『フォークソングの時代』 曲目メモ by 森山良子
2015/04/08
天性の美しい歌声と抜群の歌唱力で日本のトップシンガーとして活躍を続ける森山良子が、「フォークの女王」と呼ばれたデビュー時代に流行っていたフォークソングを中心に選曲したファン待望のカバーアルバム『フォークソングの時代』をハイレゾでリリース。
名ギタリスト、小倉博和をパートナーに迎え、絶妙なハーモニーのギターサウンドであの頃の名曲に新鮮な彩りを加えた今作。ここに収録されるのは、吉田拓郎“今日までそして明日から”をはじめ、サイモン&ガーファンクル“スカボローフェア”、“悲しくてやりきれない”など、や森山良子自身が選んだ好きな曲、歌いたい曲の数々。
ここでは、森山良子自身が収録曲について綴った楽曲メモをご紹介。それぞれの楽曲に対する思い入れやエピソードなど、ファンにはうれしい貴重な内容。是非楽曲とともにお楽しみください。
フォークソングの時代 曲目メモ by 森山良子
01. 今日までそして明日から
吉田拓郎さん抜きでは私の中に日本のフォークは存在しません。
若かりし頃の私が歌っていたのはあくまでもアメリカンフォークであって、それをコピーしていたに過ぎないのです。
そんな私の前に現れた吉田拓郎は、東京や関西のお坊っちゃま学生のアメリカンフォークコピー組を鼻先でせせら笑う様に出現した。甘っちょろい事やってんじゃねーぞ!! とばかりに。私も甘っちょろ組だったからこの人、何をしようとしているんだろう? と若干脅威だった。吉田拓郎は、ここからフォークブームを表面ではなく、本当の自分を自分の言葉でハッキリ強く歌にしてメッセージを送った。日本の若者たちに音楽を通して揺さぶりを掛けた、そんなエネルギーに溢れていた。THE ALFEEの坂崎幸之助さんが「拓郎さんの歌は、拓郎さんと同じ譜割りで歌わないと何だか違うんだよね。」と言っていたが、正しくそうだった。
02. さらばジャマイカ
もともとはハリー・ベラフォンテという美しい黒人が歌った曲で私が子どもの頃に世界中で大ヒットしたのですが、高校生の頃、私をフォークの世界に誘ったザ・ブロードサイド・フォーの得意なナンバーでもありました。
男の人が歌う歌ですが、チャーミングな大好きな歌なので構わず歌ってしまいました。
03. プカプカ
今は亡き西岡恭蔵さんのこの歌は、沢山の人にカバーされていますが、私にとってもこの歌の魅力は心のどこかの場所にスポっと入って、歌いたい心を刺激してくれます。
04. スカボロー・フェア
イングランドの古い民謡をサイモン&ガーファンクルがアレンジをして今の形になったと聞いた。もとは女性と男性が歌い合う形だったらしい。
こういう歌が本当のもともとの根にある民謡、古謡、フォークソング…と呼ばれるのでしょうか。日本各地に永く伝わる民謡や古謡も同じように唄い継がれて来たのでしょう。
05. ドナ・ドナ
ジョーン・バエズのアルバムLPに何度も何度も針をおとし、コピーして人前でギターを弾きながらフォークソングを歌った最初の曲です。
この歌は売られてゆく牛という設定になっていますが、元の歌はもっと古いようで(1938年)、いつの時代にも虐げられる対象が存在し、ジョーン・バエズはそういうことに対するプロテストの気持ちを込めてのメッセージです。
ミックスダウンでオグちゃんこと小倉博和さんと悲しい曲だねと話しました。
06. 見上げてごらん夜の星を
1963年、フォークソングブーム以前に沢山のヒット曲を手掛けた本物のプロ、ヒットメーカーによって作られた曲ですが、時代を超え歌い継がれる大スタンダードナンバーだと思います。
料理の味付けや出汁の取り方の様に家庭の味が有るとしたら団塊世代の私達は歌謡曲とは少し違う味付けのこういった曲達の洗礼を受けたのち、次なるフォークブームの時代へと進んだのでしょう。
07. サークル・ゲーム
アメリカンフォークソングブームは、ギターを持ち音楽に明け暮れた学生たちが大学を卒業するのと同時に急降下していった。
そんな中にアメリカンフォークを土台にしながらも次のステップに入ったと思わせる新しく進化した音楽がやって来た。ジョニ・ミッチェルはその代表選手だと思う。
変な言い方だけれど、とてもMusician的な音楽と文学的な詩で、単細胞の私はなかなか呑み込む事が出来なかった。今、ようやく呑み込んでみている次第です。
08. 風をあつめて
1971年にはっぴいえんどが発表したこの曲は、オグちゃんからの提案でした。
時代がどんどん変わり音楽も様々な変遷をしているのに、新鮮さが変わらない。シャレた歌だなとも思い、ストレートでシンプルだとも思い、クールでもあったかいとも思える。そしてカッコイイ曲だ。
09. 悲しくてやりきれない
この曲は1969年の「森山良子カレッジ・フォーク・アルバム」で、もうすでにカバーしています。デビューして1年目2年目の私は、コンサートの合間にはほとんどレコーディングしていたと言っても過言ではありません。だから歌を覚えても次々忘れて行く… ま、今とさほど変わらないか!? それはさておき、この歌は私の心の中にある“いつか歌いたい歌”の上位にランキングしていました。ようやくその時がやってきました。待ってました!!
10. 卒業写真
アメリカにおけるジョニ・ミッチェルと日本におけるユーミンの出現は、私にとって大きく時代が変わってゆく事を十分に分からせてくれました。
フォークソングの時代に青春を送った私の心にも、ああ何だか今までとは違う、「その人の音楽」「ユーミンの音楽」といった、ニューミュージックなどとは一概にはくくれない、その人の個性が至るところに散りばめられたオリジナルなものでした。
ユーミンの歌の数々は1回目よりも2回目、2回目よりも3回目、10回目より30回目と、歌うほどに味わい深さが増すのです。
11. あの素晴しい愛をもう一度
フォークソングの時代と銘打ったこのアルバムにこの曲は絶対にかかせない! と誰もが言った。日本のフォークソングのあらゆるシーンでこの歌は皆で歌い、エンディングを盛り上げる役割を果たしているが、加藤和彦さんと北山 修さんのコンビは当時のフォークの時代をメジャーな形で目いっぱい盛り上げた立役者です。
12. 夢の住家
1曲は新しいオリジナルを作りたい…と思いつつ、このアルバム最後に滑り込んだ収録でした。
オグちゃんが先にメロディーを作り、少女…春…窓辺 というテーマを頂いた。
私の中の少女は夢のかたまりです。夢見るように日々を生きている。夢は少し叶うとどんどん先に走っていって、辿り着きそうになるとまた形を変えて届かない場所に行ってしまう。そして描いた通りには行かない事をいつか知る。見えているようで見えない漠然とした夢の形。
私事ですが、母は「夢を見なさい、大きな夢を、夢を見るのは誰にも迷惑がかからないから」と事ある毎に小さな頃から私に言っていた。その言葉にそそのかされた私は、今でも夢を追いかけている。
それぞれの夢の住家をいつかきっと見つけられますように。
森山良子 プロフィール
1967年「この広い野原いっぱい」でデビュー。その後、ミリオンセラー「禁じられた恋」をはじめ「涙そうそう」、「さとうきび畑」、「あなたが好きで」など、数々のヒット曲を生み出す。透明感のある歌声と歌唱力で、名実ともに日本のトップシンガーに。
2002年、第44回日本レコード大賞において最優秀歌唱賞、金賞(「さとうきび畑」)、作詩賞(「涙そうそう」)を受賞し3冠を達成。
2006年、第48回日本レコード大賞で「涙そうそう」が特別賞を受賞。2007年、「2006年度 芸術選奨 文部科学大臣賞」「第49回毎日芸術賞」受賞。2008年、「紫綬褒章」受章。
2013年、初めてクラシックを歌った61枚目のアルバム「Ryoko Classics」リリース、オーケストラとの共演による「Ryoko Classics シンフォニックコンサート」を各地で開催している。
2015年4月、通算62枚目となるニューアルバム『フォークソングの時代』をリリース、全国にて「森山良子コンサートツアー2015-2016~フォークソングの時代~」をスタートさせる。来年、2016年1月にはデビュー50周年を迎える。
◆森山良子 オフィシャルサイト