【カイロ秋山信一】国連人権理事会が任命したシリア問題の独立調査団は1日、昨年7~12月のシリア北部アレッポの攻防戦で、アサド政権と反体制派の双方が民間人の犠牲につながる残虐な戦術をとり「戦争犯罪に相当する」との報告書を発表した。調査団はシリア軍が「国連などの支援車両を意図的に空爆し、(化学兵器の)塩素ガスも使用した」と非難した。
アレッポで政権側は徹底した包囲戦術と空爆で反体制派を疲弊させ昨年12月に全域を制圧。調査団は今回、現地住民らを対象に291件の聞き取り調査を実施した。
報告書では、アレッポ攻防が激化した昨年7~12月の間、政府軍とロシア軍が連日のように市東部の反体制派支配地域を空爆し、数百人が死亡したと指摘。病院、市場、水道施設、学校などが攻撃され「妊婦までが通院を避け、自宅で介助なしに出産するようになった」と指摘した。医療施設は国際人道法で特別な保護が求められるが、報告書は「病院周辺に軍事拠点があった証拠はなく、空爆の事前警告もなかった」と政権側を非難した。
また、昨年9月にアレッポ郊外で国連などの支援車両が空爆され少なくとも14人が死亡した事件に関し、関係者の証言や衛星画像などからシリア空軍の関与を指摘した。
一方、報告書は、反体制派も政権側が支配する市西部を「無差別的に攻撃し、女性や子供ら数十人を死傷させた」と非難。政権側の攻勢が強まった後、反体制派の一部が「民間人の避難を妨害し、『人間の盾』として利用した」と批判した。
政権側は従来、塩素ガスなど化学兵器使用を全面的に否定し、空爆による民間人被害も「戦争では避けられない」と強弁している。