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身近なマネー研究

世帯年収900万円夫婦の子育て 何人までなら大丈夫? 人生まるごとシミュレーション(2)

 
日経マネー

2017/3/2

 長い人生、気になるお金。できることなら、将来のマネープランを見通せないものか――。マネー研究所は、金融機関向けのソフトウエア開発などを手掛けるAFGの協力の下、実在する企業の給与や退職金、年代別の生活費、家賃、年金などの各種データを用いて試算。誰もが気になる「人生にまつわるお金」を、リアルなデータに基づいて明らかにする。2回目のテーマは子育て。世帯年収が約900万円の共働き夫婦の場合、何人までなら無理なく育てられる?

◇      ◇

 東京郊外の賃貸マンションに住む結婚3年目の共働き夫婦、和也(33)と麻衣(31)。そろそろ子供が欲しいと思いつつも、これからかかる費用に少し不安を感じています。「大丈夫、何とかなるよ!」と楽観的な和也に、麻衣は不安を隠せません。

イラスト:PIXTA(以下同じ)

麻衣 先週、友達の明日香に呼ばれて、ご自宅におじゃましてきたの。

和也 ああ、明日香さんか。元気だった?

麻衣 明日香のところ、こないだ赤ちゃんが生まれたじゃない? 「すっごくかわいいんだけど、夜泣きがひどくて眠れないっ! 横でグーグー寝てるダンナをグーでぶちたい!」って笑ってたわ。

和也 ははは……気の強い明日香さんらしいや。そういえば、うちもそろそろ、子供ほしいところだね。

麻衣 うん……。でも、ちょっと不安なんだ。ほら、子育てってお金かかるって言うじゃない? 大学まで出すと、1人につき1000万円とか2000万円とか。うちの収入で本当に大丈夫なのかな?

和也 まあ、何とかなるんじゃない? 僕らの同世代でも、何人も育ててる人は珍しくないし。きっと大丈夫! ポジティブに行こうぜ!

麻衣 (あなたのそういうところ、すっごく不安……)

和也 しかしまあ、実際いくらかかるかは知りたいところだな。そうだ! 僕の知り合いに、個人向けのライフシミュレーターを開発している人がいるんだ。彼女に、うちの家計で何人まで子育てできるか、シミュレーションしてもらってくるよ。じゃっ!

麻衣 あっ、和也! どこ行くのよ!?

◇      ◇

和也 佳奈さん、今日は暇だって言うから、来てもらったよ。

佳奈 初めまして、佳奈です。さっそくだけど、和也さんに教えてもらったデータを基に、お二人の人生をシミュレートしてみたわ。

麻衣 わ、お仕事、早いですね……。

佳奈 和也さんの税込み年収は550万円(月収35万8000円、ボーナス120万円)、麻衣さんは税込み年収が348万円(月収24万円、ボーナス60万円)。現在の世帯年収は合わせて898万円ね。

和也 2人で力を合わせて頑張ってます!

佳奈 するとお二人の手取りは、年間に702万円になるわね。一方で年間支出は436万円。差し引き266万円を貯蓄に回せることになるわ。若いのに立派ね。

図1 和也さん(33歳)、麻衣さん(31歳)の年収と年間支出。まだ子供はいないが、2年後に第1子をもうけたいと考えている

麻衣 はい、将来のために、節約を心がけてます。こんな家計ですけど、子供を持っても大丈夫でしょうか……?

佳奈 じゃあ仮に、いまから2年後(和也さん35歳、麻衣さん33歳時点)にお子さんが生まれるとしましょう。まずはお子さんが1人だけのケースで見てみましょうか。2年後の収支がこれよ。

図2 第1子が生まれた年の和也さん(35歳)、麻衣さん(32歳)の年収と年間支出。麻衣さんが1年間の育休を取るとした

和也 あら? 世帯年収が130万円近くも減っちゃってますよ!

麻衣 ああ、それなのに支出は130万円も増えてる……。どうしよう和也……。

■育児休業中には給与の6割程度を受け取れる

佳奈 まあまあ、そう慌てないで。お子さんが生まれたその年は、麻衣さんが1年間の育児休暇を取ると想定したの。その間、基本的に麻衣さんのお給料はゼロになるので、年収は一時的に落ち込むのよ。

和也 あっ、そうか。うっかりしてた。

佳奈 それに、麻衣さんの収入はゼロになるわけじゃないの。育児休業中は、雇用保険から「育児休業給付金」が給付されるからね。育児休業開始日から半年間はお給料の67%、残り半年は50%が受け取れるの。1年の育休なら、6割弱が給付される計算ね(ただし支給額に上限あり)。

麻衣 育児休業中でも収入がゼロになるってわけじゃないんですね。ちょっと安心しました。

佳奈 麻衣さんの場合は148万1510円になるわね。あと、出産前後に「産前産後休暇」(給与は支払われない)を取ると思うけど、この期間も給与のおよそ3分の2の金額を「出産手当金」として受け取れるわ。

和也 意外と妊娠・出産に関する制度は手厚いんですね。参考になります。

佳奈 ただ一方で、どうしても支出は増えちゃうわね……。妊婦さんの服やベビーカーといったマタニティー用品やベビー用品の費用が10万円前後かかるそうだし、お子さんが生まれたら当然、食費や被服費、日用品などの費用も上乗せされてくるから。

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