宅配便大手のヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスが全国の配達員(ドライバー)ら約7万人を対象に、未払いの残業代がないか労働実態の調査を進めている。未払いが確認されれば残業代を支給する方針で、既に労使が合意している。ヤマトはインターネット通販の普及で宅配便が急増したことから人手不足が深刻化しており、ドライバーらがサービス残業を強いられるケースがあるとみられることから、実態の把握と改善に向けて調査に乗り出した。【川口雅浩】
調査の対象となるのは、ヤマト運輸のドライバー約5万4000人と、営業所の内勤職員約4000人のほか、グループ内の社員ら。営業現場の管理者がドライバーらに面接をするなどして、サービス残業の実態を調査。労働環境の改善に向けて、急増する荷物の集配で効率化を図れる部分がないかなども調べる。
サービス残業が確認されれば、未払いの残業代を支給するという。1人当たりの支払額や、支払総額は今後精査する。
ヤマトはネット通販の普及に伴う宅配便の取扱量の増加でドライバーなどの人手が不足し、長時間労働を強いられるなど労働環境が悪化している。タイムカードと携帯端末でドライバーらの勤務時間を管理しているが、実際には端末に「終業」と入力した後に伝票整理などの仕事をしたり、忙しくてタイムカードの打刻を忘れたりするケースもあるという。ドライバーからは「労働時間を決められた枠内に収めるために、休憩も取れない」といった声が上がっている。
昨年8月には、神奈川県内の支店が元ドライバーらに残業代の一部を支払わず、昼食休憩も与えていなかったとして、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けたことも、今回の調査のきっかけとなった。
ヤマトは「これまでも営業現場の管理者が月末に社員の勤務時間を確認しており、サービス残業がまん延しているとは認識していないが、実態を調査のうえ未払いなどがあれば改善を図りたい」と説明している。