はっけんの水曜日 2017年3月8日
 

青森県田舎館村「田んぼアート」の超絶進化がすごすぎる

村長のトップ会談で図柄が決定

2013年「花魁とハリウッドスター」
2013年「花魁とハリウッドスター」
――題材が「悲母観音」から2013年は「花魁とハリウッドスター」というのもすごいですね。自由にやってる感があって。

「この花魁は、前年に田んぼアートを見に来られた梅沢富美男さんと村長が面談をしたときに、村長がぜひ来年は花魁に、ということで決まったんです。ですから、花魁のモデルはいちおう梅沢富美男さんです」

――トップ会談で来年の図案が決まったわけですね。

「で、実はこれが過去最高に難しかったんです」

――着物の柄ですよね。やっぱり細かい柄は難しいんだ。
すげえ細かい! これ、全部稲なんだぜ!
すげえ細かい! これ、全部稲なんだぜ!
拡大してみてみると、サイズ感を見失ってしまうが、この花魁、テニスコートぐらいの大きさがあることを念頭に置いて見て欲しい。きれいな柄の絨毯ではない、ぜんぶ稲だ。

モンロー財団から電話が……

「日本の花魁に対して、右は世界のセックスシンボルとして、マリリン・モンロー風の、ハリウッドスターです」

――世界のセックスシンボルですか。

「私共も権利関係がどうなってるのか調べたんです。いちおう題材となった映画「七年目の浮気」の著作権は切れてるので、問題はないとなったんですが、アメリカにモンロー財団というものがあるらしいので、あくまでハリウッドスターということにしたんです」

――なるほど。

「すると、日本でマリリン・モンローの著作権を管理しているという団体から連絡がきたんです」

――えっ!

「あなたたちは、マリリン・モンローを使って田んぼアートをやっているけれど、非常にできが良いので、ぜひ写真をくれと」

――あー、びっくりした。クレームとかじゃなくて、写真をご所望されたんですね。結果良かったですね。
写真を求められるほどの出来栄え
写真を求められるほどの出来栄え
「できとしては確かにすごい、スカートなんかの影の部分は点描なんですよ」

――点描! 写真ぽい影の付け方が開発されたんだ。進化の瞬間を目撃した感じするなあ。

「で、マリリン・モンローはさいしょ足が太かったんです。そのへんはあとで植え替えなんかをして微妙に調整しています」

――あとからの微妙な調整ができるんですね。

「女官の合わせが逆みたいな細かいところは直接田んぼに入って修正できるんですけれど、足なんかの大きな修正は、展望台から指示を出しながら植え替えしたりするんです」

「で、この年から、第二会場での田んぼアートが始まったんです」
第二会場とは、田舎館村の村役場から少し離れた道沿いの、道の駅にある専用の水田のことだ。
2013年・第二会場「七福神とマジンガーZ」(C)永井豪/ダイナミック企画
2013年・第二会場「七福神とマジンガーZ」(C)永井豪/ダイナミック企画
――唐突にマジンガーZが入ってますね。

「これは、全国で田んぼアートを行っている団体が統一して、田んぼアートに使える版権ものを毎年決めて使ってたんですが、田舎館村はこの年からこの第二会場で使うようになったんです。ただ、七福神というのはもう決まっていたので、右側に入れるような形で入れました。七福神を守るマジンガーZですね」

「で、次の年2014年からは、第二会場は版権ものの田んぼアートを行うことになったんです」
2014年・第二会場「ウルトラマン」(C)円谷プロ
2014年・第二会場「ウルトラマン」(C)円谷プロ
――これは、元の絵は向こうが描いてくるんですか?

「いえ、これは山本先生が描き起こしたんです。で、円谷プロにチェックしてもらったんですが、まず、ウルトラマンは飛ぶときにこんなに腕を広げないと」

――はー、なるほど。

「もっとこう両腕を顔に近づけた飛び方をすると、でも、それだと顔が隠れちゃうんで、そこは勘弁してもらったんです、その他、模様など細かいところのチェックはいっぱいありましたね」

文字も変わってくる

「ちなみに、2014年の第一会場は『富士山と羽衣伝説』、2015年は『風と共に去りぬ』ですね」
2014年「富士山と羽衣伝説」
2014年「富士山と羽衣伝説」
2015年「風と共に去りぬ」
2015年「風と共に去りぬ」
――もう、最近のものは、文字もゴシックから明朝になってますね。

「米のPRが目的ですから、青天の霹靂をPRしないわけにはいかない。でもこれ発売前だったんで、わからなかった人が多かったみたいで、たしかに何なのかわからないですよね」

――あぁ、たしかに、米の名前っぽくないですよね、青天の霹靂。そういうタイトルの映画? って思いますね。

絵優先!

「この年のスカーレット・オハラ、ちょうど鼻の部分が畦畔(けいはん・田んぼのあぜ道)にどうしてもかかってしまうので、切っちゃったんですよ」
どうしてもあぜ道が邪魔に→あぜ道を切っちゃった
どうしてもあぜ道が邪魔に→あぜ道を切っちゃった
――そんなことしていいんですか……。

「あぜ道を切っちゃったので、もちろん、水が流れ出ちゃう。でも、そこは薄い板を仕切りにして止めて、なんとかしのぎました」

――あくまで絵優先なんですね

「絵優先という話で言えば、ちょっと遡りますけど、2006年は電柱あるんですけど……2007年は」
左2006年、右2007年。電柱とった!
左2006年、右2007年。電柱とった!
――あ! 電柱が無くなってる。

「そう、電柱とっちゃったんです」

――これ、とった部分どうしたんですか?

「たしか、迂回したのかな」

――そのうち道路もとりそうですね

「それはよく言われるんですけど、生活道路なので、ここはとれないんですよ」

真田丸

――そして、2016年、真田丸。
2016年「真田丸より 石田三成と真田昌幸」
2016年「真田丸より 石田三成と真田昌幸」
「これ、何も知らないお客さんに、草刈正雄はよく似てるけど、真田幸村が似てないって言われて……」

――たしかに、昌幸がいたら、もうひとりは幸村だって思いますよね。なんで石田三成がこんなにでかいのか。

「石田三成は、子供が津軽藩に保護されて、後に津軽藩士となって、家系が続いていて、いまでも子孫の方が青森にお住いです。だから大きいんです」

――もうこれ、写真みたいになってますね。

「これは、もとの写真をNHKから提供してもらいまして、それを山本先生に絵に起こしてもらいました、だから、写真といえば写真ですね」

写真のような田んぼアートをみるにつけ、絵の精密さはすでに行き着くところまで行っているのではないか。
もしかしたら、今後、QRコードやARマーカーの形に稲が植えられるようになるかもしれない。

ワクワクしかない。

「へー」から「すげー」へ、進化し続ける

25年ほどまえ、田舎館村でほそぼそと始まった「田んぼアート」は、いまや一年間に34万人が訪れるという人気イベントに成長した。

最初はとても簡素だったものが年を追うごとに洗練され始め、ついには、日本各地で行われている田んぼアートの中では、他の追随を許さないほどのレベルに達してしまっているのが面白い。

今から10年ほど前、田舎館村で、田んぼに稲で絵を書いていると聞いて、田んぼアートの写真をみたときは「へー」ぐらいだったのだが、近年は「すげー」というほかないことになっている。

田んぼアートは、ずーっと変わらない建物や自然などと違って、毎年変わるものなので「一回みたからいいや」というわけにはいかない。
前に見たときよりも、できの良いものになっている可能性があるので、見逃せないのだ。

はたして、今年はどんなものになるのか、いまから楽しみだ。
昨年の田んぼアート移り変わり
昨年の田んぼアート移り変わり

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