米国は世界最大級の石油輸入国になっている。石油に対する旺盛な消費欲のためだ。だが過去2週間で、同国は輸出国としてもランクを上げた。
原油の対外出荷は日量120万バレルを超え、石油輸出国機構(OPEC)加盟国のアルジェリアやエクアドル、カタールにおける先月の日々の生産量を上回った。
米国政府が2015年末に原油輸出に対する40年来の制約を解除して以来、外国向け原油販売の状況は、国際石油市場に、より深く組み入れられた米国の様子を浮き彫りにしている。米国は引き続き、輸出よりもずっと多く輸入しているが、米国の石油会社は今、経済的に理にかなうときには海外で石油を売る自由を手にしている。
必要に応じて供給量を増減する力を持っていたサウジアラビアやその他のOPEC加盟国には、さらなる課題が突きつけられることになる。
■調整生産者としての役割
米パイオニア・ナチュラル・リソーシズのティモシー・ダブ最高経営責任者(CEO)が今月、アナリストらに語ったように「世界的な供給の観点に立つと、我々は重大なスイングプロデューサー(調整生産者)になる」。同社は間もなくテキサス州パーミアン盆地で生産された原油を積んだ貨物船(積載量52万5000バレル)を2隻、アジア向けに輸出する計画だとダブ氏は述べた。
輸出が解禁された後、米国の原油輸出は当初、緩やかに増加しただけだった。カナダ向けの販売がすでに認められていたこともあり、その事実を一部反映した流れだった。今年の出荷はそうしたレベルを上回り、米議会が制限策を破棄する前に米エネルギー情報局(EIA)がまとめた基本予想を大きく突破している。
タンカー追跡サービスを提供する米クリッパーデータによると、今年に入ってから、米国産石油はカナダ東部やスペイン、シンガポール、中国を含むさまざまな目的地に出荷された。同社や業界幹部らによれば、一連の出荷には、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油のような高品質のシェールタイプだけでなく、サザン・グリーン・キャニオン原油など、沖合で掘削された重質油も含まれている。
■輸出増の4つの原因
力強い輸出にはいくつかの要因がある。
米国は特に、供給過多になっている国際石油市場の重圧を感じてきた。米国の石油生産、精製、貿易の主要拠点であるメキシコ湾岸での原油の在庫は、2月半ば時点で過去最高の2億7500万バレルに達した。在庫が膨れ上がった理由の1つに、サウジアラビアやイラクなどの生産国から昨年暮れに出荷された輸入原油の急増がある。地元に在庫があふれかえる状況から、米国産石油はほかの等級と比べて相対的に割安になった。