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マスター:シチミ大使
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2017/03/01


みんなの思い出

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オープニング

 ――鬼、羅刹の類が姿を見せるのは人の世と彼の岸の間なり。
 放置された廃墟にて、むくりと身を起こしたのは黄金の悪鬼であった。
 一つ、二つとその巨躯が月下に角を有して映える。
 人通りの少ない山地を下り、道路に降り立った鬼へとライトが当てられた。
 走行車が慌ててブレーキをかける。鬼の丸太のような腕が車体のバンパーを貫通し、車内の人体を破壊せしめた。
 鬼が爪の先についた血を舐め取る。
 陶酔と共に脳内に刺激されたのは人を屠る遺伝子の昂揚。
 与えられていた在り方が発現し、悪鬼らが唸りながら人里を目指した。
 黄金の鬼の進路を止められるものはいない。星空と月が見守る夜の帳の中、静寂を血の夜へと染め上げる鬼の声が残響した。

「鬼退治の伝承が山は島に多いのは、古来の人々が価値観として山や本土から離れた島に異界を見たからだと言われています。山は異界への扉であり、死者はいずれ山の向こうへと行く、と」
 語り終えた事務係の女性が投影させたのは人工的に抉ったとしか思えない山地の写真と、山道を行く車体が薙ぎ倒されたものであった。
 次いで監視カメラに映る黄金の鬼の姿に変わる。
「ドライバーは即死。相当な衝撃が与えられたものだと考えられますが……依頼です」
 久遠ヶ原学園の事務係の職員の女性が淡々と告げる。
「山地からルートを逆算し、人里を目指していると思われる高威力の鬼のディアボロが存在します。シンプルでありながらパワーは相当かと。鬼型のディアボロはその腕に貫通性能を持つ爪を有し、その爪から放たれる威力には警戒してください。どうにか人里に辿り着く前に討伐を。悪魔の活動領域はなく、自律型と思われます。この依頼を引き受けますか? 引き受ける場合はこちらにサインをお願いします」


プレイング

暗殺の姫・紅 鬼姫(ja0444)
大学部3年291組 女 
人の世に落ちる修羅…角が生えただけのヒトですの
…少しばかり、腕力はあるかもしれませんの

今回は山林での戦闘、翼は使用せず壁走りで木々の上や間を移動しますの
日中であればこのまま、夜間戦闘であればサードアイを装備しますの
主だった対応は囮班に任せ遁甲を使用し移動
先行班のと敵の位置を確認、把握、接敵時周知徹底
3体の鬼の位置と動きを常時確認出来る様高い視界を確保しますの
囮で3体を対応しきれない様であれば兜割りで奇襲後遁甲解除
通常回避が困難な場合のみ制服を代償に空蝉を使用しますの
「危険通達はしますの。間に合うかどうかは別ですの」
「不本意ですが、一緒に踊って差し上げますの…手を取っていただくつもりはありませんが」

攻撃は誘引後二刀での上下攻撃の後離脱が基本ですの
狙いは肩、肘、膝裏等の関節部ですの
敵の攻撃時には身を低くし腕を振り抜く威力をお借りして叩き切ってしまいたいですの
個人的には首は狩り取ってしまいたいですの
「穢らわしいですが、その首…いただいて差し上げますの」
「鬼姫、夜の静寂が好きですの。静かに殺せないのなら、のこのこ出て来ないでほしいですの」

歴戦勇士・龍崎海(ja0565)
大学部8年2組 男 
目的
依頼の達成

行動
阻零符は戦闘が始まってから使用

作戦は囮役の大空さんと藍那さんが囮となって、ほかの仲間が潜んでいる所まで敵を誘導
誘導したらほかの仲間は奇襲した後に大空さんらと挟撃

最初の奇襲時はVジャベリンで最大対象を狙う
その後の挟撃では吸魂撃を織り交ぜて攻撃し壁役を全うする
残りのVジャベリンはシールドとかも含んで十分対応できる状況なら使用する

腕を狙うと見せかけて足を攻撃する
「自分の長所とゆえに防御に意識を割きやすいだろうから、それを逆に利用してみるか?」
「遠距離攻撃はないみたいだし、動きが鈍くなれば安全に討伐できる」

討伐後は被害の片づけを手伝う

戦闘
近は槍、遠は本
防御優先時では浮遊盾
魔法攻撃をする時は本の使用考慮
前衛

シールドは糸込考慮
Lヒール(0でヒール)は神の兵士を考慮
スキル交換は連携で

補足
臨機応変
怪我人は手当

大切な思い出を紡ぐ・ジョン・ドゥ(jb9083)
大学部6年3組 男 

本を使い苦手とする遠距離で攻撃
バイクで撹乱する味方、高機動な味方が敵の動きを封じられるなら
本での射撃を続ける

射撃の弾速に反応して遠距離を行う味方に鬼が向かうなら
ワイヤーを用いて足を引っ掛ける形で機動を殺す為に罠を仕掛ける

射程が3以下になり近くに接近してきた場合は
終焉や流転隔絶で動きを封じる

近接戦に持ち込まれた場合は翼で相手の上をとり
腕の範囲外から弓や本を使い続ける
腕を斬り落とせるようなら鬼哭斬魔刃で上空から一気に叩き斬る
「その黄金、貰い受ける…!

自分より速い味方が鬼の前方にいてくれている場合は頭上を越える形で背後に回り
ワイヤーで雁字搦め、または脚部を傷つけて機動を殺いでいく
纏わりついたワイヤーに反応して引っ張られる際でもそれに身を任せわざと引かれつつ鬼哭斬魔刃で槍を取り出し、鬼自身の腕力の勢いに乗り接近して斬る

鬼を倒せそうな際は鬼哭斬魔刃で斬り捨てる
「――哭け

飛ばし屋・藍那湊(jc0170)
大学部1年9組 男 
「人里へは降りさせない。ここで止める…!

攻撃は基本、遠距離攻撃
敵の反応・挙動など確認
向かってくる場合、敵の動きによっては距離を調節
他の囮役が先に動く場合も同様

インカムで合図や注意などメンバーへ伝達

・囮行動&BS攻撃付与で味方の攻撃をやり易く

彼方(jc2485)のバイクの後部座席に同乗
両手が使えるように用意したロープで腰周り固定
「了解。振り落とされないようにしっかりくっついとく。
「作戦通り連携していこうっ

接近中は攻撃し敵の注意を引く
敵の攻撃挙動前、可能な限りUターン直前に<霧氷の大樹>
標的はその時に一番近く、仲間が攻撃しやすい相手を選ぶ
他の囮役やメンバーへ近付く危険な敵には<北風の吐息>で吹き飛ばし動きも封じる

後退時に追ってくる場合
囮続行、後方の敵へ攻撃
危険な場合、彼方には運転に専念してもらう

・上記を何度か繰り返し、一体に狙いを絞り以下の行動

「あの鬼の首もらいます。――彼方!

ラリアットや敵の位置関係に注意
敵の背面(敵射程より遠い位置)へ<瞬間移動>
敵の前方よりバイクで迫る彼方と連携挟撃
隙をつき<結氷>
敵がスタン→魔具をヒエムスに変更
鬼の腕を肩から切り落とす

戦場の紅鬼・鬼塚 刀夜(jc2355)
大学部1年1組 女 
鬼による鬼退治とは字面だけ見る面白いよね

囮は他に任せて僕は残りの味方と一緒に絶影で遠距離から削るよ
足狙いで機動力を削ぎ腕狙いで敵の武器を奪う感じだね
絶影が切れたら遠斬りや朧突きに変えて使うよ
拾った小石や持ち込んだボールを投げる事で敵の注意を分散し囮役の援護もしてみるよ

敵がこちらに向かってきたら接近戦に切り替えて迎撃するよ
陽炎で逆に僕の方から距離を詰めて斬りつけ
弾かれないよう刀身を片手で支えながら相手の爪攻撃を受け流して回避しつつ
回転軸のラリアットを逆に利用して腕の切断を試みるね
攻撃に合わせて懐に潜り込みラリアットの勢いを利用し腕の軌道上に刀を滑らせ斬鉄で斬りつけるよ

無双の能力なんて聞いたら正面から受けて斬りたくなるのが剣士という人種だよね

HalloweenNight's Stars・大空 彼方(jc2485)
大学部1年4組 女 

公認済み400ccバイクで出撃

事前行動

予め付近の地形、道を【地形把握】
頭装備も活用

3000久遠でロープとカッター購入

藍那湊(jc0170)とは普段から二人乗りをしているので、アクセルターン(足を付かない高速Uターン)含めて念入りに訓練済み

当日

湊を後席に乗せ出撃

『湊、練習通りアクセルターンの時は外側前方に体重乗せてね』

鬼にバイクで接近、突撃銃で牽制・ヘイト稼ぎ

敵の攻撃範囲に入る前に左を外側に向ける右旋回でアクセルターン
挑発も加えてヘイト管理を徹底

これを敵がある程度消耗するまで繰り返す

追ってくる場合
味方が攻撃しやすい地点まで誘導
『鬼さんこちら、手のなる方へ♪』

こない場合
機動戦を仕掛け消耗させる
鬼の射程外をバイクで走り回りつつ車上から銃撃
『怖いのかなー?ゴメンねー頭良くてぇ♪』

湊が瞬間移動する際
カッターでロープ切断
ヘッドライトを照明に挟撃体制を作り銃撃

敵がスタンしたら素早く降車し、クーベルチュールで【薙ぎ払い】

『いっただきィ!』





リプレイ本文


「無双の能力、なんて聞いたら真正面から斬り合いたくなっちゃうよ」
 そう呟いた鬼塚 刀夜(jc2355)の傍にいたジョン・ドゥ(jb9083)は聞き返す。
「そいつは剣士としての性って奴か?」
「まぁね。会ってみたかったんだ、本当の鬼。テンション上がってくるよ」
 飴を齧った刀夜の面持ちには喜悦が滲んでいる。心底、今回の討伐を楽しんでいるようであった。
 ジョンは彼女が片時も手離さない刀剣を観察する。
 ――妖刀、鬼羅。
 鬼を狩るために作られたような因縁の名前だ。加えて刀夜は鬼以上に、鬼らしい。剣にかける鬼がいるとすれば彼女のような存在か。
「言っておくが、あんまり近距離で戦うのはおススメしないみたいだぜ? 奴さんを嘗めてかかればいつだってまずいのが討伐任務だ」
 忠告など自分のキャラではないと思いつつも、ジョンは目の前の少女が一度羅刹の道に堕ちれば、容易く向こう側に行ってしまうような気がしていた。
「安心しなって。僕は狩る側だ。狩られる側じゃない」
 その慮った心境を理解してかしないでか、刀夜の声音にはいささかのてらいもない。
 本心から、自分が狩人の側だと信じ込んでいる。その真っ直ぐさは愚直以上に眩しい。
「狩人の領域、か。ま、今回は囮役の面子もいることだし、俺らは遠距離からの攻防になりそうだな」
「遠距離の技は持ち合わせている。何も、不得意なわけじゃないさ。ただ……斬り合えないのはちょっとばかし拍子抜けかな」
 斬り合いとは元来、自分の懐に飛び込ませるようなもの。いつだって斬られる覚悟がなければ出ない言葉なのだ。
 しかし刀夜は言ってのける。
 斬られる覚悟くらい、最初から持ち合わせているとでも言うように。
「……なるほどね。鬼になるか、そうじゃないかってのは案外、紙一重の代物なのかもしれないな」
 結んだジョンの声音に何を今さら、と刀夜は返す。
「僕らが鬼になるか、そうじゃないかなんて力を持った時からハッキリしているだろう。壊すか、壊される側になるかなんて、カードの裏表よりももっと安直だよ」

 人の世に堕ちる修羅は角が生えただけのヒトに過ぎない。
 そう口にした紅 鬼姫(ja0444)に龍崎海(ja0565)は返していた。
「そんなに簡単かな。鬼もまた、人だなんて」
「そういうものですの。大体、人里に下りていくだけの鬼なんて、それはどこまでも半端な、鬼の成り損ない。腕力があるだけの、ただのヒト。鬼姫はそういう相手は嫌い、ですわね」
 鬼姫は余裕を持って言いやる。海は顎に手を添えて考え込んでいた。
「羅刹……人の世を食い荒らす鬼、か。でもそんなものでさえも、人は共存の道を選んできた。これまでは、の話だけれど」
「関係ないですの。嫌いな相手は潰すだけ。そんな簡単な帰結に、何も疑問はないのですわ」
「鬼になるか、ヒトで留まれるか、か。問答だな」
 真剣に考え込む海に対して鬼姫は森林地帯を眺めた。その赤い瞳が細められる。
「来るとすれば、陽動も含めて、でしたわね」
「ああ。囮隊として藍那さんと大空さんがうまくやってくれるはずだ。俺たちは網にかかった獲物を潰す」
「分かりやすくていいですの。その時になったらよく分かると思いますわ。所詮、鬼の、獣の領域に留まることしかできなかった側と、狩る側の鬼の違いを」
 鬼姫は間違いなく狩る側だ、と海は背筋を震わせた。
 赤い瞳には迷いがない。その迷いのない殺意を振り翳す対象を見据えている。
「……一歩間違えれば、自分でさえも」
 その言葉に鬼姫は問い返さなかった。帰結する先は見えている。
 ――一歩間違えれば、誰であろうと容赦はしないであろう。
 迷いのない純粋な殺気は正義や悪という観念を超え、通常の道徳観念の及ばない領域へと達している。
 ――狩人の領域だ。
 胸の中にそう結んだ海はせめて相手は囮の通用する「ただの」鬼であることを祈った。

 400CCのバイクのいななき声が山岳地帯を震わせる。
 大空 彼方(jc2485)は背後にロープで掴まる藍那湊(jc0170)の体温を感じつつ、黄金のディアボロが徘徊する領域へと突入した。
「湊、練習通りアクセルターンの時は外側前方に体重を乗せてね」
 湊は首肯し自由になっている両手で魔導書のページを捲った。黄金の鬼型ディアボロは三体、ほぼ密集陣形。
 予め脳裏に叩き込んだ通りの戦法ができれば駆逐は可能だ。
「了解。振り落とされないようにしっかりくっついとく。作戦通り連携していこうっ」
 傾斜道を駆け降りていくバイクはほとんど自由落下に近い。鬼型ディアボロがこちらに気を向けた瞬間、湊は魔術を練っていた。
 氷のアウルが植物のように構築されてしなり、枝が棘を成してディアボロの腕に突き刺さった。
 攻撃射程に入る寸前でUターンが身体を煽る。風圧に負けないように湊は腹腔に力を入れていた。
 ギリギリの反転からの相手への牽制。効いたか、と湊は窺う。
 一体がこちらの引きつけに注意を逸らされ、歩み寄ってきていた。
 その一歩一歩の速度は鈍いものの、力強さを感じさせる。
 だが湊はこんなところで及び腰になるほどやわではない。何よりも――今回は恋人の前である。
 彼方の突撃銃が鬼へと弾幕を張る。その巨大な腕を翳して防御を試みる鬼であったが、少しずつ削れているようであった。
「鬼さんこちら、手のなるほうへ♪」
 彼方の挑発に鬼のうち一体が乗った。丸太のような腕に比すれば随分と貧弱な足腰ではあるが、跳躍くらいは可能であろう。
 姿勢を沈めたその時、空間が歪み鬼の下半身に重圧がかかる。
「悪いね、鬼役よ。俺たちゃ、ずるいからよ。遠距離で攻めさせてもらうわ」
 歩み出たジョンが魔術書から繰り出される魔道射撃で鬼の背筋を叩き据える。
 振り向いたのは誘いに乗らなかった二体であった。
 無双の武器となる長大な両腕を盾にしてジョンへと歩み寄っていく。
「ちと、まずいかな」
「――いや、上出来だとも」
 ジョンが左によろめいた瞬間、その首筋ギリギリから弾き出されたのは光り輝く槍であった。
 一体の鬼がたたらを踏む。
 片腕に煙を棚引かせていたがその腕はまだ健在。
 ジョンが舌打ちする。
「……そう簡単には取らせてくれないってわけかい」
「でも、隙だらけですの」
 降り立った影を鬼が視認する前に刃が瞬いた。小太刀であったがその実体は二刀。
 瞬きの刹那のうちに鬼の肩口へと高速剣術が咲いていた。
 血飛沫を浴びつつ、鬼姫が刃を返す。
「不本意ですが一緒に踊って差し上げますの。……手を取っていただくつもりはありませんが」
 もう一体の鬼が貫手を放とうとする。
 鬼姫は振り向きもせずに貫手の射程を読み切り、よろめくように回避した。
 狩人の舞踏が奏でるのは鬼の調べ。
 貫手を放った鬼は自身の膂力そのものによって腕が断絶寸前まで斬られていることに気づいたらしい。
 慌てて飛び退り刃の入った肩口を目にする。
「あら、惜しいですのね。もうちょっとお粗末な頭なら、完全に落として差し上げてましたのに」
 刃を立てた鬼姫に鬼は恐れを成したのか、標的を変えた。
 ジョンたちに向き直った鬼に海とジョンは顔を見合わせる。
「どうやら、俺たちのほうが紅さんより弱く見える様子だぜ?」
「そいつは、大変に不本意だな。槍を受けてみるか? 今度は遠距離じゃない。お前たちの得意な距離で構わないぞ」
 槍の穂を突き上げた海が一体の鬼を睨み据える。鬼が跳躍し海へと飛びかかろうとした。
 後退した海は鬼の腕による攻撃をさばく。
 瞬間、発生した斬撃が鬼の顔面を斬りかかっていた。
「惜しい、ね。鬼による鬼退治と洒落込みたいのに、ちょっと距離が足りない」
 刀夜が妖刀、鬼羅を構え鬼の射程を掴もうとしていた。
 鬼が刀夜へと狙いをつけようとするのを海が制する。
「どこを見ている?」
 槍の一撃が足先へと入った。膝から先を奪うつもりで放たれた一閃に鬼が躊躇う。
「案外、長所以外の部分ってのは見えていないことが多い。足を潰せば安全に討伐できる」
 躊躇いを見せる鬼へとジョンが魔術射撃を間断なく放つ。鬼が喚き、ジョンへと狙いを定めようとするが、その弾幕を前に近付けないようであった。
 甲高い鳴き声が響く。
 直後、もう一体の鬼がジョンに向けて跳躍していた。
「……おっと、連携もありか」
 引き裂いた空間をジョンが飛翔して回避する。上空より弓を番えた。
「その黄金、貰い受ける……!」
 放たれた矢が鬼の肩口に突き刺さった。鬼の頭上を越えてジョンは回り込み、銀糸を放った。
 射程に入った、と全力攻撃を浴びせようとした鬼の身体を縛ったのは空間に固定されたワイヤーの銀である。
「悪いね。絡め手って奴を使わせてもらったよ。それでもまぁ、お前さんの力が強いってんなら止めはしない」
 鬼が振り切ってジョンへと攻撃を放とうとした。その瞬間には、鬼の両腕は根元から断ち切られている。
 ワイヤーが鬼の強力な一撃を逆利用し、腕の付け根から引き剥がしたのだ。
「――その腕がよほど要らないと見える。さて、鬼をも哭かせるこの王槍の力、鬼が相手となれば振るおうか」
 両腕を失った鬼を眼前にしてジョンがその手に黄金の槍を具現化させる。
 アウルの輝きと空間がひねり出される音叉がまるで鬼の慟哭が如く響き渡り、ジョンが愉悦の笑みと共にその槍を掴んだ。
 刹那、鬼の胸元がくり貫かれていた。
 漆黒の軌道痕だけが居残り、その一撃の強大さを物語る。
 鬼が倒れ伏し、黄金の槍が霧散する。心臓だけを射抜いた槍の一撃にジョンはほおと感嘆の息を漏らした。
「こいつは驚いたな。鬼ってのは今際の際には哭きはしないのか」
 もう一体の鬼がジョンの視線によろめく。鬼を屠った相手を軽んじてはいないのだろう。
 自然と回避の方向に行きかけた鬼の背筋を鬼姫の刃が割った。
 鬼が応戦の一撃を放とうとして、その刃がいなす。甲高い響きを携えて鬼の貫手が火花と共に散った。
「鬼姫、あまり寛容なほうではございませんの。静かに殺せないのなら、のこのこと出てこないで欲しいですの」
 刃が奔り、鬼の首に至った。頚動脈を破るかに思われた一撃を鬼は天性の勘か、紙一重で回避する。
 刃が空を切ったかに思われたが、その本質は二刀。もう一本の刃が鬼の顎下から迫りその黄金の顔面を縫いつけた。
「残念ですの。この程度で死んでしまわれて」
 交差した刃が一閃し、鬼の首を十字に両断していた。
 残り一体、と全員の無線連絡を受け、湊は先ほどから引きつけている鬼への討伐を決意した。
「彼方。二体は既に討伐したらしい。最後の仕上げにいこう」
「了解! 飛ばすわよ、湊っ!」
 先ほどから鬼に繰り返しているのは射程ギリギリで反転し、氷の枝葉と銃撃による防御のすり減らしであったが、もうその必要はなくなった。
 彼方の操るバイクが激しく咆哮し、鬼へと直進する。
 鬼が片腕を引いて一撃への布石を充填する。
 ――お互いに覚悟は充分。
 湊は呼気を詰めて彼方へと言いやる。
「作戦B、始動!」
 その言葉と同時に彼方がロープを切る。自由になった湊が瞬時に掻き消えた。
 どこへ、と首を巡らせようとした鬼の背後に、湊は降り立つ。
「ひとの彼女に注目していると、痛い目見るよ」
 鞭のアウルが氷の属性を帯び、鬼の腕に絡みついた。鬼の両腕を拘束した形となった湊は、静かに武器を持ち替える。
「大剣、ってガラじゃないかもだけれど、今回ばかりはいいところ、見せさせてくれよ。黄金の鬼」
 一閃が交差し鬼の両腕が肩口から落とされる。
 鬼がその事象に気づく前に、彼方がバイクから跳躍した。
 その手には大剣が握られている。
「いっただきィ!」
 バイクの速度も借り受けた烈風が鬼の顔面に一太刀を浴びせる。
 鬼が呆けたように口を開けた瞬間、その身体が両断された。
 鬼を頭部から引き裂いた彼方は湊へと視線を向ける。
 黄金の鬼越しに振り向いた恋人は愛おしいまま、その相貌に僅かな不安を翳らせた。
「練習よりすごかった……どこか削れて減ってない?」
 彼方は微笑みかける。
「減ってないよ、大丈夫! いつもよりカッコいいぐらい♪ 大好き!」
 抱きついた彼方が湊の頬にキスをする。
 咳払いに二人はハッとした。
「お邪魔だったかな」
 追いついてきたジョンたち相手に困惑する湊とは対照的に、彼方は湊を抱き締めていた。
「お邪魔かな? 今は」
「彼方……。ジョンさん、作戦は」
「無事成功、みたいだな」
 サムズアップを交し合い、鬼の啼く闇夜は終わりを告げていた。

「あーあ、本当は斬り合いたかったなぁ」
 ぼやく刀夜に海が言いやる。
「あんなのと真正面から斬り合っていたらどっちかが危ないぞ」
「そんなこと言ってぇ、龍崎さんは斬り合ったみたいなもんじゃん。下手に遠慮することなかったかもなぁ」
「まぁまぁ、今回ばかりは囮役の優秀さのお陰さ」
 取り成すジョンに彼方は湊へと頬ずりする。
「見せ付けてくれますのね」
「そりゃそうじゃん。だって、そういうもんでしょ?」
 放たれた言葉に男性陣が湊へと一斉に視線を向ける。湊は所在なさげでありながらも強い語調で言いやった。
「……まぁ、そういうことなんで」


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:成功面白かった!:4人
MVP一覧
 暗殺の姫・紅 鬼姫(ja0444)
 飛ばし屋・藍那湊(jc0170)
重体一覧
 −

暗殺の姫・
紅 鬼姫(ja0444)

大学部3年291組 女 鬼道忍軍
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部8年2組 男 アストラルヴァンガード
大切な思い出を紡ぐ・
ジョン・ドゥ(jb9083)

大学部6年3組 男 陰陽師
飛ばし屋・
藍那湊(jc0170)

大学部1年9組 男 ダアト
戦場の紅鬼・
鬼塚 刀夜(jc2355)

大学部1年1組 女 阿修羅
HalloweenNight's Stars・
大空 彼方(jc2485)

大学部1年4組 女 阿修羅


依頼相談掲示板

相談用
大空 彼方(jc2485)|大学部1年4組|女|阿修
最終発言日時:2017年02月25日 18:39
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2017年02月22日 20:20


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