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2015年 01月 01日
日露戦争後、関東州と南満州鉄道附属地を手に入れた日本は、満鉄主導で現在の東北地方の開発を進めましたが、いかにも日本らしいと思うのが、各地に温泉を開発し、行楽地にしたことです。 なかでも有名だったのが、湯崗子温泉(鞍山)、熊岳城温泉(営口)、五龍背温泉(丹東)の満州三大温泉でした。 これら満州の温泉を世に広めるのに一躍買ったのが、明治の文豪たちです。 最初の話題提供者は、『満韓ところどころ』を書いた夏目漱石。彼が訪ねたのは日露戦争後わずか 4年目( 1909(明治 42)年)で、満鉄沿線は開発途上でした。それでも、漱石は熊岳城温泉と湯崗子温泉を訪ねており、兵士の療養小屋に毛の生えた程度の温泉宿の様子を「すこぶる殺風景」と評しています。 時代は移って大正期に入ると、紀行作家として有名な田山花袋のベストセラー『温泉めぐり』や『満鮮の行楽』などの読み物の中に、満洲三大温泉の滞在記があります。花袋が訪ねた 1920年代になると、それぞれ洋風の温泉ホテルができていました。 「私達はビイルを飲んだり、湯に浸かったりして、そこに午後二時までいた」(熊岳城温泉) 「温泉場としては、内地では、とてもこれだけのものは何処にも求めることが出来なかった。日本風の室ではあったけれども、副室がついていて、半ばベランダのように椅子だの卓だのが並べてあるのも心地が好かった」「今までに嘗て見たことのない、箱根、塩原、伊香保、何処に行ったって、こうした設備の整ったところはないと思われる立派な浴槽」(湯崗子温泉)。 この時期、すでに満洲にモダンな温泉地ができていたことがわかります。 昭和に入ると、与謝野寛・晶子夫妻が湯崗子温泉を訪ね、こう書いています。 「鉄道の本線に沿って便利なために、在満の邦人が絶えず南北から来て浴遊し、ことに夏期には露西亜人や支那人の滞浴客もあって賑ふそうである」(『満蒙遊記』)。 夫妻が訪れたのは 1928(昭和 3)年。湯崗子温泉は日本国内の多くの温泉地より一足先に国際的なリゾートになっていたのです。 では、当時これほど栄えていた満洲三大温泉は現在、どうなっているのでしょうか。明治の文豪たちが訪ねた名温泉はいま……。 2010年5月、ぼくはこれらの温泉地を訪ねました。 まず湯崗子温泉。そこは温泉療養のための国際医療センターとなっていて、ロシア人が多く訪れていました。 その一角に龍宮城のような建物があり、そこはかつてラストエンペラー溥儀が滞在した温泉ホテル「対翠閣」を大幅改修したものでした。館内には、溥儀のために造られた豪華浴室「龍池」が残っていました。この浴室は対になっていて、皇后専用の浴室「鳳凰」も併設。料金を払えば誰でも個室風呂として利用できます。 これが絢爛豪華な溥儀の個室風呂「龍池」です。 対翠閣(現龍宮温泉)の前で記念撮影する溥儀夫妻(1932年3月8日) 次に熊岳城温泉。戦前期に大連や満鉄沿線の人々が大衆的な行楽地としてレジャーを楽しんでいた熊岳城には有名な温泉ホテルがありました。 これが戦前期の温泉ホテルの絵はがきです。 ところが、訪ねるのが1年遅かったのです。地元の人の話によると、09年頃に解体され、いまや高級温泉リゾートとして再開発されていました。 リゾート内には日本式の露天風呂がいくつも造られていました。 五龍背温泉も、大型の湯治療養施設がいくつもできていました。 幸い1936年に満鉄が造ったという露天風呂と湯小屋が残っていました。 当時の温泉ホテルの建物は、現在は軍の施設内にあり、外国人は訪問できませんが、地元の友人に写真を撮って来てもらいました。昭和モダンの雰囲気が残っていました。 満洲三大温泉の泉質は、硫黄や酸性泉などの刺激のある「火山性の温泉」ではなく、地熱で温泉が湧く「非火山性の温泉」です。どの温泉も、日本統治が終わると、日本的な行楽地というより、ソ連の影響を受けた湯治療養施設に転換していきます。 2000年代に入り、中国が豊かになってくると、日本風の温泉リゾートを開発する動きが各地に起こりまた。その際、日本統治時代の老朽化した温泉ホテルの多くは姿を消してしまったのです。 満洲三大温泉を訪ねるには、大連からのアクセスが便利です。湯崗子温泉と熊岳城温泉は瀋陽と大連を結ぶ高速鉄道を途中下車。いまでは1時間もかかりません。五龍背温泉には、瀋陽からなら瀋丹線で途中下車。大連からだと、まず丹東までバスで行き(所要4時間)、そこからバスか鉄道に乗り継いで行けます。 ●湯崗子温泉 湯崗子龍宮温泉 鞍山市湯崗子温泉旅游度暇区 http://www.tgz.com.cn/ ●熊岳城温泉 天沐営口熊岳温泉度暇村 営口市経済技術開発区熊岳鎮温泉村鉄東街 http://www.youkecn.com/ts_list.asp?id=14700&classID=31 ●五龍背温泉 五龍背鉄路療養院 丹東市五龍背鎮温泉路303号 http://www.wulongbeiwenquan.cn/ それぞれの温泉地の詳しリポートはいずれまた。 ■
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by sanyo-kansatu
| 2015-01-01 13:58
| 北東アジア未来形:満洲の今
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