アメリカで暮らして10年になる。10年ほど前、アメリカの中小企業に誘われて二つ返事で当時結婚していた妻も一緒にアメリカへ飛んだ。
給料も良かったし、アメリカ暮らしも一人なら寂しかったかもしれないが2人でいるということの安心感からか結構うまく行った。
その一年ほど後、息子が生まれた。費用は会社の保険が良かったのかあまりかからなくて済んだ。
子育てはあまり手がかからない子だった。流石にアメリカだから英語はペラペラで日本語もすこしぐらいなら話せるという感じに落ち着いた。
息子が5歳になった時、アメリカの幼稚園であるキンダーガーテンに入れることになった。そこでは全く問題がなく一年ほどで卒業した。
しかしその後が問題だった。8歳になったとき、アメリカの公立小学校に通っていた息子が突然「頭が痛いから学校に行きたくない」と言い出した。
担任と相談した結果、一定の理解を示してくれて学校に行ったり行かなかったりを繰り返した。
詳しく聞いてみるといじめにあっていたようだ。靴を隠されたり、無視されたりと「地味な嫌がらせ」レベルのことが積み重なっていたらしい。
息子は当然血統的には純日本人だ。それが原因で標的にされ「アジア人だから」という理由でいじめには行かないまでもからかわれたり暴言を吐かれたりしたらしい。
酷いのは息子が少々内気で細身なのを理由に「ゲイ」だというレッテルを貼られたことだ。アメリカのいじめで定番なのがゲイ認定で、とにかくアメリカのいじめっ子はゲイ認定したら勝ちだと思っている。対処法はゲイ認定されないように頑張るしかないのだ。
結局いじめ問題は年齢が上がるに連れて解消したが、いまでも恐怖心があり学校に行くのを躊躇うようになっている。
息子の登校が不規則になったところ、担任から精神科に通わせればどうかと提案が来た。今息子は精神科と学校に交互に通っている状態だ。最近また学校にいかなくなってくる頻度が増えた。
ちょうど最近日本の企業にお呼ばれしたこともあり、日本に帰ったらどうか息子に提案したことがある。
答えは曖昧だった。
そう、彼にとって日本は外国なのだ。俺にとってはアメリカこそが外国で日本が自国、正直アメリカで一生暮らす気はないしいつかは帰ろうと思っていたが、彼にとっては全く反対になっていた。
しかしアメリカで産まれアメリカで育った俺の息子は日本という国に血統という繋がりしかない。
今更とんでもないことをしてしまったと自覚した。アメリカ社会にもその人種から馴染めず、日本社会でも馴染めず、そして家庭内でも心なしか居づらそうにしている。完全に宙ぶらりんの人間を作ってしまった。