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香港の首長選 中国介入が自治を崩す

 中国の特別行政区、香港のトップである行政長官(任期5年)選挙の候補者が出そろった。26日の投開票に向けて選挙戦が本格化する。選挙委員会(定数1200人)による投票で、直接選挙ではない。しかし、複数候補の出馬で一定の競争原理は働く。中国は介入せず、委員の自主的な投票を見守るべきだ。

     候補者は3人だが、事実上、香港政府ナンバー2だった林鄭月娥(りんていげつが)前政務官とナンバー3の曽俊華(そうしゅんか)前財政官の対決とみられている。

     立候補には選挙委員150人以上の推薦が必要で、中国の意中の候補とされる林鄭氏は親中派を中心に半数に近い579人を集めた。香港メディアは「中国政府の出先機関が林鄭氏への支持を働きかけた」と伝えている。曽氏は民主派からの支持も得て立候補にこぎつけた。

     2014年に世界標準の民主化を求める「雨傘運動」が起きた際、学生らに厳しい対応を取った林鄭氏に対する批判は根強い。住民全体を対象にした世論調査では曽氏への支持が林鄭氏を上回る。本番は無記名投票のため、曽氏は親中派の切り崩しで逆転を狙っている。

     香港返還から20年。約束されていたはずの「1国2制度」に基づく高度な自治が揺らいでいることが、対中不信につながっている。昨年9月の立法会選挙では香港独立を志向する「本土派」と呼ばれる反中勢力が進出したが、中国の介入もあり、2人が議員資格を失った。

     今回の行政長官選でも中国の介入を批判する論評を掲載した新聞社が脅迫などを受け、主要なメディア団体が言論の自由を訴えて共同声明を発表する事態が起きている。

     香港人自らが代表である行政長官を選ぶことが「高度な自治」の前提のはずだ。しかし、中国の意中の人物とされる候補が選出されることが慣例化し、直接選挙の洗礼を経ない長官の資質への疑念も強まっている。梁振英(りょうしんえい)長官は中国の信頼を失って再選を断念した。2代目長官だった曽蔭権(そういんけん)被告は先月、在任中の不正で有罪判決を受けた。

     香港社会への中国の介入も目立ち始めた。香港の出版社関係者が次々に失踪し、中国で取り調べを受けた事件は記憶に新しい。1月末には中国指導部に近い中国出身の富豪が香港中心部のホテルから姿を消し、経済界にも懸念が広がった。

     香港の利益を代表し、中国に毅然(きぜん)と物を言えるような人物が必要だ。次期長官は直接選挙実現に向けた選挙改革を再始動させる責任も負う。

     中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は外交、内政で「包容力」の重要性を強調している。まずは、香港の同胞に「包容力」を示すべきだ。

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