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【東京】

9条の危機、踏み絵に込め 新宿の彫刻家・中垣さんが新作出品

作品の前で「政治への怒りや思想をどう表現するかがアート」と話す中垣克久さん=台東区で

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 憲法九条の危機を「踏み絵」で表現した新作を新宿区の彫刻家中垣克久さん(73)が、都美術館(台東区)で一日に始まった展示会に出品した。中垣さんは三年前、展示作が「政治的」だとして同美術館から撤去を求められた。「僕にとって、政治や無知への怒りと思想をどう表現するかがアート。九条を葬ろうとする動きをどうしても阻止したい」と訴える。 (辻渕智之)

 作品名は「時代(とき)の肖像−踏み絵」。江戸時代の奉行所を思わせるお白州(しらす)のムシロの上に、九条の条文を刻んだブロンズ板を木にはめた「踏み絵」がある。後ろの立て札には「此(こ)の絵踏み拒む者は獄門乃至(ないし)ハ遠流(おんる)を申し付けるものなり」と書いてある。

 「昔、自分たちの権力を守らんがために踏み絵でキリスト教を迫害した。憲法九条は、先の戦争の悲しみを薬にするぞという信念なのに、踏みにじられようとしている。ちっとも変わらない」と説明する。

 三年前は、作品に「現政権の右傾化を阻止する」と書いた紙を張った。同美術館は「政治・宗教活動をするためのものと認められるとき」は使用を不許可にできるとする運営要綱を持ち出し、中垣さんはやむなく紙をはがした。

 政府は今、「共謀罪」法案の成立を目指している。「僕みたいな作品が出る展示発表を計画すれば、捕まえられる時代が来かねない。だから今、パロディーにした。立体漫画だと思って見てほしい」

 展示会は、中垣さんが代表を務める現代日本彫刻作家連盟の最後の定期展。入場無料で八日まで(六日は休館)。同美術館はJR上野駅公園口から徒歩七分。

 

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