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【ゴルフ】

<パッと咲け2017>比嘉真美子 華々しい過去を捨て取り戻したわ・た・し

2017年3月7日 紙面から

極度のスランプから脱出、復活へ燃える比嘉真美子=沖縄・琉球GCで(神代雅夫撮影)

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 女子プロゴルフでは毎年新しいスター選手が生まれる一方、華々しい活躍をしながら突如として成績不振に陥り、表舞台から去って行く選手たちもいる。彼女たちは、そしてどんな苦しみを抱え、どうやって再生しようとしているのか。3人のプロを追いかけた。第1回は、ツアー本格参戦1年目の19歳で2勝したものの、その2年後から極度のスランプに陥り、一時はシード権も逃した比嘉真美子(23)=ジブラルタ生命保険。5日に終わった今季開幕戦のダイキンオーキッド・レディスでは7位に入り、復活を印象づけた。 (聞き手・月橋文美)

 −昨季終盤の追い上げはすごかった。奇跡の逆転シード復帰

 比嘉「すごく明るい気持ちで2017年を迎えました。(ご褒美に)トヨタのハリアー買いました。今年はもっと活躍して、レクサスとか買えたらいいな」

 −中盤まではひどい不調だった

 「おかしいと思い始めたのはフル参戦2年目(2014年)の夏ぐらいから。まず、ドライバーショットで打った瞬間の感覚と逆の球筋が出るようになった。次第に体のコントロールができなくなって、球を打つのが怖くなって…。15年中盤からはダウンスイングが下ろせなくなって、17試合連続予選落ち。ゴルフをやりたくないし、ゴルフ場にも行きたくない。人とも会いたくなくて、ご飯食べることさえ嫌になった。毎晩おなかにじんましんが出たりとか。どこから手を付けていいのかも分からない。本当に早くゴルフをやめたかった」

 −でも続けられたのは

 「家族の支えが一番大きいですよね。一番つらかった時期って、心の中で思っていることを家族にさえ表現することができなかった。そういう時期に、何も聞かずに待っててくれた。プレーしてても何してても、やっぱり一番近くにいるんで、感じるじゃないですか、苦しんだろうな、つらいんだろうなって。でも、焦らず、私が気持ちを言うまで、こういうサポートしてほしいって言うまで待っていてくれた。ありがたかったです。つらい、だったり、苦しいだったり、たったそいういう一言なんですけど、それを言えるようになって、ようやく気持ちが楽になってきた」

 −少しずつ手応えを得られたのは

 「自分の状況をきちんと受け入れ始めたのが、15年の終盤ぐらいから。『比嘉の持ち味は飛距離だ、ドライバーショットだ』と言われてきたものを捨てた。出場予選会もキャディーバッグからドライバーを抜いて、過去の優勝した自分、賞金ランクトップ10に入ってた、言ってみれば明るい道を来た自分とおさらばできたというか、いい意味で過去の自分を見なくなった。そうしたら、過去の自分を見なくなったことで4日間乗り越えられ、上位通過で16年のフル参戦権を獲得できた。どんなゴルフでも、1位じゃなくても、絶対に戦い抜いてそれを手にするんだっていう気持ちですね」

 −それでも16年8月最終週の時点でまだ賞金ランク80位台。シード復帰までは無理かなと思われた

 「決定的だったのは、9月のマンシングウェア東海。久しぶりに3日間通していいゴルフができた。それがムチャクチャうれしくて、やってきたことは間違ってなかった、自分はできるんだって思えた。一気に自信のメーターが回復したというか、気持ちの面で上向いた。実は手応えとしては30%ぐらいだったんですよ、ショット、ショートゲーム、パットまで。なのに、いい結果が出た。そして、自信がつくとともに、いや、もっとできるんじゃないかという気持ちもあった。30%が40%になったら絶対にシードを取れる、いいところまで行けるって思っていました」

 −そして、自身最終戦・エリエールレディスで3年ぶり最終日最終組

 「むっちゃくちゃ楽しかったです! 2年間ぐらいまったく自分のいいゴルフができなくて、つらい時期を過ごしての試合だったので、優勝争いのプレッシャーだとか、最終日最終組の緊張感とか、へでもなかったんですよ、正直。ワクワクしかなかったですね。バーディーを毎ホール取っていきたい、そうすれば、すごくハッピーなんだ、と思ったんです」

 −苦しい2年間でゴルフ以外の収穫は

 「私、そもそも他人としゃべることがあんまり得意じゃなかったんですよ。関係者とも選手とも誰とも。それが、この2年で自分の壁がすごく低くなりました。他人と話せるようになった。どの世界も見てみようかなって。友達とご飯に行ったり、いろんなところに観光に行ったり、いろんなものを食べたり。ゴルフだけじゃない世界も興味が出てきました。自分から他の人を誘えるようにもなった。手始めが相撲観戦です」

 −相撲観戦がきっかけで不動裕理とプライベートなお付き合いも増えた

 「不動さんは本当にもう、とてつもなくすごいゴルファーなんですが、話をしてみて、いい意味で普通の人なんだって感じた。あ、人間なんだって思ったのは、すごい衝撃でもありましたし、うれしくもありました。私も不動さんみたいになりたい。ご飯食べてても、話してても、いい意味で普通。もちろんゴルフではスーパースターになりたいですが、気取らず、肩に力が入らずに普通でいることが、こんなにもかっこいいんだって、不動さんを見て感じた。普通の中にもかっこいいっていうものがあるんだって、そういうものを感じさせてもらいました」

◆ラブラブな姉夫婦目の当たりにしても…「今年寿引退?絶対無理(笑)」

<担当記者のちょっとおいしい話> 1月7日、比嘉はスイスとの国境に近いフランスの田舎町にいた。姉・久美子さんの結婚式のためだ。義兄になるのは申ジエや横峯さくらのバッグも担いだこともある、ツアーキャディーのロドリゲスさん。昨秋から何度か比嘉とも組み、今季は正式にタッグを組む。

 ところで、比嘉自身もお年ごろ。今年年女の現在23歳。ラブラブな姉夫婦を目の当たりにして、胸の内に変化は?

 「姉はきれいでしたけど、それで結婚願望が強くなるっていうのは…。まあ、私もいつかはすてきな人に出会えたらいいな、と思いましたけど。出会えなかったら40歳になる可能性もある」

 やっぱりゴルフが第一? 「自分の中で納得した上で、引退する時を決めたい。結婚しても納得してなかったら続けたいし、したと思ったらやめるかもしれない。まだ全然納得できていないので、今年寿引退っていうのは絶対無理です。ないないないないない(笑)。どんな大恋愛をしても、それだけはないです、100%」。力いっぱい否定していたのでした。 (月橋文美)

<比嘉真美子(ひが・まみこ)> 1993(平成5)年10月11日生まれ、沖縄県本部町出身の23歳。161センチ、58キロ。11歳でゴルフを始め、2010年日本ジュニア優勝、11年日本女子アマと日本女子オープンローアマ。12年日本女子アマ連覇後、プロテストに一発合格。13年ヤマハレディースなど2勝し、賞金ランク8位。15年賞金ランク95位でシード落ち。ゴルフ界きっての相撲女子。

 

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