進路実現に向けて―保護者の方に知っておいていただきたいこと
お子様の進路内定までのプロセスや留意していただきたい事柄をQ&A方式でまとめてみました。すべての学年で使える「完全保存版マニュアル」を目指して作成いたしました。是非ご一読いただきたい内容です。
民間就職
Q1.就職内定に至るまでのプロセスを教えてください。
A1.校内選考(7月下旬)→会社見学(8月)→就職試験(9月中旬以降) →就職内定(9月下旬以降)という流れになります。
Q2.「校内選考」について詳しく教えてください。
A2.7月に入ると、各企業から求人票が届きます。就職希望生徒はそれを見て希望企業を絞り込み、第2希望まで企業名・職種が記入できる「就職希望調査票」を提出します。希望調査票を取りまとめ、就職校内選考会議が開かれます。希望者数が定員内に収まっていて、他特に問題がない場合には、希望する企業・職種へのエントリーが可能になります。競合した場合には、校内選考会議にて慎重審議をして推薦生徒を決定します。選考対象になる事項は複数あります。「3年生1学期末までの成績(評定平均値)」・「校内基礎力テストの成績」・「常用漢字テストの成績」・「出席状況」・「部活動やボランティア活動等の取組状況」等です。企業側から「〇〇科の生徒」・「〇〇部の生徒」・「〇〇の資格を有している生徒」・・・というように指定されることもあります。尚、7月中に第2回までの校内選考会議が持たれます。2回とも希望が通らなかった生徒に関しては、以降「随時」選考を行いますので、チャンスはあります。
Q3. 会社見学について詳しく教えてください。
A3.校内選考を通って推薦された生徒は夏休み中(主に8月)に会社見学をします。会社見学を経て、最終的にその企業・職種を受験するかしないかの意思決定をします。推薦された生徒は極力その企業・職種を受験するように指導していますが、どうしても無理な場合には、その限りではありません。建前上は、会社見学は「選考には関わらない」ものとされていますが、会社見学=就職1次試験のようになっているケースもありますので、要注意です。見学時から試験が始まっていると思って見学に臨むのがよいでしょう。
Q4. 1人1社しか受験できないのですか。
A4.高校生に関しては、「1人1社制」を原則としていますが、9月中旬から始まる第1次の試験で内定をもらえなかった生徒に関しては、複数受験も認める企業もありますので、こうした企業同士の複数受験は認めています。
Q5. 就職試験の内容について教えてください。
A5.一般常識テスト・適性検査・面接・作文が一般的です。これらのどこを重点的に評価するのかは、企業によって違います。最近は基礎力テストと適性検査を組み合わせたSPIという試験を採用する企業が増えてきています(※)ので、3学年ではSPI試験対策のテキストを全員に購入させて準備をさせています。
※ 全国9千社以上で採用されていると言われています。
Q6.就職試験の情報はどのようにして入手するのですか。
A6.企業から送られてくる求人票に明記されています。本校では、先輩方の「受験報告書」が進路指導室に保管されていますので、それを参考にして受験対策を立てるのがよいでしょう。
Q7.希望する企業や職種の求人が来ない場合はどうしたらよいのですか。
A7.本校進路指導部から問い合わせることができます。そのようなケースがあれば、遠慮なく申し出てください。
Q8.縁故就職の進め方について教えてください。
A8.縁故であっても、原則学校を通して受験していただくことを極力勧めています。求人票を取り寄せることで、入社後の(待遇等の条件面での)トラブルを防ぐ狙いもあります。アルバイト先で、「正社員として働かないか」と声をかけられるケースもあるようです。
公務員
Q9.公務員と民間就職、あるいは進学を「かけもち」することはできないのですか。
A9.公務員と民間就職の「かけもち」は認めていません。ただし、公務員試験で不合格になった場合には、その後に民間企業を受験することはできます。進学に関しても、(公募制推薦や指定校推薦といった)高校側から推薦される受験制度との「かけもち」は認められません。進学に関しては、公務員試験の結果発表よりも後に試験が行われるケースが多いので、実質「かけもち」の形になることが多いようです。尚、公務員試験は職種ごとに試験日が異なるので、公務員試験の「かけもち」は可能です。
専門学校進学
Q10. 専門学校の入試方法について教えてください。
A10. AO入試や公募制推薦が多く、いわゆる学力を問う試験は課されないのが一般的です。具体的には、「書類審査+面接」という形態が主流です。専門学校入試では、「志望の動機」がしっかりしているかどうかが問われることが多いようです。学力よりも、「何をしたいのか」、「将来どのような職業に就きたいのか」といった要素が重視されます。学力を問う試験は少ないと言いましたが、特定の分野では、学力が重視されますので注意が必要です。その分野とはいわゆる医療看護系です。看護士・理学療法士・作業療法士等の養成学校は入試の難易度も高く、早い段階からの準備が必要です。また、国家試験が難しいために、入学後の勉強もハードです。尚、本校では、医療看護系を目指す生徒を対象に補習や模擬テストを実施していますので、活用してください。医療看護系進学に特化した予備校のセミナーを受講するのもひとつの方法です。
Q11. 専門学校と短大ではどちらが就職に有利ですか。
A11. 一概には言えませんが、就職率が高いのは専門学校です。また、専門職に就く割合が高いのも専門学校の方です。しかしながら、短大進学者の減少傾向を受けて、短大が専門学校化してきているのも事実です。就職に強いというイメージがないと学生が集まらないので、短大も専門教育に今まで以上に力を入れるようになったのです。
Q12. 専門学校選びで留意すべきことは何ですか。
A12. いわゆる「無認可校」は避けた方がよいかもしれません。無認可校を卒業しても「専門士」の称号が与えられないので、「高卒」と同じ扱いになってしまいます。通学定期券も購入できません。ただし、敢えて無認可校としての立場を選んでいる専門学校もあります。認可校では、カリキュラム等の自由度が制限されるために、特色ある教育が実践できないというのが理由のようです。こうした学校では、むしろ「独自色」を「売り」にしています。無認可校であるかどうかを見分けるのは難しいのですが、「通学定期券は使えますか」と聞いてみるという方法がお奨めです。退学率や就職状況についての詳しいデータを開示していない学校も要注意です。就職先については、「主な就職先」ではなく、「全員の就職先」を開示しているかどうかがポイントになります。千葉県内の専門学校に関しては、「公式ガイドブック」が発刊されていて、詳しいデータが掲載されています(この冊子は各ホームルームに配布されています)。
Q13. 短大や専門学校から4年制大学に編入できるのでしょうか。
A13. 制度的に編入の道は開かれているのですが、この制度を利用する学生は あまり多くありません。逆に、4年制大学を中退して専門学校に入るケースの方が多いようです。大学に入りやすくなったことが背景にあるようです。
大学・短大進学
Q14. 様々な入試形態があるようですが、どれで受験すればよいのでしょうか。
Q14. 本校では、AO・公募制推薦・指定校推薦のいずれかで入学する生徒が大半です。AOとは、いわゆる自己推薦です。評定平均値が公募制推薦や指定校推薦のレベルに達していない生徒が利用するケースが多いのが特徴です。オープンキャンパスや学校見学会への参加・エントリーシートの提出・複数回の面接が課せられるのが一般的です。学力検査はありません。公募制推薦は大学・短大側が求める成績等のレベルに達していれば、基本的に受験できる制度ですが、高校側で「独自の推薦基準」を設けているケースが多いようです(※)。指定校推薦は指定校に推薦された高校の生徒だけが対象になる制度で、推薦枠(人数枠)が設けられているケースが大半です。双方の信頼関係によって成り立つ制度ですので、校内選考会議を経て校長名で推薦されます。求められる推薦基準も、公募制推薦よりも厳しくなっています。公募制推薦では、基礎学力検査や口頭試問が課されるケースもありますが、「書類審査」と「面接」の2本立てが一般的です。指定校推薦についても、「書類審査」と「面接」の2本立てが大半です。
※ 本校における推薦規定
3年生で特別指導を受けた者、または、1年次から3年次1学期までに欠席日数20日・遅刻回数30回・早退回数10回(特別な理由を除く)のいずれかを超えた者は、大学・短大に推薦「校長推薦」できない。専門学校についても、これに準ずる。
Q15. AO・公募制推薦の併願はできないのですか。
A15. 「併願可」と謳っている学校同士の併願は可能です。
Q16. 大学入試センター試験について教えてください。
A16. 国公立大学の1次試験として導入されたものですが、現在は私立大学の多くが参加しています。私立大学の参加が増えたことで、最初から私立大学狙いの高校生も多数受験しています。私立大学では、センター試験の結果をもって合否を判定するケースが多く、受験生は実際に各私立大学の受験会場に足を運ぶ手間が省けます。同一大学・同一学部で一般入試とセンター入試の両方を受験することも可能になります(受験料は両方に発生します)(※1)。センター試験は自分が必要とする科目のみを受験することが可能ですが、注意すべき点が1つあります。それは「定められた期日まで(※2)に各高等学校で一括して申し込む」・「一旦申し込んだ受験科目は変更できない」という点です。本校では、例年若干名が受験しているに留まっています。
※1 私立大学のセンター方式入試は募集人数枠が少ないこともあり、合格率は決して高くありません。
※2 センター試験の申し込み期限は10月上旬です。
Q17. 受験準備の具体的なプロセスを教えてください。
A17. まず自分の成績(評定平均値※1)や出欠状況を把握しておかなければなりません。評定平均値が比較的に高く、出席状況も良好な場合は、指定校推薦と公募制推薦を念頭に置きながら進めるとよいでしょう。逆に、評定平均値が低い場合や、本校の推薦規定に該当しない場合は、AOや自己推薦を念頭に置きながら進めるとよいでしょう。尚、本校では、指定校推薦を希望する生徒の校内選考会議を8月の早い段階で実施していますので、指定校推薦を得られなかった段階で、公募制推薦やAOに切り替えることが可能です(※2)。
※1 評定平均値:各科目の5段階評定の合計を算出し、それを科目数で割った数値を四捨五入したもの。指定校推薦と公募制推薦の進学校内選考会議では、この数値を用います。
(例)国語(4);社会(5);数学(3);理科(4);英語(3)
評定の合計=19; 科目数の5で割ると19÷5=3.8
※2 8月に行われる進学校内選考会議で対象になる大学は、指定校の依頼が来ている大学・短大のすべてです(本年度は、7月31日に第1回進学校内選考会議を実施する予定です)。
就職全般
Q18. 学科や男女による求人の違いや有利・不利はあるのでしょうか。
A18.同じ学校で学んでいるのですから、機会は均等にと思うのですが、現実はそのようにはなっていません。工業科の男子の求人(特に、電子機械科と電気科)が最も多く、
女子の求人に至っては全体の半分程度です。これでも、農業科の生徒と工業科の生徒が別の校舎で学んでいた時代から比べると、かなり学科指定求人が減りました。樟陽高校として完全統合したことで、むしろ農業科の生徒にもチャンスは広がったと捉えるべきでしょう。
Q19. 女子の就職は厳しいと聞きますが、女子はどのようなところに就職しているのでしょうか。
A19. 本校進路指導部が毎年作成している「進路のしおり」に職種別・男女別の進路先が載っています。一番多いのは、製造業です。事務職、介護職員、ホテルやゴルフ場や飲食店のサービス・スタッフがこれに続きます。販売関係では、食品スーパー等に若干名、病院・歯科医院助手が若干名といった感じです。平成26年度は、女子の事務職の求人が例年になく多く、生徒自身も粘り強く就職活動を行った結果、事務職への内定者が激増しました。尚、本年度版「進路のしおり」は来月上旬に配付する予定です。
Q20. アパレル関係の販売スタッフの求人はあるのでしょうか。
A20. 俗に「ショップ店員」と呼ばれる服飾販売スタッフの求人はほとんど来ません。しかしながら、現実には、毎日多くの店舗でスタッフを募集しています。学校に求人は来ないけれど需要はたくさんあるということになります。結論から言えば、自分で探すしかないということになります。こうした職種を希望する生徒の多くは、憧れのブランドがあるようです。まず、ウエブサイトで求人の有無を確認してから連絡を入れ、実際に出向いて担当者から話を伺うのがよいかもしれません。ただし、この業界の体質と言えるのかもしれませんが、いきなり正社員として採用するケースは多くないようです。パート・アルバイト・契約社員・準社員等の待遇で入社し、それから経験を積み、正社員として採用されるチャンスを待つというパターンが多いようです。熱意、やる気をアピールして「この人とだったら、一緒に働いてもいいな」と思わせるくらいの「粘り腰」が必要かもしれません。
Q21. 通信教育で資格を取得して就職する方法があるようですが。
A21. 高校在学中に通信講座を受講して資格を取得し、講座主宰者の紹介で就職するという方法もあります。例えば、「ニチイ学館」の医療事務講座は有名です(※)。メリットとして挙げられるのは、高校在学中に資格やスキルが身につき、さらに就職先の紹介までしてもらえることです。進学に要する費用や時間を節約することができます。ただし、勉強は結構ハードであることを覚悟してください。興味のある方はインターネットで検索してみてください。
※ ニチイ学館では、講座修了者にたいする就職斡旋を行っているようですが、紹介先での「待遇」に問題があるケースが指摘されています。事前にこのような点に関して十分把握しておく必要があるかもしれません。
進学全般
Q22. 進学に関する「マネープラン」について教えてください。
A22. 進学に要する費用については、すでに何回かふれていますので、本稿では、少々視点を変えて説明いたします。進学に関わる費用は以下の2つに大別されます。①入学前に必要な費用、②入学後に必要な費用です。特に注意すべきは、①です。多くの学校では、合格発表があった日から1~2週間以内に入学金や前期の授業料を払い込まないと合格が取り消されるようになっています。100万円前後の費用を事前に用立てておかなければなりません。奨学金は大半が入学してから支給されるようになっていますので、奨学金制度とは別の方法で資金を用意しなければなりません。手持ち資金がない場合には、教育ローン等の低金利の融資を受けることをお勧めします。②に関しては、高校在学中に、「予約奨学金制度」(※)を申し込んでおいて、入学後にすぐに支給されるように手配しておくとよいでしょう。尚、教育ローンは保護者、奨学金は進学する本人が返済義務を負うべき「負債」です。
※ 6月に正式な申し込みをします。第一種と第二種があります。第一種は無利子ですが、採用される人数は第二種よりも少なくなっています。
その他
Q23. 就職か進学かで迷っています。
A23. 高卒と大卒どちらが得かという損得勘定は難しいところです。生涯賃金においては、両者の逆転現象も起きています。概して言えることは、募集する職種が異なることが多いということです。例えば、製造業の製造ラインのオペレーター職には高卒、営業、経理・事務、商品開発、管理的業務には大卒という具合です。特に、製造業においては、高卒では比較的に入りやすい企業が、大卒では超難関企業になっているケースも珍しくありません。また、就職活動期間の長さや大変さにおいても「大差」があります。高卒で就職する場合には、学校が間に入ってある程度サポートしてもらえますが、大卒では学生主体の活動になります。大卒でも、文系と理系とでは就職活動に差があります。また、女子においては、大卒で地方出身の学生には不利というのが「通説」になっています。大卒者の就職活動が「狭き門」と言われる背景には、大学生の数が増えすぎたことも背景にあると言われます。尚、大学の理工系の学生のかなりの割合が大学院に進学するという現状についても知っておいていただきたいと思います。