日本代表の10番、香川真司がドルトムントで苦しんでいる。先発には復帰できず、監督との不仲説も後を絶たない。結果、日本代表に招集された時にも、本来の力を発揮できないケースが増えている。
はたして香川は、閉塞状況をいかにして打破すべきか。日本サッカーを愛する1人として、香川を見守り続けてきたピエール・リトバルスキー(現ヴォルフスブルク・スカウト部長)に、復活のヒントを尋ねた。
――ずばり香川の現状は、どうご覧になっていますか?
「香川はいろんなことを試して、必死に現状を打破しようとしているのだと思う。それはプレーだけにとどまらない。私生活でも、住むところを変えてみたり、睡眠のとり方を変えたり、酸素カプセルを購入したりしながら、なんとか状況を変えようとしている。最近は細身になった印象を受けるし、食事の仕方も変えているはずだ。
しかし残念ながら、そういう努力は実っていない。出場機会を得られない状況は、なんら変わっていないのが現実だ」
――トゥヘル監督は香川を起用しない理由について、「戦術的な柔軟性の欠如」を挙げたことがあります。その単語が何を指すのかはわかりませんが、監督の信用も失っているのは明らかです。
「そう、説明としてはあまりにも漠然としている。むしろ選手を起用しない場合に、監督が口にする決まり文句だと捉えたほうがいい。そもそも本当に戦術が理由なら、具体的な指示やアドバイスができるはずだが、香川はそこまで細かな説明を受けていないのではないだろうか。
結果、監督との溝はますます広がっていく。さらに悪いのは、出場機会を掴むためにいろんなことを試せば試すほど、負のスパイラルに入っていくことだ。実はこれこそが、今の香川と、かつてドルトムントに所属していた頃との、最大の違いかもしれない。
かつてドルトムントにいた時の香川は、いい意味でいろんなことを考えずにのびのびとプレーしていた。動きにもキレがあり、レバンドフスキのようなチームメイトとのコンビネーションにも迷いがなく、サッカーを心から楽しんでいた。本人にしてみれば、まさに天国にでもいるような気分だったはずだ。
しかし、今の香川はまさに地獄のような状況に置かれていると言っていい」
――ドルトムントでここまで苦しむとは予想外でした。ドルトムントは、香川にとって第2の故郷のようなクラブです。マンチェスター・ユナイテッドを退団して戻ってきた際には、かなりほっとしたでしょうし、選手として再スタートできると確信していたはずです。
「かつてのチームに復帰するというのは、一般的に思われているほど楽な作業ではない。すぐに結果が出せればいいが、そうならない場合には、なまじ昔のいいイメージがあることが、逆に命取りになってしまう。
私は今の香川とちょうど同じように、27歳の時にフランスのラシン・パリからFCケルンに戻っている。これは大きな賭けだったが、幸いにして私の場合は、ドイツ人のチームメイトが数多く残っていてサポートしてくれた。しかもチームの誰もが、私がクラブに戻ることを望んでいた。
だが、香川がドルトムントに戻ったケースは微妙に違う。
たしかに香川が最初にドルトムントにいた頃は、外国人選手が多くても、一種のチームスピリットがあった。こういう家族的な雰囲気の有無は、特に日本人選手にとって重要になる。
しかし、今のドルトムントにはかつてのようなチームスピリットが存在しない。選手や監督も入れ替わってしまったからだ。
当然、評価の基準はピッチ上での数字だけになってしまうし、結果が出なければ、チーム側のサポートも受けられなくなる。それが香川の現状だ。香川がいい意味でもっとエゴイスティックな人間で、精神的に開き直ることができるようなタイプなら、話は違っていたかもしれないがね」
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