菅官房長官が発表 安倍首相「北朝鮮が新たな脅威に」
政府は6日午前、北朝鮮が同日午前7時34分ごろに弾道ミサイル4発を発射し、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると発表した。日本のEEZ内に北朝鮮が発射したミサイルの弾頭部分が落下したのは昨年9月以来で3回目。安倍晋三首相は記者団に「北朝鮮が新たな脅威となったことを明確に示すものだ」と述べた。
防衛省などによると、ミサイルは北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近から東方向に4発がほぼ同時刻に発射された。いずれも約1000キロ飛び、秋田県・男鹿半島から西に約300~350キロの日本海に落下。3発はEEZ内で、残る1発もEEZの近くに落下したとみられる。政府は、移動式発射台が使用されたと推定している。
菅義偉官房長官は緊急に記者会見し、「国連安全保障理事会決議への明白な違反だ。度重なる挑発行為を断じて容認できない」と語った。船舶などへの被害の報告は受けていないという。
首相は6日午前の参院予算委員会で「漁船等が操業している可能性もあり、極めて危険な行為だ」と指摘。ミサイルの種類に関し「北朝鮮は新型ミサイルの発射を示唆していた。米国と連携して情報収集・分析にあたっている」と述べた。民進党の福山哲郎氏が早急な対応を促したことを受け、参院予算委は休憩を決定。政府は昼に開催予定だった国家安全保障会議(NSC)を急きょ午前中に開催し、昼にも2回目のNSCを開いて対応を協議した。
政府は北京の大使館ルートを通じ北朝鮮に厳重に抗議した。菅氏は北朝鮮に対する制裁強化について「国連として更なる厳しい対応をするのは当然だ」と語った。首相は、(1)情報収集と分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報提供を行う(2)航空機、船舶などの安全確認を徹底(3)不測の事態に備え万全の態勢を取る--の3点を指示した。
岸田文雄外相は、安保理決議の完全な履行を中国をはじめとする関係国に求め、安保理での力強いメッセージ発表に向けた働きかけを行う方針を記者団に示した。岸田氏はまた、ティラーソン米国務長官、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と個別に電話で協議し、さらなる挑発行動の自制や安保理決議の順守を強く求めることで一致。稲田朋美防衛相は「警戒監視に万全を期すよう指示した。ミサイルの種類については分析中だ」と語った。
北朝鮮が発射した弾道ミサイルは昨年8月に男鹿半島の西約250キロのEEZに1発、9月には北海道・奥尻島の西約200~250キロのEEZに3発が落下している。【田中裕之、小田中大】
排他的経済水域(EEZ)
1994年発効の国連海洋法条約で沿岸国の経済的な主権が及ぶと定められた海域。沿岸国は最大200カイリ(約370キロ)の範囲で設定することができ、水産・鉱物資源の探査や開発の権利を持つことが認められる。