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ネタ元は、9月16日付のJapan Timesさんの記事だ。詳しくは本文を参照されたい(↓)。なに英語ができない? 俺だってできないよ。気にすんな、英語は根性で読める!
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さきに、僣越ながら注意事項をいくつか挙げておく。
それで折角だからすこし中身の話も。 最大のトピックスは、やはりこれ(↓)だな。
"They don't understand," she reckoned. "(To use copyrighted work without authorization) is like disabled people freely taking goods from shops."
一方、日脚連のテラシマ副会長は「カネ儲けのためにニフティと契約したわけではない」という考えだ。「奴らはなにも判ってない。無許諾で著作物を使用するのは、障害者が棚から商品をタダで持ってっていいというのと一緒」とのこと。まあ、みなさんそれぞれに訳してみてください(俺の訳だと「タダで使うならドロボーと一緒」だったんだが)。 とりあえず、「タダで持って」くという日脚連の認識がヘンだという話だけでも納得していただければいいのかな(あなたに、という意味)。 事の経緯としては、ボランティアと聴障者が、チャット上でドラマに字幕をアテながら遊んでいるところに、日脚連が「それは著作者の権利(だから著作権)の侵害である」として文句つけて、それで場を提供していたニフティ社が日脚連と交渉して、けっきょく「年間10万円」という包括契約を締結している。あちこちで書いていることだけれども繰り返すが、誰にも(つまり日脚連にもニフティ社にも字幕RT実行部隊にも)悪意が無いことを前提として、それでもここがこじれ始めだったとは思う。 最初のボタンのかけ違いは、この日脚連とニフティ社の交渉が、当事者たるべき聴障者をつんぼ桟敷に置いて行われたことだ。この言葉遣いについて話し合いたい向きは、別途お便りでもください。もちろん意識的に使った用語ではありますが、これほど適切な比喩もないよなあ。
結局のところ、日脚連とニフティ社の契約締結まで、当事者たる実行部隊の意見を聞こうとした人間はいなかったんだよね。「無料で使うのは著作権の侵害になりますよ」、「じゃあお金を払いましょう」という単純な商取引があったにすぎない。この契約後は日脚連所属の脚本家の作品については、ニフティでの字幕付与(以下「字幕RT」)は行われていない。後に実行部隊がニフティ社と会談して「誰がカネ払ってくれって言ったよ」とネジこんで(実際には平和裡に話し合いが行われたわけだが)契約破棄に至るわけだ。 といった感じで各地で無理解と誤解による齟齬が繰り広げられていたわけだが、かなり乱暴に上記のゴタゴタ(と言ってしまおう)の原因をまとめると、つまり聴障者のニーズというものをニフティ社も日脚連も理解せず、通常の商行為の範疇で処理してしまったということなんだと思う。 この時点で日脚連とニフティ社が合意を結んでしまったことの意義を書いておくと、
そりゃあ、ドラマだろうがなんだろうが、音声をテープから起こしてインターネットなりパソコン通信なり同人誌なりで複製すれば、そりゃ俺だって著作権の侵害だと思うよ。それこそドロボーと一緒とも言えるとは思う。だからこそ日脚連も「違法だ」としてニフティ社との交渉を開始したのだろうし。
でもさ、今回について言えば、受益者は聴障者で、対象となる著作物(この場合は主として流行りのTVドラマ)にはもちろん字幕は付いていない。ということは、字幕RTを通してしか、聴障者は対象たる著作物に行きつけない、利用できない。
だいたい、脚本ってのは上映(上演、放映、出版というのもあるのかしら)されてなんぼなわけなんだから、ここは社会福祉の一環としてでもあるいは商行為即ち視聴率向上の一環としてでもいいから、「観られないなら観られるように便宜を図りましょう」というのがあるべき態度なのではないかと本当に思う。 というわけで(ってここまでマクラかよ>>じぶん)、ほんとは日脚連さんにお伺いしたいんだけれども先に全難聴とか字幕RTとかにお返事していただきたいので遠慮させていただく内容としては、
あとはオマケみたようなもので、ヒマな人はどうぞ。
ほんと言うと、字幕RTの実行部隊のほうにも文句がないわけじゃないんだよね、儂。
もともと俺がニフティの障害者フォーラムで「字幕関係障害担当」をしていて、もう忘れたが2年間ぐらいに亙ってTV局相手に「許諾ください、台本貸してください」っていう営業活動をしてたんだけどさ、基本的にはいきなりお願いするわけだから、まあ断られて当たり前というか、先方もいろいろ忙しいんだから応答する義務もない。だから営業内容についても内緒にはしていた。 もっと情けない話をいくつか。
以上まとめて簡単にいうと「仲間外れを作るのは(あるいはそこに加担するのは)ヤダ」という話なんだけどね(なにも聴障者に限った話ではないのだ)、判る範囲ではジャパンタイムスさんの記事は良くできていた。理解の一助となれば幸甚なんだな。 |
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1999年11月11日、この記事に関連してNiftyの障害者フォーラムに投稿しました。以下全文です。
無料で持って行く?(まさか)。みなさんおはようございます。いやそのヒマネタで申し訳ないんですけど、少し 思ったところがありましたもんですから。
"They don't understand," she reckoned. "(To use copyrighted work without authorization) is like disabled people freely taking goods from shops." ジャパンタイムスズさんの9月17日の記事から、ですね。 この発言をしたのは、記事から類推するに「日脚連の偉い人(バイス・プレジデ ントって副会長くらい?)であるテラシマさん」であるらしい、というのが僕の 理解。そんなに間違ってないと思うけど、できれば念のため原本にあたってみて ください(http://www.japantimes.co.jp/news/news9-99/news9-16.htmlにまだ 掲載されていると思います)。
僕の日本語訳だと、以下。
「彼らは何も判っていない」と彼女(テラシマさん)は思っている。といった感じか(繰り返すが文責俺)。
というわけでここまで枕なわけですが。 この「自由に無料で」というのがまず間違いだよね。ことをTV放送に限るとし て、僕をも含む健聴者は、自由にそのTVドラマを視聴しています。これが無料 かというとそういうわけでもなくて、NHKなら「受信料を払っている(少なく とも運営は受信料で成り立っている)」わけだし、民放ならば「大衆が商品購買 に際して支払う対価が巡り巡って広告料として放送側に支払われ」、つまりそれ によって日脚連の会員の作品が放送され、そして「脚本の代金が支払われる」。 その代金のもと、つまり放送への対価は、等しく聴障者も支払っているのではな いのか(民放については「等しく」と言えると思う。NHKに関しては受信料の 減免はあるけれども、障害以外に付帯要件があるから、聴こえないだけでは減免 にはならない)。つまり。
事態としては、「障害者はお店の棚から自由に無料で商品を持っていって」とい うなことでは全くない。 むしろ、「“ご自由にお持ちください”といって品物を並べた棚のわきに、“た だし聴覚障害者以外”という貼り紙がある」、というほうが実態に近い。
日脚連をして「脚本家の利益団体」とするならば、テラシマさんの謂はそんなに は間違っていないのかもしれない。しかし、文化事業を営み、社会的影響力を持 つ団体の責任者としての発言ならば(そして肩書き付きでインタビューに応じた ということはそういうことなんだろう)、その社会性の認識の無さは糾弾されて しかるべきだと思う。 俺はそこまで言う。 脚本を書かれる皆さんの利益を考えるならば、その権利の擁護は当然として、そ してより多くにその作品を鑑賞してもらえるようにすべきなのは誰だ。民間での 字幕付与が問題であり、しかも権利関係に齟齬があるならば、せめて放映側に字 幕付与なりを依頼することはできなかったのか。それが無理なら、プロパーでな くても第三者団体なり組織なりを作るとか、手はいくらでもあったはずだが、で は日脚連は、「会員が作品を観てもらう権利」を守るために何をしたのか。何も しとりゃせんのだ。
どこにでも何度でも繰り返し書くけれども、かつてFHAND(障害者フォーラ ム)の字幕渉外としてお会いいただき協力いただいた制作関係者のかた(脚本家 のかたを含む)は、みなさんお忙しいなか、「一人でも多くに観てほしい、楽し んでほしい」ということでご協力くださっていた(じっさいのところ、お会いし たなかでは協力を拒否されたことはない)。 即ち、個々人としての日脚連会員の皆さんには上記のような考え方は無いものと 判じているのだけれども、団体としては硬直しているというか短絡的というか一 面的というか、まあそんな感じです。
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