前々回に続き、前回に続き2000番(タイトル数)を突破したことを記念して、編集部への独占インタビューを通じてブルーバックスの魅力に迫ります。第1弾は編集長・篠木和久さんに、第2弾は編集者・Kさんから、54年の歴史と制作の「裏側」をお伺いました。
第3弾は同じくブルーバックス編集者の山岸さんから、「ブルーバックスは何から読めばいいの?」というビギナーの皆さんの疑問に答えます!何も知らない私には難しそう」と避けてしまいがちな科学の本も実はこんな切り口なら楽しく理解できてしまう!?初心者にもうれしいブルーバックス選書のコツをお伺いしました!
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取材・文・撮影/ブクログ通信 編集部 持田泰 猿橋由佳
22タイトル刊行中!初学者に一番やさしい「マンガ」シリーズ
-前々回の編集長篠木さん、前回の編集部のKさんからもお伺いしましたが、ブルーバックスは「科学をわかりやすく伝える」がポリシーだということですが、それでも2000番を越えるタイトル数を目の前にした時に、一般の方はどれを選んでいいかわからない人も多いかと思います。
ブルーバックスは基本的にどの本も常に「わかりやすく」を念頭に編集されているものではあるのですが、確かに科学知識と縁がなく、普通に暮らしていらっしゃる方が最初の一冊を選ぶ場合には、少しハードルが高いかもしれません。
-そんな一般の方がブルーバックスを読んでみたいなと思ったときに、ここから手を付けてみると「おもしろくて、ためになる」というものを今回ぜひ教えていただければと思いますが、たとえばまずは「この一冊」から入るといいというものはありますか?
一冊に絞るのは難しいですが(笑)、まず、シンプルにわかりやすさで選ぶと「マンガ」シリーズはおすすめできるかもしれません。ブルーバックスは「マンガ」もレパートリーの一つで、現在刊行中のものだけで22タイトルもあるんですよ。
-そんなに出ていたんですか!
「学習マンガ」というジャンルは他社でも様々に出ていますが、バランスの取り方が難しいんですよね。「学習」に重きを置きすぎると、説明や解説を盛り込みがちです。そうなると「マンガとしてはつまらない」ということになってしまったりします。そういうバランスがうまく成立したものとしては、たとえば鈴木みそ先生がお書きになった『マンガ 化学式に強くなる―さようなら、「モル」アレルギー 』(2001年)ですね。
-そうですか。鈴木みそ先生もブルーバックスで本を出されていたのですか。
はい。鈴木みそ先生の作品は本当にストーリーもよくできていて、その中で科学の説明をいい塩梅で織り交ぜていて、一冊の本としてきっちり消化されています。マンガとしても非常にクオリティが高いと思います。読んでいて面白いですよ。
-新書レーベルのなかでもマンガをちゃんとシリーズ化しているのは珍しいですよね。
ブルーバックスの特徴的なシリーズですね。80年代に岡部恒治先生の『マンガ・数学小事典』(おやまだ祥子・画 1988年※現在電子版のみ提供)から始まって、もう30年近くになります。
岡部先生は数学マンガで一時代を築いた先生で『マンガ・微積分入門―楽しく読めて、よくわかる』(藤岡文世・画 1994年)は20万部を超すベストセラーになりました。またブルーバックスは翻訳の科学マンガも多いんですよ。翻訳マンガは全体的に大人向きの絵になりますね。
20タイトル刊行中!「乗り物」だけでなく「橋」から「ビル」まで様々な「図解」シリーズ
もう一つブルーバックスには「図解」という独自のジャンルがあります。「乗り物マニア」、「機械マニア」から「生物マニア」まで、多様なオタク心をくすぐる詳細な図を、他に類を見ないほどふんだんに入れています。総ページの半分以上は図なんです。
-こちらも確かに他の新書レーベルではあまり見ないですよね。これは図はすべて一から作成されているのですか?
はい、基本的にはすべてオリジナルです。もともと「乗り物」ジャンルはブルーバックスの昔からの鉄板ネタではあるのですが、この「図解シリーズ」の契機となったのが、柳生一先生の『図解・飛行機のメカニズム―操縦桿から動翼へどうリンクするか』(1998年)で、大変よく読まれました。それまでの「乗り物」を文章だけで解説したものが売れ行きが頭打ちになってきて、「何か新しい解説の手法はないだろうか?」と試行錯誤した結果、「図解化」することにしたんですね。最初は「乗り物」からだったんですけど、「カメラ」とか「橋」とか「ビル」とか様々に「図解」シリーズ化されていきました。現在刊行中のものでも20タイトルありますから、先の「マンガシリーズ」と同じくらいですね。他社レーベルであまりこういったものを見ないのは、一つには図解作成ノウハウの蓄積の差でしょうね。
-「乗り物」の図解は、好きな人は本当に好きそうですね。図解は必ず買うという人もいそうですね。
そうですね。マニアにはたまらないでしょうね。またブルーバックスには自分自身が「乗り物マニア」という編集者がいて、一時は彼が一手に引き受けて編集していましたから。ただ、図をたくさん作るのは本当に大変なんですけどね(笑)。
「検定外」教科書とは「反検定」教科書?
あとは初学者向けもうひとつの切り口で、前々回篠木も触れていましたが、検定外教科書シリーズですね。
-こちらは前々回篠木さんも21世紀の一大看板と仰っていました。
学校で「難しい」といって敬遠され、理科離れが憂慮されて久しい状況もあって、「それならば本当に面白い教科書を作ってみようじゃないか」と強い志を持って立ち上がった企画です。2006年に『新しい高校生物の教科書』(栃内新/左巻健男編著)、『新しい高校化学の教科書』(左巻健男編著)、『新しい高校物理の教科書』(山本明利/左巻健男編著)、『新しい高校地学の教科書』(杵島正洋/松本直記/左巻健男編著)』の4教科をまず作りましたが、帯に「検定教科書」のむこうを張って「検定外教科書」とうたったんですね。
-「検定外」とはいえ「教科書」であるということで、学校で学んでいるようなことが分かりやすくまとまっているのでしょうか?
いえ、文科省指導要領ですと科学という学問で考えた時、基礎的に教えるべきところが抜けていたり、高度すぎるところを教えすぎていたり、逆に子供には難しいだろうと配慮しすぎて、高度でも大変に面白い箇所をあっさりと省いてしまったりするというとても歪(いびつ)なところがあるんですよ。それでは退屈に感じて最初の「好奇心」の火が消えてしまうだろう、と。ですので、「本当に教えるべきところはここではないか」という項目を厳選して、そこをしっかり理解できるように「知識」の詰め込みではない形で、整理しています。
-「検定外」であることがかえってブランドということですね。「検定」の歪みを正すという意味では「反検定」教科書でもあると。
そうですね。また、前々回篠木も触れていましたが、「検定外教科書」シリーズは、中学生・高校生だけでなく、「大人が学びなおす」テキストとして幅広い世代に読まれています。たとえば新聞やテレビで科学のニュースを見た時に、「これはなんだろう」と、字引代わりに利用するのにも便利ですし、確かに教わったはずだけど忘れてしまったというような断片的な記憶を、まとめて学び直して整理するのにも最適かと思います。
-子供の質問にそろそろ回答できなくなって困り始めている私のような人のためにも一家に一冊あってもいいですよね。
プレゼントにもおすすめですよ。
-確かに喜ばれそうですね。
その2「「好奇心」とは「背伸び」?ブルーバックスが目指す「素朴な疑問」から「根源的なテーマ」へ届くものとは」に続きます!明日3月3日公開です。乞うご期待!
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