蹴球探訪
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【首都スポ】空手の「沙羅」 女子組手で世界目指す 小中高大と日本一を経験2017年3月6日 紙面から
ノルディックスキージャンプ女子の高梨沙羅(20)=クラレ=は次々と記録を塗り替え、柔道女子78キロ超級の朝比奈沙羅(20)=東海大=も昨年のグランドスラム東京大会で優勝したが、2020年東京五輪の追加競技となった空手にも度胸満点で観客を沸かす「沙羅」がいる。昨年の全日本選手権女子組手で初めて決勝に進出し、女王・植草歩(24)=高栄警備保障=に惜しくも敗れた山田沙羅(22)=大正大=だ。小中高大で日本一になった空手界の沙羅は、全日本選手権初制覇と世界王者戴冠を目標に掲げ、夢に一直線だ。(山崎照朝) 競技は違えど、名前は同じ「沙羅」。高梨はワールドカップ(W杯)通算勝利数で歴代最多に並び、朝比奈もグランドスラム大会で頂点に立った。「同名ですから、それは気にしてますよ」。こちらの沙羅は空手の組手55キロ級。2人に続けとばかりに、ビッグタイトル獲得を目指している。 小1の時に両親から武道を勧められ、空手を選んだ。「あまり好きではなかった」という練習をやる気になったのは、小5の時。DVDで見た女子組手の藤原菜希(元世界王者、現在はボートレーサー)の勇姿で「藤原さんは高校生のときに全日本選手権(04年)で優勝していて、『かっこいいな。この人のようになりたい』と思いました」。07年3月には、全日本少年少女空手道選手権6年女子組手の部で優勝。その後も全国中学生選手権2度、全国高校選手権でも2度、さらに全国高校選抜で日本一に輝いた。 それが高校卒業を前に「いろいろあって、空手を辞めようと真剣に考えたこともありました」という。悩んだ末「高校までしっかり勝ってきたので、大学でも勝ち続けたいという思いが強くなって」と、藤原も学んだ大正大へ進学した。昨年7月、全日本学生選手権で初優勝。12月の全日本選手権では、これまで勝てなかった13〜14年全日本連覇の染谷香予(24)=テアトルアカデミー=を3回戦で撃破し、殻を破った。決勝では、15年優勝の女王・植草に僅差で敗れたものの、大きな“沙羅コール”に場内は沸いた。 「聞こえていました。戦っていて、たくさんの人が応援してくれていると、すごく感じました。3回戦で香予さんの“山(壁)”を突破できた。植草さんも決勝で試合ができ、変われたかな、と思います」 東京五輪まであと3年。「大正大は自分が一番安心して空手ができる場所。新井先生(女子部監督)に教えていただきたいこともあります」と、4月からは職員として大正大に残る。1月のプレミアリーグ・パリ大会は5位と振るわず、新たに「世界の壁」にぶつかった。目指すは高梨のように、どんな条件下でもぶれない安定した戦い。「早く全日本と世界チャンピオンになって、『世界の沙羅』としてジャンプしたい」。山田はそんな青写真を描いている。 ◆沙羅に聞く−空手を始めた理由は? 山田「東京武道館がある綾瀬の近くに住んでいて、いつも武道大会が身近にあって。小1の時に両親が空手か柔道のどっちをやりたいか聞いてきて、空手を。剛柔流の一友会に入会しました」 −全空連(全日本空手道連盟)の全国大会初出場はいつ? 「小5の時、先生に『どうしたら全国大会に出られるんですか?』と聞いたら、東京都の大会で2位までに入ると代表になれると聞いて『じゃ、来年の大会で優勝して全国大会で優勝しよう』と思ったんです」 −得意技は? 「上段回し蹴り。中段蹴りは中学のころからやってきています」 −昨年8月の五輪競技採用後、外国選手の勢いは感じられるか? 「(1月のパリ大会で)それまで55キロ級で入賞していた日本選手が全員初戦負けでした。『これは誰だ?』という選手がいっぱい上がってきてて。頭ひとつ抜け出すために、もっと練習しなければと思いました」 −何か新しい練習法などを考えているか? 「体幹トレーニングは毎日するようにしてますが、器具などではなく、チューブを使ってます。(大学で)仏教を専攻してるので、精神面のためには、座禅でもすればいいのでしょうが(笑)」 −東京五輪に向けて今年の目標は? 「今年はアジア選手権(7月、カザフスタン)が一番大きな大会になるので、(日本代表に)選ばれたいです。アジアも強い選手がいっぱいなので、確実に(タイトルを)取っておきたいです。暮れの全日本選手権も特別な試合。1年の最後の試合ですし、結果を残せたら五輪にもつながっていくと思うので、頑張ります」 ◆大正大空手道部の同期も太鼓判!!「世界チャンピオンになれる人」今春卒業する空手道部の部員は男子4人、女子5人で、卒業後も空手を続けるのは山田だけ。4年間苦楽をともにした阿久津真実さんは「沙羅は努力で才能を開花させています。部活以外に町道場でも練習していました。蹴りが得意技ですが、それまで中段蹴りだったのが、大学に入ってからは上段回し蹴りも得意技にしました。空手を離れても周りをよく見ていて気を配ってくれる、人間的にも尊敬できる人。世界チャンピオンになれる人です」と期待した。 ▽大正大空手道部・新井彩可女子監督(山田について)「技術的には(強豪選手に)全然劣っていないと思う。安定感がもう少し出てくると良いのではないかと思う。自分をいかに追い込めるかだが、真面目に練習しているから心配はしていない。ただ、チャンスに飛び込む思い切りの良さを出せる時と出せない時がある。積極的な試合運びができると、調子の良さも分かる。それが常にできるようになればいい」 <山田沙羅(やまだ・さら)> 1994年(平成6)5月2日生まれ、東京都足立区出身の22歳。167センチ、55キロ。左利き。足立四中、帝京高を経て大正大。今年4月から大正大職員。2007年に全国大会初出場だった第6回全日本少年少女空手道選手権6年女子組手の部で優勝。その後、中学、高校、大学と日本一。昨年は9月のプレミアリーグ・ハンブルク大会、10月の世界選手権でともに55キロ級で銅メダルを獲得。12月の全日本選手権準優勝。趣味は食べ歩き。家族は母と弟。 <狭き門> 20年東京五輪の空手競技は、「組手」(寸止めで相手と戦い、ポイントを争う)で男女3階級(男子=67キロ・75キロ・75キロ超、女子=55キロ・61キロ・61キロ超)それぞれ10人ずつの計60人、「形」(演武)は男女10人ずつの計20人。開催国の日本には各種目1枠、そのほかは世界ランキングや世界予選で決まる見込み。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。 PR情報
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