はじめまして。シバタナオキと申します。現在は米シリコンバレーで、2011年に共同創業したモバイルアプリ向けのマーケティングツールを提供するSearchManを経営しています。
日本ではかつて、楽天で最年少執行役員(当時)としてお世話になったこともありました。そんな私が担当するコラムは「決算が読めるようになるノート」です。
企業の決算発表資料から、その企業の動きや社会の流れについて読み解きます。仕事柄、インターネット企業が中心になりますが、成長過程にある企業が多いことから動きも活発で、「決算が読めるようになる」にはうってつけだと思います。決算はよく分からない、数字は苦手と思っている方に、企業の事例を伴って分かりやすくお伝えできればと思っています。お付き合いください。
初回のテーマは「のれん代」について。最近立て続けに質問があったので、少し詳しく書いてみたいと思います。
2016年10月~12月期の決算においては、ネット企業のうち、楽天とディー・エヌ・エー(DeNA)の2社で、「のれんの減損」が発生しました。
両社の決算資料を見てみましょう。
楽天の資料には、動画サービスVikiの評価損として214億円を計上と記されています。Vikiの買収金額は2億ドル(約227億円)と推定されていますので、今回の減損は買収金額のほぼ全額を、一括で減損した形になると考えられます。
Vikiの業績は厳しいのでしょうか。同社単独の決算資料を見ると、売り上げは増え始めています。事業モデルを見直し、プラスに働いているとのこと。それにもかかわらず、一括での全額減損となっているのは、コンサバティブに減損を行った可能性も考えられます。
続いて、DeNAの決算資料を見てみましょう。キュレーションサイト「MERY」を運営するペロリやiemo、Find Travelの3社ののれん、合わせて39億円分の減損が発生しています。
DeNAは、キュレーションメディア全体で約50億円の買収と推定されているので、今回で買収金額の大半を減損した形になります。
両社とも、M&A(合併・買収)で異常に大きな金額を支払った数年後に、それらの金額をほぼ全額減損しているという、非常に厳しい状況になりました。
これらの文脈で出てくる「のれん代」というのは、一体何なのでしょうか。