好きではなかった。
「・・・やはり、あの人は格納庫にいるのか・・・・。」

*** ~格納庫、戦闘シュミレーション中~

一秒でも多く、相手の動きを予想する。そのために相手モビルスーツの背部、脚部スラスターの動き、頭部メインカメラの動き、銃身の方向など手掛かりになりそうなもの全てを観察する。だが、観察に気をとられて、相手に背後をとられてしまう。相手の銃身が自分に向く。コクピット内でロックオン警報がけたたましく鳴り響く。彼は攻撃を回避するために、半ば強引に上方向へのベクトルをスラスターで右方向に変える。
「ちょっと乱暴なんじゃない?大佐さんよォ!」
モビルスーツの関節が軋む。体に凄まじい重力がかかる。この物理的圧力を感じるたび、彼は自分の悪い癖を疎ましく思う。だがまだ、危機的状況ではない。戦闘開始から三分、すでに彼は相手の射撃がモビルスーツの照準補正システムに頼り切っていることを見抜いていた。そろそろアレがくることも。
「どうした、どうしたァ?って、くそっ。弾切れか・・。」
相手はマニュアルどうりデブリに身を隠して、カートリッジを交換しようと、近くのデブリ群に入っていく。。すかさず彼は追撃する。もう彼には、たとえ周りのデブリを避けながらでも、相手の考えが手に取るようにわかっていた。(コクピットをガードしながら近接戦闘準備。)彼は脳内で復唱した。相手はコクピットをシールドで覆い、サーベルを構える、(スラスターを逆噴射後、急速旋回して近接戦闘に持ち込む。)
スラスターを逆噴射、(だが、近接戦闘にはならない。)彼はそう考え、同時にそう決意した。その瞬間、相手の動きが一瞬止まった。彼が引き金を引き、通り魔的に相手のモビルスーツの脚部を破壊し、距離をとる。
「ぐっまだd・・・」
「いいや、もう終わりだ。」
彼の眼前にいた機体は、デブリと激突した。

***

「っだー!くそっ、なんで勝てないんだ。」
グンダ伍長は戦闘シュミレーションポッドの操作盤を拳で叩いた。
「それはおそらく、君がマニュアル人間だからだろう。」
ヤルカ・シュタイナーはすました顔で言った。物珍し気に観戦しに集まっていた作業員たちも各々の作業に戻り始めた。
「もう一戦してk」
「いい加減作業に戻れ!テメェじゃ何回やったって結果は同じだ。」
上司にしばかれた伍長は、渋々と何か嫌みをつぶやきながら去って行った。そんな彼にシュタイナーは、戦闘中はできるだけ逆噴射は使わない方がいいと言ってやった。やはり毎回、偉そうにしているやつを懲らしめるとスカッとするなと彼は思った。
「すいませんね。うちのバカが。」
「いや、そんなことはないよ。こんな辺境の軍隊なんて、どこも角のあるやつばかりさ。」
「シュタイナー大佐、よろしいですか?」
「ああ、イース少佐。どうした?」
「今回の偵察任務の報告書です。」
「・・・確認しよう。」
イース少佐はタブレット端末をシュタイナーに手渡した。 
「大佐も、訓練ばかりではなく、しっかりと書類仕事もしてもらわないと・・・。」
「はいはい、わかってるよ・・・」
シュタイナーは、報告書のすべてに異常や、間違いがないことを確認した。あいかわらず、堅物のイース少佐らしく、丁寧過ぎる仕事ぶりだった。しかし、ある一点において、彼は物理的な数値上の間違いではなく、感覚的な違和感を感じた。
「どうかしましたか?」
イース少佐は、シュタイナーの先ほどまでとの空気の変化に気付いたようだった。
「デブリの速度が・・・変じゃないか?」
「デブリの?」
「・・・ああ。ほぼすべての中継地点で、速度の違うデブリ群が観測されている。」
「はあ。でも、よくあることでしょう。それに、変というか、ただ速度が異なっているだけじゃないですか。そんなもの気にしていたら時間どうりに・・・」
「だが、特にこの二つのデブリ、片方は他に比べて異常に遅いが、もう片方は異常に速い。このままでは速い方が先に半周して、遅い方に追いついて・・・そこそこ大きいデブリ群になる・・・。まてよ、この座標、ドライヤードの目の前だぞ!」
「⁉」
イース少佐は数秒固まって、すぐにシュタイナーの言っている意味に感づいた。「少佐はほかのすべての中継地点のデブリのデータを洗い出し、最終的にこの地点で合流するデブリ群をしらみつぶしに探せ!私はブリッジに向かう。」
「りょ、了解!」

***

「その話は確かなのか、シュタイナー君。」
「はっ、おそらく確かだと思われます。先ほど、イース少佐の調べた情報によると、ドライヤード目前に集合する隕石群が確認されているだけでも100を超えています。うちすべてが、モビルスーツが入るには十分な大きさです。大隊規模は確実かと。」
シュタイナーはブリッジに戻り、急いで本部のジーズ准将に報告をした。最初こそ、疑うような眼差しをシュタイナーに向けていたが、途中で情報をまとめたイース少佐が合流し、彼がもたらした情報は、結果として、敵の奇襲を裏付けることとなった。
「各小隊をデブリに紛れさせた上で速度調整し、目標手前で全部隊を合流・・・か。どこの部隊かは知らんが、敵はどうしても奇襲をしたいらしいな。・・・よし、シュタイナー大佐、君が作戦を立案し、指揮をとりたまえ。」
「は、はい?」
シュタイナーは目を丸くした。
「ただでさえ、いつもフラフラしている上に、今回は任務報告にすら来なかった君にはふさわしい罰だろう。なに、どうせこちらでは早くには対応できない。今回は君が一番状況を理解しているとみて、任せようじゃないか。上は私が何とか説得しておく。敵の合流まで君の報告通りだとあと5時間。1時間で作戦を本部に送れ。わかったな?」
「りょ、了解。」
そういって、准将との通信は切れた。与えられたのは1時間、彼には時間がなかった。
「まったく、無茶を言ってくれるよ。」
「大佐が任務をちゃんとこなさないから発見が遅れたんですよ。失礼ながら、当然だとは思いますが。」
当然の結果だ、とイースは思った。別に、自分が気付けなかったことを人のせいにしているわけではない。単に、最低限の勤めを果たせなかった大佐を責めているだけだ。だが当の大佐からは、相変わらず嫌みったらしい返答が返ってきた。
「君のような部下がいて助かるよ。」

*** 作戦開始まであと五時間。

「作戦は確認した。なんとか間に合ったようだな。気休めかもしれんが、私は今回、君の作戦に賛同する。あの数だ、下手をしたら我々は甚大な被害を受ける。首尾よくやってくれ。」
「了解。」
通信が切れた後、イース少佐は不思議に思った。なぜこんな重要な作戦を話し合いもせずに大佐と准将だけで決めるのか?ただでさえ練度の低いコロ二ー軍の上、この数の敵に奇襲攻撃を成功させられたら、復旧の利かない壊滅的なダメージを受ける恐れがある。今回の作戦には、地球の列強とは違い、社会的弱者のコロニー独立国にとっては後がない、危機的状況だった。
「船長、私は準備がありますので、後のことはプラン通りにお願いします。」
「了解した。」
イース少佐はブリッジを出て行くシュタイナー大佐を見ながら憧れとも、嫉妬とも違う違和感を感じていた。いや、ずっと感じていたのだ。最初に彼の下につき、コロニー群とはいえ、自由すぎるその振る舞いを見たときから。
「わからないって顔してるな少佐。」
「は、いえ・・・。」
「・・・まあ、難しく考えるな。こんな腐った世の中じゃあ、お偉いさんら貴族どもより、部下の方がよっぽど優秀だなんて、よくあることさ。」
艦長はそういってにやりを笑い、通信機を手に取った。
「総員、戦闘配置!各種船体武装セーフティ解除、モビルスーツもだ。いつでも出れるようにしておけ!」
「「了解!」」

***

作戦開始まで、あと2時間。



注意されるまでやる感じ。

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