【AFP記者コラム】遠くの悲劇に嘔吐した夜
2017年03月07日 20:23 発信地:ベイルート/レバノン
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【3月7日 AFP】包囲された街で飢えてやつれきり、時には死の危険にさらされ、また時には自ら死を望む若きジャーナリストに、いったいどんな言葉を掛けられるだろう?
励ましや、仕事に対する称賛を並べるばかりだが、計り知れない無力感は拭い切れない。
「気を強く持って。われわれには君が必要なんだ。頑張って。諦めないで」
レバノン・ベイルート(Beirut)にいる私や同僚らは、シリア・アレッポ(Aleppo)を担当するカラム・マスリ(Karam al-Masri)記者との日々のやりとりの中で、こうした言葉を何度送ったことだろう?
われわれはカラムに敬服している。空腹や恐怖、爆撃を耐え忍んできたからだけではない。これらあらゆることに直面しながらも、記事や目撃した詳細、写真、動画をわれわれに送り続けてくれたからだ。われわれは常にこう伝え続けた、ただ君に無事でいてもらいたい、自分の身をいたわって、この地獄から抜け出してほしいと。
2015年5月撮影。(c)AFP/Karam Al-masri
われわれは1年前から、正式な訓練こそ受けていないが、ジャーナリストの血が流れているこの若者と親交を深めてきた。
写真を撮って家に帰って来ては、自分もいつか街で誰にも顧みられないまま殺されたりけがを負ったりするんだという思いにとらわれてならないと打ち明けるようになった。
われわれが彼のために何をしてやれただろう? どんな選択肢も結局、非現実的なのだと判明した。
無力感。遠くの悲劇。彼の声はあまりに近く落ち着いて聞こえ、苦悩などほとんど想像もできなかった。