沢田紫門 知覧哲郎
2017年3月5日03時00分
JR九州の新しい観光列車「かわせみ やませみ」(熊本―人吉)が4日、運行を始めた。出発式があった熊本駅のホームは早朝にもかかわらず乗客や見物客でにぎわった。
出発式では蒲島郁夫知事が「(昨年の地震からの)復興のシンボルとして成功してほしい」とあいさつ。テープカットの後、藤高尚樹駅長とくまモンの合図で午前7時12分、始発列車がゆっくりと走り出した。
定員70人の2両編成で、青が「かわせみ」、緑が「やませみ」。熊本―人吉間を約1時間半で結び、毎日3往復。内装に地元の木材を使い、球磨焼酎が飲めるバーコーナーもある。
鹿児島市から見物に来た公務員の伊藤えりなさん(37)は「自然とすごくマッチする」。長男隼明(しゅんめ)くん(6)も「かっこよかった。シンボルマークがかわいくて好き」と喜んだ。
この日のダイヤ改定では、地震の影響で熊本―新八代の一部区間で徐行運転を続けていた九州新幹線が通常運行に戻った。(沢田紫門)
1年ぶりに特急が戻ってきた。外観も内装も車内サービスも「人吉球磨」を満載にして。JR九州の「かわせみ やませみ」が運行を始めた4日、人吉市の人吉駅周辺には歓迎の熱気が広がった。
球磨川に沿う肥薩線の「川線」区間(八代―人吉)では、昨年3月のダイヤ改定で1日上下計10便あった特急が姿を消した。
この日、人吉駅に「かわせみ やませみ」の1番列車が入ると、ホームに集まった市民や観光関係者らが小旗を振って出迎えた。
乗客の福岡市東区の公務員の男性(42)は「木の香りがふんだんで落ち着きのある内装で、心地よかった。何回でも乗りたい」。
駅前でのセレモニーで、人吉市の松岡隼人市長は列車名にちなんでカワセミを市の鳥に追加指定したことに触れ、「人吉球磨の住民すべてが心待ちにしていました」と声を張り上げた。
地元の歓迎ぶりに、蒲島郁夫知事は「すばらしいおもてなしを続けることが人吉球磨に内外の観光客を呼び込む原動力になる」。JR九州の青柳俊彦社長は「沿線の皆さんの声を聞きながら、『かわせみ やませみ』はこれからも日々進化していく」と強調した。
人吉温泉の旅館女将(おかみ)らでつくる「さくら会」の有村政代会長は「これまで以上のおもてなしに努めたい」と意気込む。週末を挟む4日間は会員が交代で午後1時台の特急の出迎え、見送りをするという。「毎日続けることに意味がある。リピーターになっていただくことが一番」と話し、行政側にも、独自の魅力をもつ観光地づくりやポイントを絞ったPRを求めた。
4日は駅前の通りが歩行者天国になり、地元の食や物産を販売する店が並んだ。企画した町おこしグループの関係者は「地元でも盛り上げていきたい。今後も定期的に開く予定」。
■くま川鉄道 「田園」刷新
JRの新観光特急に呼応し、人吉市と湯前町を結ぶ「くま川鉄道」も4日から、観光列車「田園シンフォニー」を刷新した。沿線や車内でのおもてなしを充実させる狙いで停車駅での滞在時間を増やし、所要時間を30分延ばして1時間25分に。「おかどめ幸福駅」にちなんだ幸福祈願の絵馬や土産券なども付ける。
片道990円だった料金は2500円に上がるが、運行日を土・日、祝日に限定し、観光列車と同じ車両を使う通常ダイヤの運行との差別化を図る。
企画営業課の下林孝課長(46)は「運行開始4年目で、遠隔地からの利用客を意識して付加価値を高めた。満足していただけるのでは」と期待。地震の影響で今年度は約7千人にとどまる見通しの年間乗客数を来年度は地震前の1万人に回復させたいと話した。(知覧哲郎)
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