【カイロ秋山信一】エジプト破棄院(最高裁に相当)は2日、2011年のエジプト革命で反政府デモ隊の殺害に関与した罪に問われたホスニ・ムバラク元大統領(88)に無罪を言い渡した。国営メディアが報じた。今回は最終審で、無罪判決が確定する。エジプトは13年のクーデター以降、軍を中心とする強権体制に回帰しており、軍出身のムバラク氏への無罪判決は「革命の揺り戻し」の象徴と受け止められている。
革命時には、治安部隊との衝突などでデモ参加者ら約850人が死亡した。検察側は、ムバラク氏が「デモ隊弾圧に使用された車両や武器を供与した」と主張したが、裁判所は訴えを退けた。
2日にカイロ郊外の警察学校で開かれた公判には、ムバラク氏も滞在先の軍病院からヘリコプターで移送されて出廷し、改めて無罪を訴えた。これまでも「国家と国民を守るために生涯をささげてきた。デモ隊の殺害を命じたことなど決してない」と主張していた。
革命後に民主的選挙を経て、イスラム組織ムスリム同胞団主体のモルシ政権が誕生したが、軍は13年7月に反政権デモに便乗し、クーデターで実権を奪った。翌14年の大統領選ではクーデターを主導したシシ氏が当選。シシ政権は革命前と同様、同胞団など反政権派を弾圧し、強権的な統治を行っている。
経済や治安を改善できないシシ政権に対して、革命に参加した若者らの不満は徐々に高まっており、今回の無罪判決も、現政権への不満につながる可能性がある。
ムバラク氏は1981年から約30年間、独裁体制を敷いたが、11年に民主化要求運動「アラブの春」の圧力で大統領を辞任した。デモ隊殺害事件では12年6月の1審で終身刑判決を受けたが、13年1月の上訴審で裁判のやり直しが決定。14年11月のやり直し裁判では起訴手続きに不備があったとして公訴棄却の判決が出て、検察側が上訴していた。