【ワシントン=川合智之】トランプ米大統領は6日、移民や難民の入国を制限する新たな大統領令に署名した。1月のイスラム圏7カ国などからの入国制限令は連邦裁判所が差し止めを命じたが、今回は差し止めの回避を狙ってイラクを対象から除くなど制限条件を緩和した。ただ前回と同様、違憲かどうかを巡って司法の場で争われることになりそうだ。
新大統領令は16日に発効する。テロ関係者の入国を防ぐため、スーダン、シリア、イラン、リビア、ソマリア、イエメンの6カ国の一般市民の入国を90日間禁じる。過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで重要な役割を担うイラクは対象から除外した。米政府高官によると、イラクとは入国者に関する情報共有や審査手続きで協力することで合意した。
1月の大統領令は、既に発効されていた約6万人分の査証(ビザ)が無効になった。今回は既にビザや米国永住権(グリーンカード)を保有している人は制限の対象外とし、従来通り入国を認める。6カ国と別の国の二重国籍者も制限対象外とする。
難民の受け入れを120日間停止し、オバマ前政権が昨年10月~今年9月の1年間で11万人としていた難民受け入れ目標を5万人に削減する点は前回の大統領令を維持した。前回は例外的に受け入れる難民として「迫害を受けた少数派宗教」の例外規定を設け、キリスト教徒は許可しイスラム教徒は拒否することを示唆していたが、今回は例外規定を削除した。
1月の大統領令については西部ワシントン州などが違憲訴訟を起こし、連邦裁判所が差し止め命令を出した。審理の長期化は必至で、トランプ政権は新大統領令に置き換えて迅速な執行を図る。