’60ポップス 社会も音楽も揺れた、あの頃   

[文]三ツ木勝巳  [掲載]2007年10月14日

表紙画像 著者:黒沢 進  出版社:シンコーミュージック


 社会が揺れた60年代から70年代初頭は、日本のポピュラー音楽にとっても激動期。インスツルメント中心からボーカルの入った演奏、そしてオリジナル曲を自ら歌うスタイルもこのころ形作られた。そんな時代の息吹を伝える書籍が出ている。
 『日本ロック紀GS編 コンプリート』は、グループサウンズ(GS)研究の第一人者の黒沢進が、94年に刊行した著作の改訂版だ。今年4月、黒沢が52歳で亡くなり、ライターの高木龍太が改訂作業を引き継いでいた。64年登場の“東京ビートルズ”に始まるGS前史から71年のザ・タイガース解散で事実上幕を閉じる歴史、「GS時代のガール・シンガーたち」「レコード未発売主要GS」、日本のGSの海外盤情報などを収める。その克明さに脱帽。
 『小説吉田拓郎 いつも見ていた広島 ダウンタウンズ物語』は、後にフォークのプリンスと呼ばれる吉田拓郎が率い、広島で最も人気のあるバンドとして地位を固めていく「ダウンタウンズ」を中心にした群像物語。GS全盛の60年代後半、カウンターカルチャーが社会をのみ込む時代の青春を描く。
 GSからフォークへ。68年に京都で開かれた第3回関西フォーク・キャンプで「自衛隊に入ろう」を歌った高田渡は、そんな時代の波の中から現れた。05年に56歳で急逝。『高田渡読本』はインタビューや過去の論評などから、改めて人間像に迫る。「存在が『ぶれない人』だった」と小室等。社会が静まり、フォークブームが去っても「高田渡」であり続けた音楽、生き方へのオマージュになっている。
 『学生街の喫茶店はどこに』は、72年のヒット曲「学生街の喫茶店」を口ずさんだ、昭和20年代生まれに向けた一冊。同世代の声や様々な分析も交え、聞き手の過去と今を映し出す。団塊世代に向けた一風変わった世代論といえそうだ。(三ツ木勝巳)
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 黒沢進著『日本ロック紀GS編 コンプリート』 『日本ロック紀GS編』の改訂版。数々のGSのレコードを網羅したカラーのディスコグラフィーは圧巻。関連した映画やニューロックなども紹介する。(シンコーミュージック・エンタテイメント 2940円)
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 田家秀樹著『小説吉田拓郎 いつも見ていた広島 ダウンタウンズ物語』 平和記念館でのリサイタル、インストバンド主流の中でボーカルに注目した感性、オリジナル曲の大切さへの認識。吉田の非凡さ、当時の広島の熱気が伝わる。(小学館・1785円)
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 『CDジャーナルムック 高田渡読本』 ゆかりの人たちの追悼文やインタビューなどで、親しんだ東京・吉祥寺付近、京都時代、詩や歌、音盤などを紹介。「この1曲」として柄本明や小倉エージ、杉田二郎らも思いを寄せている。(音楽出版社・2000円)
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 里木陽市著『学生街の喫茶店はどこに』 当初はシングルのB面だった「学生街の喫茶店」の制作や大ヒットのいきさつ、当時の世相などを絡め、独自アンケートから昭和20年代生まれの心を探る。元ガロの大野真澄が企画協力した。(アートデイズ・1400円)

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