加藤裕則
2017年3月7日10時04分
東日本大震災後、津波で浸水した住宅地の多くは「災害危険区域」に指定され、自分の土地であっても自宅を自由に再建できなくなった。それでも、長年暮らした土地を離れられず、住み続ける人がいる。
東北最大の北上川の河口近くに、宮城県石巻市の吉浜地区はある。佐藤良正さん(69)の家は、その一角にぽつんと立つ。
「何もないでしょう。これが復興の現実ですよ」
かつて56戸が暮らしていた集落は、石巻市の災害危険区域の一つだ。震災後も15戸が残っていたが、市から移転をすすめられ、つぎつぎと土地を離れた。いまでは5戸が残るだけだ。
窓の外には、雑草の生い茂る更地が広がり、工事用ダンプが土ぼこりをあげて走る。「兵糧攻めのよう」と佐藤さんは苦笑した。
震災後、被災市町村は津波に襲…
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