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[GDC 2017]フランチャイズ映画で活躍するキャラクターの共通点とは。ベテランゲームデザイナーが9つのポイントを解説
GDC 2017に登壇したゲームデザイナー Bob Bates氏は,こうしたフランチャイズ映画が人気を博す理由として「キャラクターの魅力」を挙げる。そのうえで「どうしたらフランチャイズ映画に登場するような魅力あるキャラクターが造形できるのか」を解説していた。
「Creating Franchise Characters」と題された講演の中で,Bates氏が示したキャラクターメイキング技法を簡単ではあるがまとめてみたい。
世界的な人気キャラクターが有する9つの共通点
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そんなBate氏が作ってきた35本のゲームには共通点が1つだけあるという――それは,すべてのゲームにキャラクターが登場するということだ。
これについて,氏は「人は人に対して興味を持つ」と語った。プレイヤーという人は,どんな設定よりもゲームの登場人物という人に対して興味を持つということだ。
そして,フランチャイズ映画が持つ魅力も「ここにある」とBates氏は指摘する。少なからぬ観客は「自分の好きなキャラクターが,今度の映画ではどうなるのだろうか?」という興味を満足させるために,映画館へと足を運ぶというわけである。
一方,興味深いことに,人気のあるフランチャイズ映画の中心的な登場人物には共通点が多い。逆に考えれば,これらの共通点は人気のあるキャラクターを造形する手がかりとなり得る,ということだ。
Bates氏はこの共通点として,9つのポイントを示した。
- 飛び抜けた力を持つ
- 悲劇的ないし神秘的な過去を持つ
- トレードマークになるようなアイテムや衣装
- インパクトのあるビジュアル,シルエットでも判別できる姿
- 特徴的な決め台詞やキャッチフレーズがある
- 極めて強力な敵がいる
- 手を貸してくれる仲間がいる
- 背景や住居などがとても印象深い
- 異なるエピソードにおいても個性に一貫性がある
以下,順にBates氏の解説を見ていこう。
1. 飛び抜けた力を持つ
一般的に主人公は何らかのずば抜けた力(魔法や超能力,スーパーパワーはもちろん,ほかの人間を圧倒する身体能力なども含む)を有する。
これらの能力は,作品を楽しむ人々の心の中に潜んでいるさまざまな願望(空を自由に飛びたい,気に入らない相手を打ち倒したいなど)を代替して充足させるようなものでなくてはならない。
また,その能力はキャラクターの「内なる本性」(その人物が本当に望むこと)によって駆動するものである。例えば「ロッキー」であれば,ロッキーが厳しいトレーニングを耐え,強敵に立ち向かっていくという「力」を発揮する背後には,彼の真の望みである「名誉」が潜んでいる。あるいはホームズであれば,「退屈したくない」という望みが際立った推理力の背後に潜んでいる。
このようにキャラクターの内なる本性を定義し,それに基づいた能力を設定することは,良いキャラクターをデザインするスタート地点として最適である。
2. 悲劇的ないし神秘的な過去を持つ
優れたキャラクターには,バックストーリーが必要となる。幼少期から今まで,どのような人生を送ってきたのか,何が得意で何が苦手だったのか。超常的な能力を持つのであれば,それが初めて発現したときに何を思い,その様子を見た周囲の人々は何を感じたのか。
そのうえで,有名なキャラクターの多くは精神的な傷となり得る過去を持つ傾向にある。下の写真を見れば分かるように,ハリー・ポッター,ジェームズ・ボンド,ルーク・スカイウォーカー,フロド・バギンズ,トニー・スターク,ブルース・ウェイン,ピーター・パーカーといった登場人物は,揃って孤児だった過去がある。
こうした環境で育てられたことで,彼らは独自の欲望を育んでいく。このバックストーリーこそが,キャラクターを鍛え上げていったものなのだ。
3. トレードマークになるようなアイテムや衣装
優れたキャラクターは,そのキャラクターならではのアイテムや衣装を有している。
ルーク・スカイウォーカーのライトセーバー,インディ・ジョーンズの鞭といった武装はその代表格だ。ジェームズ・ボンドのアストンマーチン,バットマンのバットモービルといった形で車がキーアイテムとなることもある。
また,シャーロック・ホームズの鹿撃ち帽,ジャック・スパロウの赤バンダナのように小物衣装がトレードマークとなることもあり,アイアンマンスーツやバットスーツのような全身衣装も非常に強いアイテムとなる。
4. インパクトのあるビジュアル,シルエットでも判別できる姿
見た瞬間,「これはあのキャラクターだ!」と判断できる。そんな見た目のインパクトも優れたキャラクターには欠かせない。
変身ヒーローものにおいて,コスチュームの基調となる色が強烈な主張となる(この場合,コスチュームの色やデザインはキャラクターの内面を反映したものでなくてはならない)。あるいはジェームズ・ボンドであれば,洒落たスーツを着こなし,派手なアクションシーンの後にはカフスを直すといった形で,身なりに気を使う伊達男っぷりを演出する。それも重要な「ビジュアル」となる。
また,独特のポーズによってキャラクターが判別できることもある(代表例はスパイダーマン)。とくに優れたデザインであれば,シルエットでもキャラクターを判別可能だ。逆に言えば,シルエットにしたときに判別がつくくらいのビジュアルイメージなら,キャラクターの魅力も際立つと言える。
5. 特徴的な決め台詞やキャッチフレーズがある
キャラクターの個性を反映した決め台詞は,良いキャラクターデザインにおいて欠かせない。ルーク・スカイウォーカーの「May the Force be with you.(フォースの共にあらんことを)」であったり,スポックの「Live long and prosper.(長寿と繁栄を)」であったり。こうした決め台詞は,ファンの間で挨拶代わりに使われることもある。
実のところ,決め台詞は劇中に存在しない,一種のキャッチフレーズでも構わない。シャーロック・ホームズの「Elementary, my dear Watson.(初歩だよ,ワトソン君)」という台詞は,実際の作品においてホームズは口にしていない。それでもホームズのキャッチフレーズとして定着しているが,それはそれで問題ないのだ。
6. 極めて強力な敵がいる
魅力的なキャラクターには,魅力的な敵(Villain)がいる。
この敵は極めて強く,倒すのは不可能だと感じられるほどであることが望ましい。また,主人公と同じくらい,しっかりとした設定が必要である。
強力な敵は非常に大きく,邪悪ないし危険な計画を企てており,主人公はそれが成就する寸前に(具体的に言えばクライマックスあたり),何らかの手段で破壊することになる。ご想像のとおり,「スター・ウォーズ」はこのプロットの典型的な成功例だ。
作り込まれた魅力的な敵は,主人公に負けない(ときに上回る)人気を博すこともある。「スター・ウォーズ」におけるダース・ベイダー,「バットマン」におけるジョーカー,「羊たちの沈黙」におけるハンニバル・レクターといった面々は,その代表格と言えるだろう。
7. 手を貸してくれる仲間がいる
優れたキャラクターには,手助けしてくれる魅力的な仲間がいる。もっとも,キャラクターの助けになるばかりとは限らず,敵に誘拐されたり,彼らが得意ではない分野(頭脳派キャラクターにおける肉体的な試練など)において足を引っ張ったりもする。
仲間の存在により,彼らが支えるキャラクターの人間性が構築され,また描き出される。キャラクターが抱えている弱点や問題を仲間が軽く皮肉ってみせたり,あるいはキャラクターが仲間に弱音を吐いたりするといったシーンは,キャラクターが必ずしも完璧な人間ではないことを端的に示す。
8. 背景や住居などがとても印象深い
乱暴に言えば,「すごい」キャラクターは,「すごい」場所に住んだり,「すごい」場所で活動したりする。
ハリー・ポッターはホグワーツ魔法魔術学校で暮らし,また活躍する。ジェームズ・ボンドは世界中の都市や地域で活躍し,また敵の秘密基地は「すごい」秘密基地である。シャーロック・ホームズはヴィクトリア朝ロンドンという,エンターテイメントとしてだけで言えば,浪漫溢れる都市を本拠地としている。
9. 異なるエピソードにおいても個性に一貫性がある
シャーロック・ホームズは75人もの役者によって演じられている。ドラキュラ伯爵も35人の役者によって演じられているが,どのホームズもどの伯爵も,多かれ少なかれ「ホームズだ」「伯爵だ」と感じられる(一部,例外はある。また個人によるこだわりの差はあるにしても)。
このように優れたキャラクターは,作品あるいは「中の人」が変わったとしても,キャラクターとしての一貫性を維持し続けられる。
9つのポイントを解説したBates氏は,最後に「簡単にまとめると」と前置きしたうえで,以下の言葉で講演を締めくくった。
「興味深い人物が,興味深い場所で,何やら興味深いことをする」
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