石原慎太郎氏、会見で記者から諭される「確認して来るのが普通では?」
豊洲市場の移転問題に関して、決定当時に知事だった石原慎太郎氏(84)が3日、都内で会見した。すでに20日に東京都議会の調査特別委員会(百条委員会)による証人喚問が決まっている中、「その時まで待てない」と先んじて話すことを申し出た石原氏だったが、1時間強の会見は「知らない」「分からない」の連発で、かえって謎を深める結果に。内容を知った小池百合子東京都知事(64)も、会見にダメ出しを連発した。
自宅を出る際には「果たし合いに出掛ける侍の気持ち」と仰々しく話し、会見の冒頭にも「百条委員会には呼ばれているが、とてもそれまで待てない。座して死を待つつもりはない」と意気込んだ石原氏。小池氏に対して「今のままでは築地への補償などで、税金を無駄に費やすだけ。早く移転させるべきだ」と批判したが、会見では新たな事実は全く明かされることなく、肩透かしの内容となった。
焦点になったのは、豊洲移転における責任の所在。石原氏は「最高責任者として裁可したことに関しては責任があるが、私一人というよりも行政全体の責任だ」とした。詳細については各担当で検討して決めたことを示す「つかさつかさで」という言葉を5度使い、“知らぬ存ぜぬ”を貫き通した。午後3時から67分間の会見の中で「知らない」「聞いていない」「分からない」と9度繰り返した。
特に問題となっている用地購入に関して契約時に土地所有者だった東京ガスに瑕疵(かし)担保責任の放棄を認めたことについても、石原氏は「交渉は浜渦(武生氏、当時の副知事で交渉担当者)に一任していた」と説明。放棄の事実は、東京都からの指摘で初めて知ったとした。
真相がなにひとつ明かされない会見。最後の質問者となった毎日新聞の記者が「瑕疵担保責任の免除を、誰が、どうして決めたのか? 浜渦さんに聞いていないのか?」と問うと石原氏は「聞いていません」。記者に「なぜ問いたださないのか?」と問われても、明確な答えはなし。「会見を開くなら、それを知っている人に確認して来るのが普通では?」と質問者に諭されると、会場からは失笑がもれた。
司会を務めた日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」コメンテーターの橋本五郎読売新聞特別編集委員からも「真相は何なのか? 石原さんの責任として調べて報告する義務があると思う」と注文を出された。報道陣約300人、テレビカメラ約50台の前で石原氏は「できるだけ努力をする」と絞り出すのが精いっぱいだった。
◆瑕疵担保責任 売買契約において取引された物に欠陥があった場合、売り主側が賠償責任を負うこと。豊洲の用地売買においては都が責任放棄を認めたため、東京ガスは汚染対策費を支払う必要がなくなった。後に土壌からは環境基準を上回るベンゼンなどの有害物質が検出され、都が負担する対策費は結果的に860億円に膨張した。