北海道出身の男性3人でつくるバンド「HAMBURGER BOYS(ハンバーガー・ボーイズ)」が、道内全179市町村をテーマにした歌づくりを続けている。
軽快な旋律に「SHISHAMO(ししゃも)」「TA・RA・CO(たらこ)」といった地域の特産品を織り交ぜ、中毒的なラップを生み出す。
ご当地愛あふれる「179市町村ソング」に込めた思いをDJ・金田ヒデミさんに聞いた。
▼179市町村ソングのひとつ「MUKAWA NO SHISHAMO」(勇払郡むかわ町)
きっかけは「たらこクチビル」
「HAMBURGER BOYS」は2012年1月に札幌市で結成。
山田雄太さん(ボーカル)、田村次郎さん(ギター)、金田ヒデミさん(DJ)の3人組で、北海道ではテレビやラジオにも出演する人気グループだ。
市町村ソングの他に「納豆家族」や「STOP!密漁」といった曲も発表している。
▼YouTubeで再生回数が多い「納豆家族」
本格的な市町村シリーズは函館市の北隣、鹿部町(しかべちょう)から始まった。
たらこの原料であるスケソウダラの名産地である同町。
それまでにも長沼町など一部を作っていたが、2016年2月に開催されたイベント「鹿部たらこクチビル世界選手権」に出場する友人男性のため、アピールタイム用の音楽として「GET TARACO」を作曲した。
▼ イベント用だった「GET TARACO」(茅部郡鹿部町)
これが会場を大いに沸かせ、地元の人々に喜んでもらえたという。
「僕らの曲を喜んでくれる人たちがいるんだと実感しました」(金田さん)
子供でも覚えやすい歌を
鹿部での成功した反響は大きく、他の役場や地元テレビ局から依頼が舞い込むようになった。
作曲の際は、自治体の公式サイト等を調べて歌に乗せやすい話題やフレーズをピックアップする。

むかわ町のししゃもを手に歌うメンバー 出典元:HAMBURGER BOYS公式チャンネル
鹿部町の「GET TARACO」の一場面 出典元:HAMBURGER BOYS公式チャンネル
本当は現地で制作できれば良いんでしょうけど、広すぎて回りきれないので(笑)
鹿部町をよく知らない札幌の人が、スーパーで『あ、しかべ産だ』と一致するような歌がいいなと。
子供でも覚えやすい、耳なじみの良い歌を目指しています。
これまでに長沼町、鹿部町、むかわ町のほか、音威子府(おといねっぷ)村、新得(しんとく)町、稚内(わっかない)市の計6市町村を制作。
ミュージックビデオも三脚を使って手作りしている。
▼179市町村ソングの「JUST SOBA」(上川郡新得町)
意外と反応がない
鹿部町民の心に響いた市町村シリーズだが、その他の作品については「意外と反応がない」と苦笑いする。
ただし、決して焦ってはいない。
新得町のそばを食べるメンバー 出典元:HAMBURGER BOYS公式チャンネル
小っちゃい町で歌がないと言っていた友人たちは、とても喜んでくれるんです。
基本的に地元の人たちが面白がってくれたらいいなと思っています。
自分たちが勝手に作っているので、押し付けたくはないです。
完結まで175年
シリーズ完結までの予定年数は「175年」だ。
実は2012年に結成以降、(市町村ソングは)年1~2曲くらいしか使ってないんですよ(笑)
みんな普段は別の仕事をしていて、バンド活動はあくまで趣味なんです。
残る173市町村は、175年くらいかかって“三代目HANBURGER BOYS”ぐらいで完成したらいいなと思っています。
出典元:HAMBURGER BOYS公式チャンネル
山田さんと金田さんは、かつてメジャーデビューを経験している。
田村さんもシンガーソングライターとして全国を巡る。
ビジネスとしての音楽づくりの重責を知るからこそ、現在は「好きな音楽を作りたい」という思いが強い。
提供:HAMBURGER BOYS
良いか悪いかは別として、完全なビジネスでやると、どうしても音楽の意味合いが変わります。
私たちはできるだけ長く音楽をやりたい。
おこがましいですが、私たちの活動自体が『音楽はお金儲けだけではないよ』というメッセージになってほしいです。
一見するとお調子者の3人組は、北の大地を溶かすような情熱を秘めていた。
※写真とキャプチャ画像は許可を得て使用しています。
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