信号は「緑」なのに、なぜ「青信号」と呼ぶのだろうと感じたことはないだろうか?…日本人の色彩表現を調査している東北大学のグループは、平安時代以前の青と緑を混用していた名残だと突き止め、現代に近づくにつれ、二色を区別するよう進化したことを明らかにした。
「青々とした緑」や「若葉の青」「青菜」などという表現がある。東北大電気通信研究所の栗木一郎准教授らのグループは、東京工業大学などと共同で、日本語を母国語とする57人の参加者を対象に、320色の色見本を示して、どんな色名で呼ぶか統計を取った。
その結果、日本語スピーカーには「赤、緑、青、黄、紫、ピンク、茶、オレンジ、白、灰、黒」という、どこの文化でも使われている基本の11色に加えて、「水色、肌色、抹茶、黄土、えんじ、山吹、クリーム」という8種類の中間色を共通して使っていることが判明した。
30年前に同じ調査を行ったときには、「水色」と「青」を区別しない参加者が多かった反面、今回の調査では98%の人が使うようになっていた。
その一方で、グループは冒頭の「青」と「緑」にも着目。平安時代の和歌で「あお(あを)」と「みどり」が登場する用法を調査したところ、かつてはこれら二色を混用していた事実がわかった。
研究グループによると、青と緑を混合する文化は、研究者の世界では「green+blue=grue(グルー)」と呼ばれ、13世紀以前の中世の英語でも平安時代以前の日本と同じ状況が見られた。言語が発達する過程で、二色は分離し、それぞれを区別する表現が生まれる過程は、世界中の言語がかならず通過する進化のポイントだという。
栗木准教授は、「今回の研究で、現代日本語では青と緑が異なる色と識別されている事実が明らかになっただけでなく、過去30年間で、この二色にまたがる領域に水色が加わったことも判明した」と述べて、日本語の色の概念が今も進化していると強調した。
なおこの研究成果は、米科学誌『ジャーナル・オブ・ヴィジョン』に掲載された。