トランプ米大統領、オバマ政権が自分を盗聴と FBI長官は否定

  • 2017年03月6日
US President Donald Trump speaks by phone in the Oval Office at the White House in Washington, 28 January 2017 Image copyright Reuters
Image caption トランプ氏

ドナルド・トランプ米大統領がツイッターで、オバマ前政権が大統領選の最中に自分を盗聴していたと根拠の提示なく主張したことについて、連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は司法省に対して、大統領のこの主張を否定するよう要請した。米紙ニューヨーク・タイムズなど複数の米メディアが5日に伝えた。

トランプ大統領は4日朝、オバマ前大統領が大統領選中にトランプ・タワーの盗聴を命じたとツイートした。主張の根拠は示していない。

これに対してオバマ氏の広報担当、ならびにオバマ政権下のジェイムズ・クラッパー前国家情報長官が、盗聴の事実はないと否定したものの、スパイサー大統領報道官は、ホワイトハウスが連邦議会に事実関係を調べるよう促したと明らかにした。

コーミー長官が司法省に、トランプ氏の主張を受け入れないよう求めたのは、もしその通りならばFBIが法律違反を犯したことになるからだとみられている。

Image caption トランプ氏は「現職大統領が大統領選前に『盗聴』するのは合法なのか? 裁判所に却下されているのに。かつてないひどい話だ!」などとツイートした

クラッパー前情報長官はNBCテレビに出演し、外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく米政府のFISA裁判所がトランプ・タワーの盗聴を許可していたならば、情報長官として自分が知らないはずがないと述べ、そのようなFISA裁判所命令はなかったと述べた。

また、オバマ政権の報道官だったジョシュ・アーネスト氏は5日、ABCテレビに出演し、「大統領執務室の今の住人には意外なことかもしれないが、合衆国大統領は、米国市民の盗聴を独断的に命令する権限を持たない」と発言。

「対諜報活動や犯罪捜査の一環としてFBIが盗聴権限を使うことにした場合には、FBIと司法省が連邦裁判所に許可を求め、盗聴するだけの、相当な捜査上の事由があると主張しなくてはならない」

FISA裁判所は、米国内にいる「外国工作員」に対する盗聴捜査の権限を、主にFBIや国家安全保障局(NSA)に与える。

FISA令状の噂を右派メディアが報道

FISA裁判所が盗聴令状を出したという噂は、昨年11月から出回っていた。

大統領選前日の11月7日には、英保守党のルイーズ・メンシュ元下院議員が、FISA令状について記事を書いていた。メンシュ氏は、令状は私用サーバーとロシアの銀行2行との間の通信に関するものだと書いていた。メンシュ氏はさらに、トランプ氏のツイートと同様、令状請求が一度却下されていると書いた。

今年1月には、BBCのポール・ウッド記者も、ロシア政府がトランプ氏に関する問題情報を握っているという報道について解説する中で、「FISAに基づく米政府の秘密裁判所は10月15日、2つのロシア銀行について捜査令状を出した。私はこれを複数の情報源から知らされ、米情報諸機関の幹部としか書けない人物から確認を得た」と書いている。

英紙ガーディアンもほぼ同時期に、同じ裁判所命令に触れている。

しかしいずれも、電話の盗聴についての言及はない。

この話題があらためて浮上したのは今月2日になってからで、米保守系ラジオ司会者のマーク・レビン氏が「静かなクーデター」と呼んだ。次に右派メディア「ブライトバート」が3日、「オバマ政権」が「盗聴」や「盗み聞き」をしようとしていたと書いた。レビン氏やブライトバートの主張の裏付けは不明で、事実関係を知る立場にいる人からの確認は一切ない。「ブライトバート」の前編集責任者は、トランプ氏の首席戦略官。

トランプ氏はこのブライトバート報道の後、朝になって盗聴されていたとツイートを連投。以前の報道を知っていたのかは不明で、今回以前にFISA令状についてツイートした様子はない。

(英語記事 Trump Obama: FBI chief Comey 'rejects' phone tap allegation / Did Obama really wiretap Trump Towers?)

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