もちろん、労働力不足は多くの産業に共通する課題である。国は移民を受け入れることで問題を解決しようと目論むが、運送業の人手不足の解決にはなりそうもない。
「日本の流通はサービスの質の良さが最大の特徴ですから、宅配などで外国人を安易に使うことは難しいでしょう」(前出・並木氏)
外国人はビザの関係で運転免許が取れないことも、移民が解決策にならないことの一因だ。
ドライバー派遣や物流業務を請け負うウィンコーポレーションの中村真一郎氏が言う。
「最近は高齢者がネット通販のユーザーとなって配送量が増えていますが、一方でドライバーは高齢化が進んで辞めていく人が増えているのが深刻です。大手のヤマト運輸も佐川急便も日本通運も慢性的に足りていない。
ヤマト運輸は物流という社会的なインフラを守る意味合いからアマゾンの仕事を受けた側面もあると思いますが、一説にはアマゾンの仕事をやらないと地方で配達の仕事が極端に少なくなり、地方で採算が取れなくなると聞いています」
このままでは物流が止まり、アマゾンもセブンイレブンもヤマト運輸もなくなってしまいかねない危機的な状況――順天堂大学特任教授の川喜多喬氏は、現状をこう分析する。
「多くの消費者は、物流に対してコストを支払おうという意識が低すぎます。物流は『社会の命綱』とたとえられますが、まさにその通りです。労働力不足で機能しなくなれば、アマゾンやセブンイレブンなども壊滅的な状況に陥ります。
情報は一瞬で届く時代になりましたが、現実の物は誰かが人力で動かさないと経済は回らないのです」
送料無料、翌日配送。365日24時間営業。これらは「運ぶ人」がいないと成り立たない。日本人が当たり前のように享受する「便利さ」が崩壊の危機に直面している。
「週刊現代」2017年3月4日号より
週刊現代
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