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俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

高校生の男女交際を不純異性交遊などと言う教師はたぶん童貞。

シモ

「ぼくは勉強ができない」という短編集を読んで思ったこと。

男子高校生の時田秀美は登校途中、コンドームを落としてしまった。
時田が落としたコンドームを見つけた学年主任の佐藤先生はコンドームを見つけ、怒り狂った。

「時田、おまえという奴は───...!!」

「は?」

「は?じゃない!!こんなものを落として行きやがって」


と、佐藤先生は震える手を差し出し、コンドームを見せてきた。


「あ、すいません。わざわざ拾って下さってありがとうございます」

「き、貴様!こんなものを学校に持ってきても良いと思っているのか」

「別に、学校に持って来ようとした訳ではなくて、あの、それは、むしろ学校の後に...」

「黙れ───!!!」


と佐藤先生は怒り狂い、「お前は学校に何をしに来ているのだ」と説教を始める。

「おまえのような生徒は、今の内にしっかり指導しておかないと、世の中に出て、とんでもないことになる」

と言い放ち、放課後の職員室に時田青年を呼び出した。


放課後の職員室で、佐藤先生は説教を続ける。

「こんなことにうつつを抜かしていると、勉強に身が入らんだろう」

そんな佐藤先生を見て、青年は考える。

馬鹿じゃないのか、こいつ。セックスにうつつを抜かそうが、そうでなかろうが、ぼくの場合、どちらにせよ、勉強など好きではないのだ。
セックスは勉強の邪魔をすると本当に思っているのだろうか。それを我慢する方が、余程、精神状態を悪くするというのに。



このようなやり取りを読んで、中学時代、先生に説教された過去を思い出した。
教師というのは、好きな生徒にはとことん優しいが、嫌いな生徒には厳しい。

当時の僕はヤンキー界で成り上がりを目論んでおり、先生に反抗することをファッションと思っていた節があったので、当然先生には嫌われていた。
そして、嫌われていることを差し引いて考えても、やっぱり教師が男女の付き合いに口を出すのはおかしいと思うのだ。

僕は中学時代、完璧なる童貞であった。
キスもしたことがない、完璧かつ潔癖、身も心も清らかな童貞である。

しかし、ヤンキーの頂点に立つ「番長」は、その周りにいるヤンキー女と当然のように性行為を済ませていた。
僕はそんな番長を見て、心から羨ましく思った。

ある日、番長は僕を見て言った。


お前も、セックスしたいか?

うん、したい。

これを、やるよ。


そういって僕に手渡してくれたのが、番長が使わずに余ったコンドームだった。
僕はそのコンドームをお守りとして、常に大切に持ち歩いた。

番長のコンドームを持って歩けば、いつか彼女ができると思っていたのだ。
そんなある日、部活帰りの更衣室で、僕はうっかりお守りのコンドームを落としてしまった。

それが体育教師に見つかり、問題になった。

これを落としたのは誰だ。
体育館にいる部活動生を集めて、教師は言う。


あれはたしかに僕のコンドームだが、僕は完全無欠の童貞だ。

手を上げて説教されるのは屈辱だが、それ以上に


「童貞のくせにコンドームを持ち歩いている」


ということを後輩を含めた周りの生徒に知られることを恐れた。
犯人が名乗り出ない学級会でありがちの展開だが、「犯人が名乗り出るまで部活は禁止だ」みたいなことを教師が言った。


犯人ってなんだ。コンドームを持ち歩くことは犯罪なのか?


結局、体育教師と生徒の我慢比べで、我慢強さだけが取り柄の体育教師に勝てるわけもなく、僕は周りの生徒を巻き添えにして、しかも先生にも怒られるという二重の屈辱を味わうことになった。

でも、僕は今でもこう思っている。

コンドームを持ち歩くことはむしろ正しいことなのだと。

お前たち教師は、中学生の頃恋愛してこなかったのか?
人生で最も多感で、最も恋愛によって幸せを感じられるこの時期に、一体何をやってきたのだ。

中学生がセックスに興味を持つのはむしろ健全なことだ。


僕は性行為なんて全く興味ないザマス

みたいな奴がいたら、そいつは頭がおかしいか、強がっているだけだ。

それで、中学生の性教育では、

セックスするのは不純だ

セックスするのはいけない

と教えるのではなく、セックスは子供を作るための行為であり、妊娠する可能性があるものだとちゃんと教えるべきだ。

隠してもどうせ、みんな調べるのだ。放課後はみんな、まだしたことのないセックスの話ばっかりしている。

中学生はもし妊娠してしまったら、生まれてくる子供を育てるための力がない。
どんなに強がっていても、中学生には生活力がないのだ。

だから、もしセックスするようなことがあっても、必ず避妊するように。
それが、中学生の正しい恋愛の仕方だ。

そう教えるべきなのではないだろうか。


ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

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