トランプ米大統領はロシアの影から抜け出せないだろう。だが、追い詰められたセッションズ司法長官が民主党の辞任要求に耳を貸す可能性は、ゼロに近い。
セッションズ氏は議会証言で、米大統領選中にロシアの当局者と接触したことはないと嘘をついた可能性がある。実際には11月以前にキスリャク駐米ロシア大使と2回会っていたことが判明している。だが、意図的な嘘だった──これが偽証の定義である──と証明することは、およそ難しい。そうなる可能性はほぼ確実にないだろう。
では、この先どうなるのか。ワシントンは、トランプ陣営のロシアとのつながりに関する複数の調査に包まれていくことになるだろう。たとえセッションズ氏が、米連邦捜査局(FBI)などの政府機関の捜査を監督する立場から身を引いたとしても、無実とする結論が出れば必ず捜査の偏向を疑われ、消えない影を残すことになるだろう。
同じことは、共和党が主導する議会調査にもいえる。共和党議員の多くは、まだ調査が始まってもいない段階でトランプ陣営とロシアのつながりを公然と否定している。トランプ氏にとって、ロシアの影から逃れることは不可能だろう。情報機関や捜査機関の不満をもつ高官などからさらなる情報流出が起こるのは必至で、それがまたトランプ氏を激怒させることになる。
米国の外交政策には、二段重ねの影響が及ぶだろう。まず、トランプ氏は一人で共和党の大部分をロシア擁護派に変えた。4年前の共和党は、ロシアは米国の「最大の地政学上の敵」だとするミット・ロムニー氏(元マサチューセッツ州知事)の宣言の下に結束していた。トランプ氏の最側近らも、陣営に加わるまでは伝統的なタカ派だった。ロシアとの接触に関して嘘をついていたことが明らかになり、2月に国家安全保障担当大統領補佐官を辞任したマイケル・フリン氏もそうだったし、セッションズ氏自身も同様だ。上院にはジョン・マケイン氏やリンゼー・グラム氏など、ロシアに対するタカ派の共和党議員が今も少なからずいる。彼らはトランプ氏側の最大のトゲになるかもしれない。