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[FT]米中は北朝鮮との危機的状況を打開せよ(社説)

2017/3/8 14:09
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 米国のオバマ前大統領は退任するに当たって、後任のトランプ大統領に対し、核武装した北朝鮮がトランプ氏の外交政策上、最も差し迫った課題になるだろうと警告した。そして、予期していたようなことが起きたかに見えた。北朝鮮が6日、弾道ミサイル5発を日本海めがけて発射したのだ。

北朝鮮は全人代のさなかにミサイルを発射した(北朝鮮の労働新聞が掲載した4発の弾道ミサイル同時発射の写真=共同)

北朝鮮は全人代のさなかにミサイルを発射した(北朝鮮の労働新聞が掲載した4発の弾道ミサイル同時発射の写真=共同)

 北朝鮮は嫌な切り札を持った国だ。しかもそれをうまく使っている。北朝鮮はこの数十年、大した打撃も受けずに不誠実な振る舞いを続ける一方で、近隣諸国やその同盟国を脅して交渉のテーブルに着かせ、譲歩を引き出そうとしてきた。これまでのところ、トランプ氏による最も目立った反応は、独裁国家の軍事力を非難したツイートだ。だが、希望の兆しもある。トランプ氏は、このスターリン主義の扱いづらい国を抑えるには、中国がカギを握るということを理解している点だ。

 北朝鮮はこの何十年も中国に依存してきた国だ。だが、その中国も北朝鮮を抑え込むのに苦労している。北朝鮮が今週ミサイルを発射したのは、中国の国会に相当する年1回の形式的な全国人民代表大会のタイミングに合わせてのことだ。これは中国政府に対して、若き独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が主要な支援国である中国に不満を抱いているというメッセージを送っている。

 中国の我慢もいよいよ限界に近づきつつある。中国は何年にもわたって言い逃れをしてきたが、やっと北朝鮮からの石炭輸入を年末まで停止すると発表した。これを受け、北朝鮮の国営メディアは珍しく中国に対する反発をあらわにした。

 中国の指導者たちは、北朝鮮政府の封じ込めに一段と手を打たなくてはならない。今回の北朝鮮のミサイル発射実験は、韓国政府が米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を国内に配備するという決断の理論的根拠を裏付けただけだ。これこそ、中国の怒りを買った決断だ。中国はTHAADのレーダー探知範囲が中国国内を詳細に見渡せるため、アジア地域の戦略的バランスを変えてしまうと主張している。中国政府はこれに対抗し、明言していないものの、韓国や韓国企業に対する経済制裁を科した。韓国企業の多くは利益を中国市場に大きく依存している。こうした行為は世界貿易機関(WTO)の規則に違反する可能性があり、いずれにしても効果的ではない。中国の指導者たちはもっとよく理解すべきだ。一体全体、滅亡の危機にある国が、集められる限りの最強の防衛手段よりも、短期的な経済的利益を優先させるだろうか。

 中国は、問題の根本に注意を注ぐべきだ。隣国の政権は、人口の多くが飢餓寸前で苦しい生活を送る一方、核兵器を開発している。もっとも、中国一国では北朝鮮問題の解決は実現できない。主に米国からの助けを必要としている。

■朝鮮半島の非核化がゴール

 北朝鮮は歴史的に見て、交渉の準備に入る際に最も攻撃的な行為に及ぶ。トランプ氏は金正恩氏との会談を検討すると語っている。韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領が弾劾されたことで、政府は北朝鮮とじっくり向き合うことに前向きになりそうだ。とはいえ、米国政府と韓国政府が持つ最強の切り札は会談を提案することぐらいだが。その場合でも、北朝鮮の態度を劇的に変えさせようとしてはならない。会談の可能性(そして、それにもまして、北朝鮮の体制を移行させるという議題は話し合わないという約束)は、北朝鮮にミサイル実験や発射を思いとどまらせるかもしれない。これにある種の経済制裁圧力を一体化させるとすれば、それができるのは中国以外にない。

 北朝鮮と国際社会で達した暗黙の了解、そして、それに続く政府間協議や合意は、注意深く監視されなければならない。1994年に核を巡る枠組みが合意された後も、北朝鮮はその約束を守っていない。監視されなければまた同じことをするだろう。それでも、いま手を打つ必要がある。長期的な目標は、朝鮮半島の非核化をおいてほかにない。まずは、危険度が差し迫っている現状を悪化させないことが第一歩だ。軍事紛争になってからでは遅すぎる。

(2017年3月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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