【3月5日 時事通信社】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が殺害された事件をめぐり、マレーシア政府から国外追放の通告を受けた北朝鮮の姜哲駐マレーシア大使は、5日にもマレーシアを出国する。同事件に端を発した両国の摩擦は大使の追放劇に発展。今後の北朝鮮の対応次第では関係はさらに冷却化し、国交断絶につながる可能性がある。

 マレーシア側は姜氏に対し、6日午後6時(日本時間同7時)までに出国するよう求めている。国営ベルナマ通信によると、ザヒド副首相兼内相は5日、大使追放について「われわれがこの問題の解決に真剣に取り組んでおり、(北朝鮮に問題を)操作されたくないという明確なメッセージを北朝鮮に与えるものだ」と記者団に述べた。

 姜氏は事件発生から4日後の2月17日、遺体の引き渡しをマレーシア側に求めたが拒否されたと主張し、「われわれをだまそうとしている」「敵対勢力と結託している」とマレーシアを非難。さらに、同20日の声明でも「マレーシア警察の捜査を信用できない」「南朝鮮(韓国)保守政権が仕掛けたでっち上げ」と決め付けた。

 マレーシア側は姜氏の批判に対し、「外交上無礼」(ナジブ首相)、「妄想にとらわれ、うそと非難を吐き続けている」(アニファ外相)と猛反発した。今後の対応を協議するため駐北朝鮮大使を召還したのに続き、ザヒド副首相が外務省に対し、北朝鮮との外交関係を再検討するよう指示。今月2日には事実上の報復措置として、北朝鮮国民に認めてきたマレーシアへのビザなし渡航制度の廃止を発表した。

 だが、北朝鮮側は強硬姿勢を崩さなかった。アニファ外相が4日夜に発表した声明によると、マレーシア外務省高官は2月28日、同国を訪れている北朝鮮代表団と会談し、姜氏の批判について書面での謝罪を要求。しかし、北朝鮮側はこれに応じなかった上、姜氏も4日夕に設定されていた外務省高官との会談に現れなかったことから、マレーシア政府は「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として大使の追放を決断した。

 正男氏事件の容疑者として逮捕されたが証拠不十分で3日に釈放された北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル氏(46)は4日、マレーシア出国後に到着した中国・北京で報道陣に「共和国(北朝鮮)の尊厳を傷つける謀略劇だ」とマレーシア側を批判。このこともマレーシア政府を刺激し、火に油を注ぐ形になった。(c)時事通信社