Bio hazard 6
退屈な毎日を送っていた______あいつに出逢う前までは。
退屈、というと少々語弊があるかも知れない。
傭兵などという仕事は、世間一般から言えば少々特殊な部類に入るものなのかも知れないし、その仕事内容はと言えば「刺激的」過ぎるきらいがあるかも知れない。だが、毎日淡々と仕事をこなして「対価」を得ることには変わりない。それになんの違いがあるって言うんだろう。
金さえあれば、大抵の事はどうにでもなる。他人の血で稼いでいても、金は金だ。事務所に籠って仕事して、給料を運ぶ、それとなんの違いがあるって言うんだろう?そうやって、稼いでそしてそれから先は______それから先は、どうしようというのだろう。大切に想う人間はとっくにこの世を去っているし、信用できる人間ももういない。
だからどうだってんだ。諦観にも似た感情がそこにある。
今までもそうだったし、これからもそうやって生きていくんだろう。「なんのために」など言うのは、それだけ暇な奴が考えることのような気もするし、考えていても答えが出ない気がしていた。答えが出ないものをいくら考えてたって時間の無駄だ。俺はそうやってやってきたし、これから先もそうなのだろう。そう思っていた______あの日、あいつに逢うまでは。
正直、始めは金蔓ぐらいにしか思ってなかった。
少々面倒じゃあるが、うまく立ち回れば大金が手に入る。
つけた値に大した意味なんかない。思いついた金額を口にしただけで______俺の「血」が欲しいだなんて、随分莫迦にした話だとは思った。俺本人を目の前にしてよく言えたもんだが、まあいい。銃器の扱いはできるようだし、何よりこのお姫様と一緒じゃねえと金にはならないらしい。最初は、本当にただそれだけの事だったんだ。
実際にはなんの事はない、お姫様は不死身のスーパーガールで、世間知らずは俺の方で______ザマァねえな。
みるみる塞がっていく疵口を呆然と眺めていた。嫌悪感があった訳じゃない、単純に驚いただけなんだ。軽口のつもりだった______そんな貌をさせるつもりじゃなかったんだ。
「研究ならされたわ。嫌というほどね」
返す言葉を探したが、見つからなかった。あいつだって同情されたい訳じゃないだろう。どんな言葉で取り繕っても無駄な気がした。澱のように胸に沈む感情は、もうただの罪悪感だけじゃなかったのかも知れない。
ベッドに仰向けに転がったまま、煤けた天井を見上げていた。
端がめくれて、配線が一部剥き出しになっている。今まで気にした事はなかった。気にしていないものは視界には入らない。
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