6月14日から3日間にかけて、アメリカで行われたゲームの見本市「E3 2016」。
それにあわせてゼルダシリーズの新作「ブレス オブ ザ ワイルド」の新トレイラーとプレイアブル体験版が公開された。
公式ホームページのトピックスに任天堂ブースの写真や体験版のプレイ映像がまとめられている。
一通り目を通した俺はすぐに理解した。
今回のE3で発表になった「ゼルダ」関連の情報で一番重要(語られるべき)なのは、
ザコ敵「ボコブリン」であると。
今回初公開となった、
ボコブリンの造形(客観的な外見)は、見ただけで「ブレス オブ ザ ワイルド」が持つレベルデザイン(難易度設定やゲームとしての遊び)の原則が理解できるようになっている。
※特に今作から導入された新しい仕組みや遊びが強く反映されているのがわかる
まずは一番の特徴といえるボコブリンの「大きな耳」!
これは、「プレイヤー(リンク)が歩いたり走ったりした時に発生する音がまわりの世界へ影響を及ぼす」という新システムを体現した造形となっている。
つまり、ボコブリンは聴覚がものすごく発達したモンスターなのである。
こんな音に敏感な連中がたくさん歩き回っている世界にプレイヤー(リンク)をいざなうのだ、当然任天堂スタッフはノイズゲージ(プレイ画面右下の波形パラメータ)を提供する義務があるわけだ。
とにかく耳が良いボコブリン。もしも、聴覚に加え視覚まで優れていたのなら(=視野が広かったなら)もはやザコ敵ではなくなってしまう。
だから背は低く、さらには首を短くして猫背に。
茂みの向こうを見渡すことはできない彼らが食事等でリラックスするときは、見張り台に見張りを立てて休息するのだ。
ボコブリンの「大きな耳・低身長・猫背」というデザインが、敵モンスターの挙動を制御するAI体系の主義・原則をみごとに象徴している。(敵が実際に生活しているようなリアル感、ゲームの中でその世界の生態系を表現するというのはこういうことなのだ)
次に注目してもらいたいのは彼らの頭の大きさである。
頭が大きいから「デフォルメされたキャラクターみたい」「見た目がかわいらしくて弱そう」とプレイヤーのプレッシャーを弱める効果だけではなく、
頭が大きいということは=弱点が大きいということになり、ボコブリンは「クリティカルヒットが出やすい初心者向けのキャラ」だということがわかる。
「ブレス オブ ザ ワイルド」では剣や盾、弓すべての武器に「耐久値」が設定されており、がむしゃらに連続攻撃していると武器が壊れロストしてしまう。
例えば、弓で狙撃する時も、「できるだけ弓を引かない」=「ヘッドショットを一撃で決める」=「相手の弱点を突くクリティカル攻撃を出す」ということは
「相手を素早く倒し、いち早く自分に有利な状況に持ち込む」だけでなく「有効な武器の使用回数を抑える」という意味合いもそこに付与される。
これらをシンプルに言い換えると、武器に「耐久値」が設定されているから、今作のボコブリンの頭は大きいのである。
試遊体験版で実際ににでてくる動物が「鹿」ではなく「イノシシ」なのも、イノシシの方が頭が大きくヘッドショットしやすいからであろう。
※PVに出ていた「鹿」はイノシシより倒すのが難しく、得られる肉の質もイノシシより高価なものになると予想される。
ではここでゲームデザイナーになったつもりで「ボコブリンを強敵にせよ!」という思考ゲームをやってみよう。
①まず首を長くして猫背をなおしましょう。視座が高くなり、茂みに隠れているリンクもいち早く見つけることができるようになります。
②小顔になりましょう。クリティカルヒットの当たり判定の面積が小さくなり、被ダメは抑制され、リンクに武器を沢山消費してもらえるようになります。
③あとは、強い武器を持たせたり、体力を増やしたり、徒党を組ませて複数と同時に戦わせるようにすれば中ボス級のモンスターなります。
※ゲームと呼ぶのもはばかられるような「ソーシャルゲーム」におけるレベルデザイン=難易度設定は上記の③に終始しているケースがほとんどである
(だからおもしろくねーんだよ)
まあ、このワークショップの答え合わせとして前作「スカイウォードソード」のボコブリンと今作のを比較してみましょうか。
ありがとう、ボコブリン
ボコブリンはリンクに牙をむく敵であると同時に、新しいシステムやルールを教えてくれる「チュートリアルそのもの」であるのだ。
任天堂ブースでボコブリンが気合い入れて立体化されている(予算がかけられている)のも当然なのである。
「ゼルダの当たり前を見直す」というコンセプトで開発されている「ブレス オブ ザ ワイルド」ですが、
ボコブリンの造形の意思決定ひとつひとつを見てみるとシリーズで最濃の「ゼルダらしさ」が詰まっているというお話でした。