全身毛むくじゃらの巨大な肉の塊がフィリピンの砂浜に漂着した。
全長およそ6.1メートル、重さ1.8トンの動物らしき物体は、写真で見ると、白く長い剛毛のようなもので全身を覆われている。(参考記事:「世界の「雪男伝説」をDNA鑑定してみた」)
写真が撮影されたフィリピンのディナガット・アイランズ州では、巨大な物体の出現に地元住民たちが騒然としている。ネットには多数の写真が出回り、新種ではないかという声も出ている。だが、毛らしきもので覆われた謎の物体が海から現れたのは、これが初めてではない。2003年には、南米のチリで重さ13トンのよく似た塊が発見されている。このときは、巨大なタコの死骸ではないかと言われた。(参考記事:「謎のゼリー玉が大量漂着、その意外な正体とは」)
海岸に時たま打ち上げられるこの謎の塊は、「ブロブ」または「グロブスター」と呼ばれているが、従来考えられていたほど不思議なものではないかもしれない。(参考記事:「10億匹の青いクラゲが大量死、米国西海岸で」)
「腐敗がかなり進んだ海洋生物の死骸であることは間違いありません」。動物保護団体オルカの科学・保全責任者であるルーシー・ベイビー氏は、英テレビ局のBBCに対してそう語った。
当初はマナティーかジュゴンの死骸だろうと言われていたが、地元カグディアナオの役所から派遣された調査チームは、死後2週間が経過したマッコウクジラと見ている。体毛のように見えるのは、腐敗した筋繊維だという。だが、腐敗がひどいため、DNAスキャンを行うか頭蓋骨を調べてみないとはっきりしたことはわからない。一部の試料がマニラ漁業水産資源局に送られており、種と死因が調べられる予定だ。(参考記事:「アラスカに漂着した謎のクジラ、新種と判明」)
海で死んだ海洋哺乳類が陸に打ち上げられることはめったにないが、2017年2月10日にフィリピンを襲ったマグニチュード6.7の地震の後、毛で覆われた生物の死骸が数多く見つかったという。地震の揺れによって海底から浮上してきたのだろうか。
同国の北アグサン州カルメンでは、やはり2月に、水深200~1000メートルの中深層に生息しているはずのリュウグウノツカイが漂着して話題になった。地元では、リュウグウノツカイは地震の前兆であると言い伝えられているが、科学的な関連性は示されていない。(参考記事:「深海魚リュウグウノツカイがまた漂着、1年で5回」)