『少女革命ウテナ 決闘の歌』注釈

制作者:KrK (Knuth for Kludge)

情報募集:knuth4kludge,gmail.com

KCT:その他


>E-02 絶対運命黙示録

黙示録:暗黙のうちに記される記録、神の啓示。
        神が信仰心の強い者だけに与えた終末予言である事が多い。
        必ず起こることであり、絶対的な運命と言える。

>出生登録・洗礼名簿・死亡登録

洗礼:キリスト教徒となるための儀式。社会的な誕生。
出生登録・洗礼名簿・死亡登録:生まれてから死ぬまでの記録。

>わたしの誕生・絶対誕生・黙示録

絶対誕生:わたしは「わたし」を通してしか世界を知ることはできない。
        「わたし」の誕生は、わたしにとって「絶対」の誕生である。

>闇の砂漠に燦場・宇葉

闇の砂漠:生命の育たぬ場所。
燦場・宇葉:産婆・乳母。『演劇実験室◎万有引力◎黙示録』より。
燦場:輝く場所。

>昼と夜とが逆回り 時のメッキの失楽園

昼と夜とが逆回り:例え時間が逆回りしても、昼と夜は訪れる。
        時間の流れなどと言うモノは人間の中にしかないのかもしれない。
時のメッキ:人間は楽園から追放され、悠久の時を失った。
        しかし、時が流れ出したことにより発展もしてきた。

>ソドムの闇

ソドム:旧約聖書に登場する、住民の罪悪により神が滅ぼした古い都市。

>果てなき闇

果てなき闇:人は「今」しか認識できない。
        その前も先も、永遠の闇でしかない。

私的解釈:人間の一生はすべて決められている。
        桃源郷も失楽園もみせかけで、全ては闇である。

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>E-05 Wの予言 (when where who which)

>記憶のおりの血の流れ

記憶:過去にしか存在せず、時間的に閉ざされている。
おり:檻と殿の掛け言葉。
血の流れ:人体を動かす原動。

>千年至福のゆりかごの

千年至福:天の軍勢が悪魔サタンを捕らえ封じ込めた事により、
        地上に悪が存在しない千年間。(ヨハネの黙示録より)
        混沌→楽園→洪水→現世→世界炎上→千年王国→恒星
ゆりかご:親の加護を受け、なにも心配いらない空間。

>わたしは俳優たとえて永久

俳優:演劇は本来、神に捧げる儀式の一つで、その俳優は神官である。
        神の行為を真似る事で神の力添えを求める。
永久:「わたし」は神の創造した「世界」で役割を演じる俳優である。
        神が創造したものなら、それは永久不滅である。

>砂漠の冬のスフィンクスフィンクス

砂漠:植物の育たない場所。
冬:植物の育たない季節。
スフィンクス:境界の番人であり、
        タロットカードにおいて「運命の輪」に登場する。

>誕生死亡の肉体の悲しき風を君知るや

誕生死亡の肉体:肉体を持つ人間は、誕生と死亡を繰り返ざるをえない。

>奈落へ落ちた暗陰光・マルジノー

奈落:仏教用語で「地獄」。
        舞台装置において役者がせり上がって来る床下の空間。
マルジノー:社会内の周域におかれた人々。
        殉教者、Margineaux。

>光れ燃えよ、さめて歌え

光れ燃えよ、さめて:惑星の誕生する過程。すなわち宇宙の縮図である人体の過程。
歌え:運動する惑星はそれぞれ音楽を奏でており、
        それらはハーモニーをなしているという、ピタゴラス学派の説。

>世界に誕生、瞬間誕生 その繰り返し

瞬間誕生:永遠に比べれば人間は瞬間的なもの。
繰り返し:誕生と死亡の繰り返し、肉体ある存在の宿命。

私的解釈:人間は瞬時の誕生・死を繰り返すが、その魂は不偏であり、
        時間という檻の中で役割を演じつづける存在である。

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>E-06 肉体の中の古生代

シーザー曰くこの曲は「南無アンモナイト」。

>天体時代 原始の海洋
>浸食 堆積

天体時代:地質時代の対語。
原始の海洋:生命誕生の場。
浸食/堆積:水の作用により土が削られる事と積もる事。地層の形成過程。

>地質時代

地質時代:地球の地層ができてから現代まで。
        人間は生まれるまでに母親の胎内で、
        下等生物から人間に至るまでの経過をすべて通過する。

>カンブリア オルドビス シルル デボン
>ストロス トライト バクテリア コレニア
>三畳 ジュラ紀 白亜紀

Cambrian, Ordovician, Silurian, Devonion:古生代の紀分類。
Stromatolite(ストロマトライト), bacteria, collenia:古代生物。
Triassic, Jurassic, Cretaceous:中世代の紀分類。

>ヒカゲノカズラ イワヒバ ブレウロメイア
>カイトニア ベンネチテス アンモナイト

Lycopsida, Selaginella, Pleuromeia, Caytonia, Bennetites, Ammonite:
        化石で発見されている古代生物。

>ウミノバラ ウミノユリ ウミリンゴ ウミツボミ
>ウミテンシ ウミカガミ ウミトビラ ウミカゲロウ
>石炭 二畳紀 古生代

Carboniferous, Permian, Paleozoic:石炭,二畳紀は古生代の紀分類に属する。

>ウミノアナタ ウミノワタシ

ウミノアナタ:「海の貴方」と「海の彼方」の掛け言葉。

>肉体の中の古生代

肉体の中の古生代:人間を作る細胞は、太古より積み重なった進化の結果。

>生き続ける 死に続ける

生き続ける:次々と新しい肉体の要素となっていくという意味では、
        細胞は生き続けている。
死に続ける:常に「過去の転生」という意味では死に続けている。

>クジラのように
>イルカのように
>アザラシのように

クジラ,イルカ,アザラシ:海洋に生息する哺乳類。
        人間の直接の先祖は水棲生物だと言われている。

>海の底の大歴史

大歴史:肉体の中の古生代に気付き、目覚め、
        やがては全ての生き物の故郷である海へ還っていく。

>アンモナイト

アンモナイト:その形から、化石が輪廻転生の象徴とされる。

(単位:百万年前)
 0 - 65  新生代  
65 -143  中世代  白亜紀
143-212          ジュラ紀
212-247          三畳紀
247-289  古生代  二畳紀
289-367          石炭紀
367-416          デボン紀
416-446          シルル紀
446-509          オルドビス紀
509-575          カンブリア紀

私的解釈:人間の体には、その進化過程が刻み込まれている。

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>E-07 スピラ・ミラビリス劇場

Spira Mirabillis:ラテン語で「驚異の渦巻」。

>劇場 特別精神 集合現象
>劇場 特別人物 空想現実

集合現象/空想現実:劇場という場の特性。

>手術台 難破船 純粋遊劇

手術台/難破船:自分ではそこから動く事のできない、閉ざされた場。
純粋遊劇:人生という舞台は、演じることそのものに意味がある。

>渦巻 螺旋 変化しつづける

渦巻,螺旋:回転→渦巻→螺旋と進むにつれて高位の運動となる。
        水平運動の回転には進歩発展という意味がある。
        渦巻の中心にはキリストがいる、
        つまり救世主が回転を渦巻へと変化させる。
        螺旋では地上から天上へも地獄へも向かう動きとなる。

>スキ・ピオの夢

スキ・ピオの夢:キケロ(Cicero)『Scipio's dream』
        天体(星)は偉人達の魂の宿る場であるとの概念が提示され、
        偉業を成し遂げた人だけが天体で過去の偉人達に会う事ができるとする。
        スキピオは紀元前ローマの英雄で、政治家・将軍。

>劇場 幻想精神 不死の運動
>劇場 幻想人物 不死の構造

不死:劇場すなわちこの世は神の作ったものであり、永遠である。

>アンモン貝 錬金術 神聖甲虫

アンモン貝:アンモナイトの異名。
神聖甲虫:エジプトにおけるスカラベ(the scarab)[仏]、日本ではフンコロガシ。
        転がすフンが球形で、エジプトにて至高神である太陽になぞらえられる。
        フンに卵を産み地中の球から幼虫が出てくる様を
        太陽が地平線に沈み再び昇るのになぞらえて、自己再生の象徴とし、
        昇る朝の太陽の神ケペルをスカラベの姿にした。

>ふたたび 生きる ために死ぬ

生きるために死ぬ:生きるモノのさだめ。

>マイマイマイマイ マイマイマイマイ

マイマイ:かたつむり(マイマイ)と英語の一人称「my」との掛け言葉。
        かたつむりは、その形から輪廻転生の象徴。

>終わりなき劇場

終わりなき劇場:人間は転生を繰り返し、人生を演じ続ける。

>幾何学舞台

幾何学舞台:世界は幾何学的に無駄のない単純明快な姿を好むとされている。
        幾何学を学ぶ事は神について正しく学ぶ事と同義。

>生命 死の神秘

死の神秘:生命の存在が神秘であるのなら、その終焉である死も神秘である。

私的解釈:人間は死と再生を繰り返す運命にある。
        この世という劇場に縛られているにすぎない。

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>E-08 天地創造すなわち光

>万象ライト モザイコライト

万象ライト:すべてを照らす光。
モザイコ:モザイク。

>暁の子ルシフェル天使

Lucifer:堕天使。神を裏切り魔王サタンとなる。
        ルシフェルは「暁の子」の意、暁は夜明けの事。
        明けの明星、宵の明星、すなわち金星に例えられる。

>黙示ライト ミカエルライト

黙示:神が真理を明かす行為。
Michael:「神に似た者」の意、神が最初に創った天使。
        太陽を司り、悪の原理と戦う、知性の大天使。
        『ヨハネの黙示録』では天使達を率いてサタンに戦いを挑んでいる。
        ルシフェルとは一つの卵から生まれた双児だとの説もある。

>闇の子アンドロギュヌス

闇:植物の種子を土に埋めると芽を出す事から、生命誕生の場とされている。
Androgynous:両性具有。2面性から完全な性質を持つとされる。

>焔のライト 天堂ライト

焔:ヘラクレイトスの言うロゴスは、火に例えられる。
        ギリシア神話でプロメテウスが人間に最初に与えた知慧が火である由縁。
        聖書の冒頭で神が世界を創った時「光あれ」という言葉を発した事から、
        ロゴスは言葉、あるいは光にも例えられる。
天堂ライト:天の光、すなわち神の光。

>天界のヒエラルキア

ヒエラルキア:もともと神を頭に天界に階級があったとされたことが
        地獄にも応用され、天使や悪魔の身分階層をヒエラルキアと読んだ。

>幻想ライト 永遠ライト

幻想ライト 永遠ライト:光は神の作りしものなので、永遠であるが、
        人間にはその本質を感じることはできず、幻想である。

>空想カラクリ気まぐれ誕生

カラクリ:世界は一種のカラクリで、延々と動いている。

>闇夜[ニコクス]
>幽冥[エレボス]
>星空[ウラノス]
>死[タナトス]

Nyx, Erebus, Uranus, Thanatos:
        ギリシア古神話、オルフェウス教に登場する神々の名前。
        闇夜~死を表現する為に神の姿を取らせたもの。
        Hesiodos(ヘシオドス)『神統記(神々の生誕)』
        カオス┬ガイア
              │↓  ├男女6神ずつの巨神族(末っ子:ゼウス)
              │ウラノス(天空)
              ├エレボス(幽冥、男神)
              │    ├タナトス(死)
              └ニュクス(夜、女神)

>球形ギュヌス

球形ギュニュス:球形も、アンドロギュヌスも、完全の象徴。

>快楽原則
>ニルヴァーナ原則

快楽原則:人間は何もしていないときに最大の快楽を得るとするもの。
        全ての欲望は、その解放により快楽を強める為に行われる。
        本能に快楽が伴うわなくては生命が維持されることはない。
ニルヴァーナ原則:The Nirvana principle、涅槃原則、死の本能、タナトスの原則。
        自己破壊の衝動、成長を恐れての幼児退化などもこの原則による行動。

>死の必然性、すなわち光

すなわち光:光があれば必ず闇が生まれるように、生があれば必ず死がある。

>大脳宇宙に漂っている生命の形

大脳宇宙:大脳も宇宙と同じく「機構」のかたまりである。
        その大脳にこそ生命の根元がやとっている。

>光明、仮現に
>永遠を期して!

光明:暗闇を照らす明るい光、神や仏の後光。知慧や慈悲の象徴。
仮現:神仏が姿を変えてこの世に現れること。
        普通「化現」や「顕現」と書くので、仮の姿であることが強調されている。
永遠を期して:永遠を期待して。

>すなわち原初に戻る不完全

不完全:完全なる一者から分離した不完全な我々は完全なるものに憧れ、
        その究極の存在と一体化したいと願わずにはいられない。
        一体化すればそれが全てとなり、
        空間を占める肉体も動きに付随する時間も無くなる。
        つまり永遠を手に入れられる。

>両性 両極 二つのわたし
>上下 左右 二つのわたし
>前後 天地 二つのわたし
>天使 悪魔 二つのわたし

二つのわたし:完全なる1人のわたし。

>中は空洞

空洞:hole は hell (地獄・奈落) と同一視される。

私的解釈:人間は男女に分かれた、不完全な存在である。
        完全な存在になるために原初に向かおうとする。

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>E-09 ラスト・エヴォルーション〈進化革命前夜〉

>地球のはじまり 舞台装置

舞台装置:地球は神の作りし舞台にすぎない。

>ラプラス星雲 他人論

ラプラス星雲:カントの星雲説をラプラスが手直しした、カント=ラプラス星雲説。
        原始の星雲は冷却しつつ収縮・回転し、
        それによって太陽系の惑星が生まれたとする説。
他人論:主観論の対語。
        主観論とは、「私が物事を考えるからこの世は存在する」という考え。
        つまり他人論とは、「他人が存在するから自分の存在を確認できる」。

>不変の幻想 謎解き時計

不変の幻想:この世は幻想であるが、それは強固な幻想である。
謎解き時計:時間による変化が、幻想を解く鍵となる。

>不滅の果ての 乳母車

不滅の果ての乳母車:輪廻転生。

>永遠のワタシ 永遠の他人

永遠:ワタシと他人は決して交わることがない。

>神秘の天秤 人体星座

天秤:キリスト教において主にミカエルの持ち物。
        タロットカードにおいて「正義」のカードに登場する。
        最後の審判の時に人間一人一人の善行と悪行が天秤にかけられる。
人体星座:細胞の動きが大きな一つの形を作る様は、星座に例えられる。

>時は仮説 幻想の生れはじめの舞台装置

時は仮説 幻想:ヒンドゥ教では、
        我々が認識している世界は創造神プラフマーの見ている夢であって
        実のあるものではなく、全てが幻想とされている。
        幻想の始まりが時間と空間の始まりで、
        その幻想の世界=時空の呪縛から解き放たれることを解脱と言う。
        解脱とはプラフマー=宇宙と一体化することで、
        そこでは過去も未来も私も他人もなく、すべてが一つの存在である。

>運命 選択 グッバイ論

運命 選択 グッバイ論:わたしと他人がある人間として生まれたならば、
        それぞれの運命を選択し、離れ離れになるのは必然。

>わたしとあなたは天の河

天の河:わたしとあなたは、決して交わることがない。

>過去なし ただ現在 未来なし

ただ現在:過去も未来も幻想であり、存在しない。

>テアトル 宇宙にただ一人

テアトル:Theater、劇場、舞台。

>That's me! Wait! my last evolution
>                         revolution
>                         everlution

evolution:進化。徐々に進歩・発展して行く様。
revolution:回転、革命。
everlution:造語。永遠に更新しつづける様。

私的解釈:人間は決して他と交わることのない存在である。

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>E-10 封印呪縛

>印なき封印呪縛

封印:閉じ目に、開ける事を禁じる警告の印を付ける事。
        精神的に封じているだけで、物理的には何の効果もない。
呪縛:呪(まじない)によって縛る事。物理的にではなく、
        精神的にまじない/催眠術/諭し/脅しなどによって縛る。
印なき:封印も呪縛も精神を持たない者には意味を持たない。
        さらには印もないのでは、封印呪縛されている事にすら気付けない。

>不運の鉄仮面

不運の鉄仮面:アレクサンドル=デュマのダルタニャン物語『鉄仮面』より。
        王の二人の息子は、一人は王位に付き、
        一人は鉄仮面を被り牢獄に閉じ込められる。
        同じ血を引いているのに鉄仮面を被らされた方は不運と言う他ない。

>時は、時代は変わることなし
>時は、時代はあるものないもの

時代:時の流れは川の流れと同じ。
        水そのものは常に変化しているにも関わらず、「川」は変わらず存在する。

>人を「ごっこ」の血の記述
>人も「教え」の川流れ
>人も人なりとただ伝えられるのみ
>変化なし!

ごっこ:人間は、人間という役割を演じているにすぎない。
教え:そして「時」とは人から人に「あるもの」として伝えられているに過ぎない。
変化なし:常に細胞が変化しているにも関わらず、
        「人」は「人」という概念が存在する限り存在する。

>昼には見えて夜には見えず
>夜には見えて夜には見えず
>アナグラム
>その謎言葉 言葉の仮面

昼には見えて夜には見えず;人の主観により、ものはあったりなかったりする。
アナグラム:言葉の文字の順番を並び替え、別の言葉を作る遊び。
        答えはすべて目の前に提示されているにも関わらず、
        並び替えなければそれが見えない。言葉とはそれだけ強力である。
言葉の仮面:物事は「言葉」を与えられた瞬間から「概念」として固定化される。

>その源なるは ディッヒ!

ディッヒ:dich[独]、あなた。

私的解釈:物事は全て変り移るが、「概念」は変化せず不変である。

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>E-11 何人も語ることなし

>何人も語ることなし
>何事も語ることなし

語る:神がこの世を創った行為。人間には行えない。

>ただ 昨日という閉ざされた暗闇に
>ただ 今というほんの瞬間の閃光に
>ただ 明日という光待つ暗闇に、劇場に

ただ:人間は「現在」しか認識できず、過去も未来も不定である。

>何人にもなることあり
>何事にもなることあり

なる:あるものが別のものに「成る」。人間にも可能な行為。

>時の仮面をつけた
>芸人たちの古代大陸劇場

時の仮面:ロバート・スルヴァーバーグ『時の仮面』より。
        1999年に世界は滅びるという終末論に取りつかれた人々は刹那的に生きる。
        そこへ未来から来たと言う男が現れ、
        体制側は男を使って終末論者たちを抑え
        治安を取り戻そうとするが、男は世界をさらなる混乱へと導く。
古代大陸:古代の仮想大陸レムリアの人々は両性具有の卵生人であったが、
        猿と交わった為に猿の姿の男女に別れて、胎生となり、
        やがてアトランチス人と呼ばれる様になった彼等は大陸共々沈んでいった。

>銀河鉄道より来る

銀河鉄道:三途の川の渡し船と同じもので、死出の旅路を象徴する。
        死に行く者は誰でもこれに乗るのだが本当に最後まで乗ってゆけるのは、
        皆の幸せの為に自己を犠牲にする事をためらわない者だけである。

>三つの七不思議

七不思議:人間の造った驚異的な造形物を世界中から七つ選んだもの。

>生まれ消えろ わたし玉

わたし玉:球は魂に通じる。
        霊から分かれたものがて個々の魂となり、個々の肉体に宿る。
        死後、肉体を離れた高貴な魂は上昇し天界へと至るが、
        卑小な魂は下降して地獄へ落ちる。
        上昇した魂は最高点へと達すると再び霊と一体化する。

>生まれ消えた わたし星

わたし星:この世を去った人、この世へやってくる前の人の魂は星に宿る。
        星空は天界である。

>一番星ワタシボシ

一番星:宵の明星。金星であることが多い。

私的解釈:人間が認識できるのは「今」しかない。

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>E-13 不人幻魂合体術
坪内逍遥翻訳シェイクスピア『ハムレット』より

不人幻魂合体術:人でない幻・魂を合体させる術。

>神霊にもあれ
>悪鬼にもあれ
>あー天の顆気 持ち来るとも

神霊:天界の者達。生まれる前の存在。
悪鬼:地獄の者達。死んだ後の存在。
顆気:光の気。「顆」は丸いの意。

>底意は善にもあれ! 悪にもあれ!

底意:奈落の心、妖気。

>あー地獄の妖氛 携え来るとも

妖氛:怨みの気分、妖気。

>かかるいぶかしい姿にて来る上は
>問答せん!

かかる:そのような。
いぶかしい:不審に思われる。
問答:議論を尽くして真理を導き出す行為。

>さらでも凄き月の夜に
>あくがれいでたまひぞや

然らでも:それでなくても、ただでさえ。
憧れ出で給いぞや:居るべき所から離れてお出ましになる。

>人智の及ばぬこの不思議
>造化の侏儒たる人間を
>恐れをののかせんその姿

造化:神が創造を行うこと、また神が創造したもの。
        エーテル(気)の動きのこと。
侏儒:小人。ドワーフに同じく大地の性質を持つ。
その姿:小人である人間を恐れ慄かすからには巨大な姿である。
        人間以前の人類あるいは創造の神が巨人であったとする神話・伝承は
        世界各地に存在。

私的解釈:創造主の事をうたった歌。

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>E-14 架空過去型《禁厭》まじない

架空過去型まじない:想像上の過去へ行くおまじない。

>蓮華のじゅうたん 人形あそび

蓮華:レンゲソウ、マメ科の緑肥植物。
        田植え前の田に生やして窒素固定をさせ、土に鋤き込み肥料とする。
人形あそび:自己を外部化する行為。

>驚きももの木 わたしのこころは
>オー・マイ・ドリームマシン 夢吹雪

ももの木:桃源郷の仙果の木、季節も無く実る。

私的解釈:過去への望郷の念をうたった歌。

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>E-15 ゲルツェンの首
寺山修二『棺桶島を記述する試み』より

ゲルツェン:Aleksandr Ivanovich Gerzen [1818-1870]
        ロシアの革命思想家、小説家。
        農村共同体を基礎とする社会主義を唱える。

>氷国大手術

氷国:ロシア。

>壜の闇の肺臓

壜の闇の肺臓:人工臓器。

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>E-16 円錐形絶対卵アルシブラ
寺山修二『棺桶島を記述する試み』より

円錐形:ヒエラルキアの形。ゼンマイのほどける速度を一定に保つ装置の形。
アルシブラ:シャルル・フーリエ『アルシブラ』
        アルシブラとは先端に手のついた万能尻尾のことで、
        太陽人、すなわち来るべき未来の完全なる人類が持つとされる第五肢。

>哲学的存在

哲学的存在:思考の中のみの存在。

>通俗奇術のグランギニョールの領域

通俗奇術:みせもの、大道芸、手品。
グランギニョール:仏語で「大きな指」。
        19世紀末から約60年間続いた劇場の名。
        一回の公演で短い恐怖劇と喜劇を交互に上演することにより、
        日常に滑稽と狂気の紙一重の恐怖が潜んでいることを再認識させる。

>吐息、溜息、青息、嘆息、鼻息

息:神は土の人形に自らの息を吹き込んで人間を造ったので、
        人間の息は神の息であり霊であるとされる。
        そしてその息の種類を分けるのは人間の感情である。
吐息:ため息。緊張が緩んだ時に吐く大きな息。
溜息:失望した時や、悲観が喜びに変わった時に吐く大きな息。
青息:困難や心配を乗り切る事ができそうもなく、苦しみ悩む様子。
嘆息:ため息の字音語表現。絶望の思いを深くする意にも。

>息の蒐集、息の貯蔵器、虫眼鏡

蒐集:収集。
虫眼鏡:光を集める道具。

>一切合切エネルギーなし!
>一切無駄なエネルギーなし!

一切無駄なエネルギーなし:永久機関の実現条件。

>絶対人 息する機械
>絶対人 肉の人体模型
>絶対人 ラッキョの分解
>絶対人 超なる合成

絶対人:人間の造り出した人間に似たもの。錬金術で言うところのホムンクルス。
ラッキョ:入れ子構造をしている。

>アッアー 天体回転
>アッアー 存在合成

天体回転:エネルギーを必要としない永久運動。
存在合成:無から有を作ることはできないので、
        新たなモノを作るには存在を合成する必要がある。

>どっちもコチコチ
>こっちもドキドキ
>時打つハンマー トントントントン
>時行くボクが 戸をあける!

コチコチ:時計の歯車とテンプの噛み合う音。
ドキドキ:人間の心臓の搏動によって血液が送られる音。
時:最初に造られたゼンマイで動く自動装置が自動時計と自動人形であった。
        同じ技術で動く両者が組み合わさって自動人形時計が造られるようになる。
戸:カラクリ時計の一種である鳩時計は戸を開けて時を告げる鳩が現れる。

私的解釈:想像上の「絶対人」をうたった歌。

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>E-17 成熟年齢透明期

>Vanish! Fade away! Melt away! 消えうせろ!

Vanish:消える。
Fade away:じわじわと消える。
Melt away:溶けてなくなる。

>インスタントのニセモノたちよ

インスタントのニセモノ:その場しのぎの存在。

>無人のサイドカーにまたがって

無人のサイドカー:重量バランスが悪い上に自動車のように人間を守るボディもなく、
        事故が起きると死亡率はかなり高い。

>ゆくぞ時速百キロの 怪傑、疾風、逃亡者

怪傑:不思議な、超人的な能力を持つ者。
疾風、逃亡者:もし光速を超えられればウンザリな現在から逃げられる。

私的解釈:この世からの逃避欲を描いた歌。

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>E-18 さかさまボクとボクの部屋
寺山修二『棺桶島を記述する試み』より

>臍の緒をかたどる生活縄は

生活縄:人間は生まれながら生活に縛られている。

>宇宙の果ての宇宙ブランコ

宇宙ブランコ:宇宙内で移動はできるが脱出はできない。

私的解釈:人間はこの世に縛られた存在である。

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>E-19 幻燈蝶蛾十六世紀
坪内逍遥翻訳シェイクスピア『ハムレット』劇中劇に登場するギリシャ神話より

十六世紀:歴史上、西洋の革命前夜とされる時代。
        キリスト教の束縛、既得権益者の腐敗等によって
        進歩が停滞していた時代から
        科学革命,産業革命,社会革命等、人々の生活に劇的変化が現れる時代。

>いたはしや老いの身の

労しや:かわいそうだ、哀れだ。

>覘は外れて太刀風に
>よろめきまろぶ 老人よ!

覘:こっそり機会を伺うこと。
まろぶ:「転ぶ」ころぶ、倒れる。
老人:トロイのプリアモス王で、ゼウスの末裔の一人。
        老爺、老王も同じ。

>唸る太刀風
>トロイの城楼
>燃ゆる頂上 雷火と砕け落ちければ
>ピーラス暫く 耳聾ひたり

トロイ:トロイの木馬の舞台となったトルコの古代都市。
城楼:城に作られた物見やぐら。
雷火:雷はギリシア神話の主神ゼウスの力。
        プリアモス王はゼウスの繋累なので、その加護があった。
ピーラス:Pyrrhus
耳聾ひたり:耳が聞こえなくなってしまった。

>見よ!白頭の老爺!
>斫らんと上げし
>剣は空にとどまりて
>ピーラス立縮む

老王の剣はとてもピーラスに当たるようには思えないが、
ゼウス神が加護したので形成はピーラスに不利となる。

>ピーラスやがて敵意を復し
>血汐したたる血刀を
>老王めがけて打下す!

トロイ戦争終結直後のエピソード。
戦争に負けたトロイの老王プリアモスは許され生き延びたものの、
父アキレスをプリアモスの息子パリスに殺されたピーラスに討たれてしまう。
若きピーラスの力が主神の神力に勝ったことは、主権交代が暗示されている。

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>E-20 地球は人物陳列室

>無限に対の関係が
>二枚の鏡の狭間で
>増殖してゆく欲望の

無限に対:合わせ鏡の中にできる無限の虚像。

>気まぐれ無情の偽りの

偽り:鏡の中の存在は虚像である。

>光とて影つくり
>わたしをわたしと対にする

わたしをわたしと対にする:光があるところに必ず影ができるように、
        「わたし」がいれば必ず「わたし以外」が存在する。

>孤独の発生、その理由

孤独の発生:「わたし」は「わたし以外」と決して交わらず、孤独である。

>双児

双児:二面性ゆえに完全な一者と同義。

私的解釈:地球には男女に分かれた不完全な人間が連なっている。

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>E-22 ワタシ空想生命体

>暗黒灼熱 誕生人形 名付けられて人動説

暗黒:生命誕生の場。
人動説:天動説、地動説になぞらえた造語。
        天も球で地も球ならば人も球であろう。

>世界あやつる単一存在 他は空想人形術

単一存在:すべての空想生命体の基となった究極の一者。
        人動説の立場からすると一人の人間と考えられる。
他は空想人形術:単一存在いがいは魂のない人形である。

>暗黒零下 誕生生物 関係づけられ人動説

誕生人形、誕生生物:人形と生物を同一視している。

>天然舞台に単元存在 成るは空想生物術

単元存在:単一存在に同じ。

>言葉誕生 出会いそして迷い
>知識誕生 出会いそして現ろ

誕生:時間の発生でもある。
        言葉があって知識が得られる。誕生があって出会いが得られる。
迷い:究極の一者に属していない多者の状態。
現ろ:虚実は一つの存在の両面にすぎない事を示している。

>舞台運命魔術鏡

鏡:わたしは、一者の虚像のようなもの

>満月 謎の変幻自在 わたし果てなる空想生命体
>満月 謎の変幻自在 わたし果てなる空想運命体

満月:太陽と大地の間にある両性性、満ち欠けから来る変幻自在性から、
        全てのものに変化する単一、単元存在の象徴。
わたし果てなる空想運命体:わたしが果てである世界の出来事は全てわたしの空想。

>時を求めて 安息なしの 生きつづける空洞形態

空洞形態:我々は物体から反射してきた光を見ているにすぎず、
        物体の外からしか観察はできない。
        一者が自分を見るには自分の外からの観察者を作らなくてはならない。
        しかし観察者を作ると一者は空洞なので結局は観察できない。

>土地を求めて 手なく足なく

手なく足なく:究極の一者は球形をしているので手も足もない。

>在りつづけるワタシ 透明無形 かすかに吐息

透明無形:完全なるものは実体は持たず霊的な存在なので透き通っていて形もない。

私的解釈:私達は一者が想像した虚構の存在である。

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>E-23 バーチャルスター発生学

発生学:受精卵から個体が分化成長する過程の研究。

>太古 完全 砂漠に孤独

太古:ここでは世界の始まり。
完全:完全なる一者の分裂から世界が始まる。
砂漠:生物の存在できないところ。
        宇宙の広さや時の永さを砂漠の砂粒の数に例えることがある。
孤独:初めの一者は孤独である。

>空気 原子 因果律星

空気:単なる空間になんかしらのエネルギーが生まれた。
原子:ギリシア以来否定されてきたが、入れ子説に対抗して再登場。
        入れ子説を許すと無限に小さい存在をも許してしまう。
因果律:全原因は神である。

>そう、土地の子 受胎

土地の子:魂は大いなる霊から分離して地上に降り、大地から作られた実体に宿る。
        鉱物、植物、動物、全ては土地の子である。

>哲学の胎児

哲学:この場合は錬金術のこと。

>卵 完全 入れ子に起源

卵:哲学の子供を得る為には哲学の卵が必要である。
        金の材料、操作手順、原理に関する完全な知識などをも含む概念。
        狭義では錬金術で材料を入れて熱する容器、たいていは丸い坩堝(るつぼ)。
完全:卵はそれだけで生命体を発生させるので、完全とされる。
        完全なる哲学の卵からは、何でも発生するとされ、
        特に完全なる金属である金を発生させることが哲学の卵を得た証明になる。

>雄蘂 雌蘂 一粒の種子

種子:インド系での宗教では世界は一粒の種子(しゅうじ)から発生したとされる。
        創造以前の一者=前者の中に存在する、外界へ現れる可能性を持つ力。

>哲学の子供

哲学の子供:錬金術によりできた金。

>月天 水星天 金星天 太陽天 火星天
>木星天 土星天 恒星天 原動天

月天~原動天:この世界の入れ子構造。
        地球を中心に月が乗っかっている球が存在し、
        その一回り大きい球に水星が乗っかっている。
        そのように地球は9個の球に囲まれた存在である。
        原動天はこの世と神の世界を分ける一番外側の球。

>円環無限に果てなき

円環無限に果てなき:円運動は始まりも終わりもなく、永遠に続く。

>一つの有機的な機関
>一つの永久運動装置

有機的な機関:天の動きは、人間の動きと同等。
永久運動装置:天はエネルギーを必要とせずに運動し続ける。

>ああ、空動なり
>そは空動なり

空動:ただ動いているだけで、意味や目的を見出せない動き。

私的解釈:物事は核となる意味的存在と、それが動かす虚構の外観とで成る。

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>E-24 平俗宇宙に不滅の皇帝

この世にあって不死なる存在。

平俗宇宙:高貴宇宙であれば一者であるが、平俗なので多者の状態である。
不滅の皇帝:死んで再び蘇る存在についての記述は錬金術書によく見られ、
        皇帝や王の名で呼ばれることが多い。
皇帝:タロットカードでは世俗的な権力。
        すなわち富、名誉、地位、政治力、軍事力などを象徴。

>生存・驚異・錬金術 卑金属・貴金属

生存・驚異:無から有を作れない人間にとっては、存在は驚異そのもの。
卑金属・貴金属:錬金術の一つの目標に、卑金属を貴金属にすることがある。

>右から左 始まり終わり

右から:遺伝子の情報は方向が決まっている。

>破壊・狩猟・乱舞・祝宴

破壊~:人間が時に必要とするハレの行為、ディオニソスの性質。

>生誕・不可視・錬金術 人工的・組み替え装置

生誕・不可視:無から有を作れない人間にとっては、生誕は見ることのできない奇跡。
組み替え装置:遺伝子操作は一種の錬金術と言える。

>上から下へ 変形異形

変形:内容はそのままで形だけを変えること。
異形:得体の知れない生き物で、接する人に不気味だという印象を与えるもの。

>書物・匿名・放縦・狂態

放縦:だらしがない様子、きままな様子。
狂態:気違いじみた言動。

>世界かわらず

世界かわらず:一者の世界が多者の世界に変化しただけなので本質的には同じもの。
        冷静な私と興奮状態の私は別のものではなく、同じ存在である。

>止まって 鳥と魚がからわまり
>止まって 卵とベッドのだましあい
>止まって 船と馬車から古代舞い
>止まって 海と瀑布に先まわり

Max Ernst『百頭女』より。
鳥と魚:陸上の生物と水中の生物、縁が近い生物同士であると言われる。
        鳥は、中近東の鳥葬文化圏では最高神かそれと同等の存在。
        アラビアの不死鳥フェニックスが代表的。
        魚は、キリストの象徴の一つ。
        つまり、鳥も魚も死と再生、永遠の命を意味する。
卵とベッド:卵生と胎生、発生・誕生の象徴。
船と馬車:水上の交通手段と陸上の交通手段。
海と瀑布:海水と陸水(滝)。

>キラキラ 夢想 ユラユラ 想像
>カラカラ 空想 セラセラ 発想
>サラサラ 妄想 チラチラ 思考
>ヒラヒラ 創意 ハラハラ 仮想

夢想~:人間の精神状態、人の創造により頭に生まれる産物。

>誕生・不滅・錬金術

不滅:有を作り出す行為は神のものであるので、その結果は不滅である。

>時間・空間・宇宙卵

宇宙卵:最初の一者と同義。時間と空間が閉じ込められている。

>哲学・水晶・薔薇十字

水晶:その神秘的な姿から、秘術によく使われる。
薔薇十字:キリスト教神秘主義の錬金術で重視される、神の力の象徴。
        十字架の飢えに薔薇の花か咲いている。通常赤いバラ。

>純潔・調和・遠近法

純潔:神に近づく条件で、偉人や聖職者は基本的に純潔を要求された。
        禁欲により神との一体化感覚を体験する。
        天国に行けるのは純潔を守り通したものだけだと言われた時代すらある。
調和:錬金術では組成に使われる素材の割合が重要とされた。
遠近法:万物の収束する点が一者である。

>キラキラ 起源 ユラユラ 孤独
>カラカラ 迷宮 セラセラ 時空
>サラサラ 回想 チラチラ 記憶
>ヒラヒラ 蒸発 ハラハラ 不滅

起源~:物事の変化の様子。

私的解釈:不完全な「わたし」と完全なる一者の関係。

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>E-25 天然同胞宮殿 遠近法の書
プラトン『ティマイオス』より。

天然:人工の反対。ここでは神的存在の手になるものの意。
同胞:同じ母親の腹から生まれた兄弟姉妹。
宮殿:王、あるいは神が住む宮殿。
遠近法:万物の収束する点が創造者である。

>球体膨張 面体凝縮 万物世界

球体膨張:球体である一者が多者に分かれようとする行為。
面体凝縮:多面体である宇宙すなわち創造物。
        多者は一者に合一しようとして凝縮する。

>魔術 美学 天文学
>ワタシアナタ天然学(イエイ)

天然学:天然すなわち神の創造物を研究して神を知ろうとする学問。
        魔術も美学も天文学も結局は天然学。

>現実仮想 形態模像 天然空想

現実仮想 形態模像:現実に「見える」ものは、
        「本質」を人間なりにとらえた虚像でしかない。

>土星の軌道 プラトン 外接球
>木星の軌道 プラトン 内接球
>地球の軌道 プラトン 外接球
>金星の軌道 プラトン 内接球
>わたしの軌道 プラトン 外接球
>あなたの軌道 プラトン 内接球

軌道:天球説の否定。
プラトン:正多面体が5つしかないことを証明。
ケプラーの入れ子構造モデル
        水星 -正8面体- 金星
        金星 -正20面体- 地球
        地球 -正12面体- 火星
        火星 -正4面体- 木星
        木星 -正6面体- 土星
元素説との対応 by.プラトン
        正6面体:土
        正4面体:火
        正8面体:空気
        正20面体:水
        正12面体:エーテル
※土~水は『ティマイオス』にて。この段階ではエーテルは特殊な空気扱い
 エーテルを元素扱いするのは『エピノミス』にて。

>わたし遊星天文童子

遊星:惑星に同じ。

>五つの立体 わたしの子孫

五つの立体:プラトンの立体。
わたしの子孫:遊星や天体は神が物理的に創造したもの。

>あなた謎のナスカ童子

ナスカ:天からしか見えない地上絵で有名。
童子:幼い子供。

>空想立体 あなたの子孫

あなたの子孫:地上絵を描いたのが地球人であれ宇宙人であれ、
        神の創造物には違いがない。
        創造物も空想により創造するという思想が表現されている。

>わたし…あなた…天然…天然…天然…自在…自在…
>わたし…あなた…天然…天然…天然…自在…自在…

自在:自分自身で独立して存在していること。

私的解釈:中心たる一者と、その周りをまわる「わたし」の歌。

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>E-26 寓意・寓話・寓エスト
澁澤龍彦『夢の宇宙誌』の「世界の終わりについて」の章より

創造者の自己の認識の活用形。
寓意:他のことになぞらえて、ほのめかされる意味。アレゴリー。
        この歌では、世界の終末を寓意していると思われる。
寓話:ある意味をこめた例え話。英語的に寓意の比較級。
寓エスト:英語的に寓意の最上級。

>エレメント エレメント エレメント エレメント

エレメント:この世を構成する元素。

> カタクリスモス
> カタクリスモス

Cataclysmos:ギリシア語の「大変動」。
        音訳され英語の cataclysm (地殻の激変) に。
        聖書にて洪水の意で使われる。

>世界の終わり
>空想をして
>気まゝに遊ばせろ

空想:創造者の夢想が終わると世界は終わる。

>北極レミング
>シベリア羚羊

Lemming:間引きの為に集団自殺をすると言われる。
羚羊:かもしか。絶壁に向かい集団で突き進む習性を持つ。

>最後の自然審判

最後の審判:終末に行われる選定。

>恐奇の運命
>絶命予言
>哲学革命
>楽園失楽園
>偶然叙事詩
>宇宙破局
>千年恐怖
>寂滅思想

絶命予言:多くの教えに存在する、存在意義。
哲学革命:哲学すなわちこの世の法則が一新される行為。
偶然叙事詩:ルクレティウスの壮大な叙事詩『物の本性について』。
宇宙破局:ミルセア・エリアーデによるキリスト教が克服した苦悩として
        「宇宙的破局、侵略、社会的不正」というのがある。
千年恐怖:西暦1000年に関する終末論。
寂滅思想:解脱して、この世の煩悩から離れ、涅槃に至ることを善しとする思想。
        寂滅は涅槃, ニルヴァーナに同じ。
        東洋、日本の禁欲主義につながる。

>人間誕生
>人間知恵
>人間知識
>人間快楽
>人間意識
>人間経験
>人間啓示
>人間解放

知恵~:人間が世界の終わる恐怖から逃れる為の手段。

>ダンテ
>ラヴレェー
>スウィフト
>サド

時代の苦悩の証人たち
Alighieri Dante [伊13C・詩人,政治家] "神曲"。
Francois Rabelais [仏16C・人文主義者,作家,医師]
        当時の政治や宗教を大胆な筆致で批判。
Jonathan Swift [英18C・風刺作家,ジャーナリスト]
        "ガリヴァー旅行記" にて痛烈に人間社会・政治批判。
Donatien De Sade [仏18C・作家]
        人間の性の本能の全てを肯定し、それをも含めた全体的自由を追求。

> 「アパカリプス!」
> 「ブック オブ レヴェレィション!」
the Apocalypse:黙示録。
the Book of Revelation:ヨハネの黙示録。

>宇宙開闢すなわち運命開眼
>天地想像すなわち運命誕生
>創世神話すなわち創物運命
>自然淘汰すなわち運命淘汰

この世の移り変わり=人のなりゆき。

>われよく知るべし 自分の鏡
>なにとてその姿 我我肉体か
>なにとて永遠不在 我はただの寓然なり

われよく知るべし:一者は自己の存在を認識する為に多者を造る。
        人間もまた一者を観測するように造られているので、
        世界の終わりについて考えるようにできている。
自分の鏡:自己を外部化して観測する行為。
我我肉体か:人間も結局は物体でしかない。
永遠不在:肉体を詳しく調べても、どこにも魂は「存在」しない。
寓然:一者の創造物が天然なら、
        一者は寓意によって創造された寓然なのかもしれない。
我はただの寓然:一者が自己を認識すれば、多者の存在意義は消え失せる。

私的解釈:神の審判に翻弄される人間の存在を描いた歌。

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>E-27 天使アンドロギュヌス

Androgynous:両性具有。完全な性質を持つ。

>五芒星形
>快楽・曼陀羅・生殖軸

五芒星:西洋では人体として描かれる。
        上方に角が来ると天の力の象徴、5つの頂点が4大元素と光の属性を持つ。
        下方に角が来ると悪の力の象徴、5つの頂点が4大元素と闇の属性を持つ。
快楽:苦痛が全て取り残された状態。
        すなわち精神が安らかで雑念のないことが重要であり、一種の解脱。
        エピクロス学派では、快楽を生の原動力であり目的であるとした。
曼荼羅:宇宙の原理を表す形、音、言葉など。
        通常絵図を指し、宇宙の設計図と言われる。
        曼荼羅は宇宙の姿、世界の縮小図で、これを見て瞑想をすることにより
        精神は上昇し、真理と近づき、宇宙と一体化する。
        つまり曼荼羅は解脱する為の法具の一種である。
生殖軸:動物の生殖器は体の中心軸上に存在する。
        生物の発生には方向性があり、一定軸に沿って体が造られていく。

> 威厳 純潔 双供欲 艶瀾

双供欲:2つに分かれた不完全な存在は、一者になりたいと願う。
艶エン:なまめかしい、つや、うらやむ。
瀾ラン:波。

> 古代原型とつながるワタシ セラフィトゥス
> 両性具有の二人 セラフィータ

Seraphitus/Seraphita:Balzac『セラフィタ』より。
        天使九階級の最高位が熾天使セラフィム。
        セラフィムには男のセラフィトゥスと女のセラフィータが同居する。

>天堂機構[からくり]

天堂機構:天の動きは、エネルギーの入らない完全なる運動。

>造形・モザイコ・二なり夢

造形:古代原型には形がないので、一者から多者になること。
モザイコ:多者になっている状態。
二なり:男女の特性を持つ、すなわち完全な状態。

> 一者か多者か 言葉か物か

言葉・物:一者が発声した言葉により、多者たる物が造られた。

> かかる疑問が象徴となり ディオスクロイ
> 万物両性混沌[カオス] アニマ・アニムス

Dioskuroi:ゼウスの子ら、の意。
        カストルとポリュデウケス(ローマ神話でのポルックス)の双子神。
        双子は物事の二面性・完全性の象徴。
混沌:物事=特性が混じり合った状態。すなわち完全なる一者につながる。
anima-animus:ユングの概念。
        アニマは男性の心の中にある抑圧された無意識の女性的要素。
        アニムスはその逆。つまり、人間の中にも男女両方が含まれている。

>霊的完成を急ごう
>すなわち自己の内部の再発見

霊的完成:我々が霊的に完成するには古代原型と一体化する必要がある。
        その為には五芒星、快楽、曼荼羅などを用いて、
        自己の内部が古代原型と繋がっていることを発見しなければいけない。

>わたし世界に二人ぼち
>わたし世界に二人きり
>わたし世界に二人だけ
>わたし世界にアンドロギュヌス

Androgynous:両性具有。完全な性質を持つ。

>ヘルマフロディズム

Hermaphrodism:両性具有主義、両性具有を善きものとして目指す傾向。
        ギリシア神話のヘルマフロディトスに由来。
        ヘルマフロディトスは、ヘルメスとアフロディーテ二神の子供。
        男性であったが泉の精霊に惚れられ、精霊が彼と一つになることを
        願ったので、合一して両性具有となった。

私的解釈:人間は絶対存在から隔離した不完全な存在であるが、
        その内部には対となる性質が内在し、
        それにより完全体に戻る可能性を秘めている。

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>E-28 わたし万物百不思議

わたしはすべての物、すべての建造物。
澁澤龍彦『ヨーロッパの乳房』より。

>顔の賦 首の賦 髪の賦 爪の賦 胴の賦
>両手の賦 両足の賦 全身の賦

賦:与えられたもの、わりあて。

>つまり紋章 人体紋章学

人体紋章学:紋章はその色、形、模様に意味を持っており、
        人体という紋章に何からの意味があると想定し、それを探る学問。
        フランス語の「blason (ブラゾン)」=紋章。
        16世紀に流行した詩の呼び方、褒貶詩(ほうへんし)。
        人体の一部を誉め称えたり、比喩を使って人物や事物を誉めたりする詩。
        この曲に固有名詞が多く出るのは、これは「わたし」についてのブラゾン、
        超ナルシスティックな歌なのです。

>鏡の中のその姿

鏡の中のその姿:人間の事。

>複雑微妙な有職[ゆうそく]文様

有職文様:日本の家紋の意匠。

>黒字白斑 宮廷作法
>白地黒斑 楯形模様

黒字白斑/白地黒斑:黒白の組み合わせは二面性の合一の象徴、
        双子・両性具有の暗喩。
        錬金術の両性具有術の象徴にチェスのキングとクイーンが使われるのは、
        その舞台が白黒模様のチェス盤空間である為。
楯形模様:西洋の紋章の意匠。

>人が書かざる難解象徴

人が書かざる:神やそれと同等のものが書いた=人間を造った。

>バロック技巧の歴史の芸術

the Baroque:16C末~18C中頃に、ヨーロッパ全土に盛行した芸術様式。
        プロテスタントに押され気味だったカトリックが政策として
        作製するようになった、「人をひきつける」ことを目的とした絵画。
        複雑華麗で動的、ルネサンス様式の均整と調和からの脱却。
        激しい情緒表現や流動感をもった同時代の美術・文学・音楽などの傾向、
        さらには、時代概念をさすに至る。

>火蜥蜴[サラマンドラ]
>ドラゴン 豪猪[やまあらし]

Salamander, Dragon, Urchin:西洋の紋章の意匠。

>聖体・秘蹟 信仰・美徳

聖体:パンとぶどう酒。
秘蹟:キリスト教の儀式、通過儀礼のこと。洗礼、聖餐、結婚式など。

>閉じ込められた
>薔薇の奇跡

閉じ込められた薔薇:聖母マリアの処女性の象徴。

>人獣花

人獣花:西洋の紋章の意匠。マンドラゴラの類。

>真珠・宝石 人間・年齢

真珠:海の底にありながら天の光の様に素晴らしい輝きを放つところから、
        天の力が貝に働きかけたとされた。
        2つの属性が結びついて結合されたものの象徴。

>花菱十字架

花菱十字架:日本の家紋の意匠。

>金・銀・紫・緑・赤・青・黒
>金・銀・紫・緑・赤・青・黒

金~:紋章を構成する色達

>アルハンブラ
>イズパハン
>カセルタ
>リンダーホフ
>シュヴァル
>ボマルツォ
>フローラ
>マティアス
>ヴェルサイユ
>オベリスク
>ザーメック
>イゾラ・ベッラ
>アンフィテアトロ
>オルフェウスグロッタ
>ノイシュヴァ・シュタイン
>サンタ・マリア・デラ・コンチェツィオーネ

Alhambra        13C の宮殿、西方イスラム世界の代表的建築物。
Esfahan         16C イランの都市「世界の半分はイスファハン(Isphahan)」。
Caserta         18C イタリアの王宮と庭園、水道橋と絹織物工場。
Linderhof       19C ドイツの城、森の中にひっそりとある豪華絢爛な宮殿。
Cheval          19C フランス、一人の男が石を積んで造りあげた「理想宮」。
Bomartzo        16C ローマの庭園、人ざる彫像が点在する「怪獣庭園」。
Flora           20C マカオ最大の庭園、ポルトガル人の壮麗な邸宅が炎上した跡。
                        フランスの城、ローマ神話で花と春の女神。
Mathias         16C マティアス帝が造ったプラハ城の門。
Versailles      18C フランスの王宮、絶対王政のシンボル。
obelisk         --- 方尖塔。
zamek           --- 城。
Isola Bella     17C イタリアの島、「美の島」の庭園。
Amphiteatro     19C 古代ローマの円形闘技場 (コロッセオ) を再開発。
The Grotto of Orpheus
                16C ギリシア神話「オルフェウスの洞窟」、イタリアで流行した。
Neuschwanstein  19C ドイツの城、岩場に建つ「白鳥城」
Santa Maria della Concezione
                16C ローマの聖母処女懐胎教会「骸骨寺」

>洞窟 彫像 噴水 庭園 宮殿
>青銅 壁画 架空 古城 別荘

洞窟~:自然もしくは人工の造形物。

>いたるところで生きる
>生きている自分の姿

いたるところで生きる:この世に存在する全ては、
        一者の創造物であると同時に一者の様々な状態の現れ。
        同様に、人間の造ったものは人間の別の状態、現れ方のひとつ。
        いたるところにある人間の創造物、象徴も空想上の生き物も建造物も、
        みな人間の顕現。

>万物ワタシ百不思議
>世界ワタシ百不思議

「私」と「世界」を同一視している。

私的解釈:世界には造形物が溢れているが、人間とて例外ではない。

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>E-29 体内時計都市オルロイ

ラ・メトリ『人間機械論』より。
体内時計:人間の寿命も体内時計による仕組みだと考えられる。
Orrery:天文時計、太陽の運行や月の満ち欠けを記した時計。
        十五世紀頃には、為政者が技術力や政治力を誇示する目的で、
        都市の中心に装飾的な時計塔を建築するのが流行った。
        時計に合わせて自動仕掛けのカラクリ人形が動く。

>死神の像
>鐘打ち鳴らし

死神:死の時を告げる神。

>雄鶏羽ばたき 窓がひらくと
>十二の使徒が まるで人形

雄鶏:夜明けの時を告げる鳥。
十二の使徒:キリストの直弟子の十二人。

>黄道わたしの十二宮 ゾディアック

十二宮:天体による一年時計。
zodiac:横道十二宮。
マニリウスの占星術。
獣帯    神々            人間の部位
白羊宮  ミネルヴァ      頭部
金牛宮  ウェヌス        脛部
双子宮  アポローン      腕
巨蟹宮  メルクリウス    胸
獅子宮  ユーピテル      腹部
処女宮  ケレース        腰
天秤宮  ウルカーヌス    下腹部
天蝎宮  マールス        性器
人馬宮  ヴィアーナ      腿
磨羯宮  ヴェスタ        膝
宝瓶宮  ユーノー        脚
双魚宮  ネプトゥーヌス  足先

>内臓景観 理想都市

内臓景観:内臓が建造物になぞらえられている。
理想都市:神の造形物たる人間の内臓には、無駄がない。

>地球の眼球 運動標本
>血的な石臓 動力星座

地球の眼球~:天体が人体になぞらえられている。

>未完の胎児 死の秘密

死の秘密:やがて完成し、そして死ぬ。すなわち時の流れが前提。

>人工肉体 グロッタ 迷路 幻想建築 大理石
>人工時計 重鎮 発条 くるくる廻る 個の時間

建造物を人工肉体として、体内の建造物について考えている。
grotta:洞窟、主にマニエリスムの庭や森に造られた人工洞窟で、冥界を暗喩。
廻る:人間の造った時計の針は一箇所で回りつづけ、個の時間から脱出できない。

>肉体都市と時計の神秘

肉体都市:臓器からできる人間の体を、建物からできる都市になぞらえている。
時計の神秘:正確無比に動く時計=肉体は神秘そのもの。

>幾何学法則コチコチ建築

幾何学法則:建物は幾何学を用いて建築されている。

>単調 永遠 現在 悠久

単調~:時は単調に、しかし確実に進んでいく。

>万象真実 千篇一律 千変万化

万象真実 千篇一律 千変万化:神の造りし肉体は、すべてが真である。
        すべては同じ「臓器」でありながら、いかなるようにも変化する。

> わたし化ける 人体都市
> わたし化けろ 欠刻時計

わたしは時を刻まない時計を望み、滅びを避けたいと願っている。

>都市時計発見
>都市時計理解
>都市時計消滅

体内時計を発見し、それが限りある命を意味していることを理解し、
やがては消滅する運命にある。

私的解釈:人間も都市も造形物であり、機械的存在である。

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>E-30 ミッシング・リンク

ミッシング・リンク:連なる変化のうち、見つからない部分。
        進化論でよく用いられる用語で、例えばキリンは最初首が短かく、
        進化の過程で長くなった。しかし、その課程、すなわち
        首の長さが中程度のキリンの化石は見つかっていない。
        この歌では、輪廻転生の「死んでから転生するまで」がそれにあたる。

>生れたくなくても 生れてしまう

生れてしまう:死が避けられないように、生きることも避けられない。

私的解釈:輪廻転生をうたった歌。

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>アストラガルス地球双六

Astragalus ([解剖]anklebone):動物のかかとの骨で作られたサイコロ。
        古代ギリシャやローマで使われていた。
        サイコロは天一地六ともいい、
        一が天、六が地、二から五が東西南北を表す。

>地球双六 船、足、車 聖なる休息サイコロ流転

流転:仏教で、迷いの生死を続け六道の間を生まれ変わること。輪廻。
    限りなく移り変わること。

>地球双六 海、陸、山河 聖なるふりだしサイコロ輪廻

輪廻:「ふりだしに戻る」はつまり輪廻転生。

>ダニエル書、黙示 永劫書、回帰

Book of Daniel:バビロン王が自分の見た夢をダニエルに解釈させたユダヤ書。
        神への信仰を行えば、災禍が起っても再び王国は栄えると言明。
永劫書:The Book of Eternity
永劫回帰:ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』より。
        今まで生きた生をそっくりそのまま無限に繰り返すこと。
        仏教の輪廻転生では、修行の為にこの世に生まれ、
        修行の為に何度も生を経験する。

>「我は我のために生かず、生かず 世界のために我れは生く、生く」

世界のために:双六の駒は双六盤があって始めて駒として成立する。
        すなわち世界あっての私。

>淫蕩、虐殺サイコロ晦冥

淫蕩:酒色に心を奪われて生活が乱れている様。
晦冥:空が真っ暗になる様。

>エクピロシスの炎

ekpirosis:キリスト教における、千年王国に繋がる世界炎上。
        混沌→楽園→洪水→現世→*世界炎上*→千年王国→恒星

>地球命数 古文書予言 万象エレメント 自然の啓示

命数:命の長さ、自然の成り行き。

>わたしソフィア

sophia:知識 [ギリシア語]
        初めて子を生んだ万物の母。 (『イエス・キリストの知恵』より)

私的解釈:人間が居て世界があるのではなく、世界があるので人間がある。

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>歴史望楼「文字砂漠」

望楼:物見やぐら。

>白薔薇 赤薔薇 象徴 特徴 処女 殉教徒の書物 すなわち文字

薔薇:人を魅了する華やかさと人を拒む刺を併せ持つ二面性から様々な暗喩に使われる。
        西洋においては輪廻の象徴で、東洋における蓮の葉と同様の意味を持つ。
        それは車輪であり運命の輪であり、再生を意味する。
        キリスト教的な自己犠牲神、償いの愛の象徴の意も同時に発生。
        錬金術などの秘技・秘術においても重要で、錬金の材料として使う場合は、
        赤薔薇か白薔薇のどちらかではなく両方一緒に使う方が高度な術が行える。
象徴 特徴:文字により明確化されるもの。

>複雑巧緻な象徴 特徴 単純 純潔 十字架 すなわち文字
>あゝ永久百科 架空の書物「フィシオグロス」

Physiogolous:2世紀前半、アレクサンドリアで完成したとされる自然科学書。
        怪物に道徳的寓意を与えることで、キリスト教に取り込んだ。

>我、非現実 跳梁跋扈 巣造り燃えて 死してなお復活 文字

跳梁跋扈:好ましくない者がわがもの顔にのさばりはびこること。

>異端児 異郷 奇跡の創造 無意味 非意味 きわめて神秘 文字

奇跡の創造:奇蹟も人間に理解できないだけで、結局はこの世の法則に則している。
        存在である文字を組み合わせることにより神秘なる言葉が生まれる。

>あゝ不可思議物語 ソリヌス
>プリニウス「博物誌」

不可思議物語:プリニウス『博物誌』を抜粋した『奇異事物集成』(世界の奇話)。
        6世紀頃に増補され『博物誌』として再刊行された。
ソリヌス:Caius Julius Solinus (3C)
プリニウス:Gaius Plinius Secundus、ローマ帝国の役人。
博物誌:古代世界の百科事典、博物学が中心。

>伝説 奇譚 神話 説話 幻想 空想 俗学 すなわち文字

伝説~:文字により伝わるもの。

>淫夢女精 男性夢魔 XX形式 XY変異 文字

淫夢女精:睡眠中の男を襲い悪魔の子を産む精。
夢魔:眠っている女性を犯す悪魔。
XX形式:女性の遺伝子形式。
XY変異:男性の遺伝子形式。

>あゝフォヴェル物語 ヴァンサン「歴史の鏡」

Roman de Fauvel:国王、聖職者、裕福な庶民などを登場させ、
        当時の道徳を風刺した楽曲。
ヴァンサン:Vincent de Beauvais (1190-1264)
歴史の鏡:旧約から新約を経て天国へと至る。
        人々の巡礼を描いた図画集『大いなる鏡』。

>あゝホメロス「オデュッセイア」
>マンディヴィル反自然の物語

ホメロス:Homeros (BC9)、ギリシア最古最大の叙事詩人。
オデュッセイア:ギリシア最古の大英雄叙事詩、欧文学の源泉と仰がれる。
        トロイア戦争終結後の英雄オデュッセウスが、
        帰途で嵐に襲われて漂流、10年にわたる冒険が始まる。
マンディヴィル:John Mandeville [英・16C社会学者]
        東方旅行記 (仏語)、前半は聖地への旅行案内書。
        後半は聖地を越えてさらにインドや中国等々の「奇怪な旅行案内」。
        「異形の人々」「異様な風習」が登場。

私的解釈:「言葉」とは物事を性格付け、世界を性格付ける神秘なるものである。

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>プチ万象の生命孤独史

>レトルトの底に小さな存在

レトルト:蒸留用・乾留用実験器具。
        錬金術の時代より、閉鎖空間の内密性には不思議な力が宿るとされた。
        蒸留の反復による濃密物質の生成を子宮の模倣に見立てた。

>クシュポデュメー、ドラゴンの子供

クシュポデュメー:スコットランド王チャールズⅣ世が飼っていたとされる竜。
        双頭で4本の腕を持つ。ライン河の生まれらしい。

>隔世遺伝の自然魔法

隔世遺伝:遺伝子のなすいたずら。
        人間の遺伝は2つの遺伝子から決定される。
        この遺伝子2つともにある特性αが存在する場合にのみ発現する性質Aを考える。
        性質Aが発現している男性の遺伝子にはαが2つ存在する。
        一方、女性の遺伝子がαを持ってない場合、
        その子には片方の遺伝子にしかαが存在せず、性質Aは発言しない。
        その人物がαを一つだけ持つ人間と子供を作った場合、
        遺伝子に2つのαを持つ可能性があり、この場合性質Aが発現する。
        つまり祖父には発言し、父親には発言していない性質Aが、子供に発現する可能性がある。
        遺伝子の存在を知らなければ、魔法かのような存在。

>「わたしはここにいる、微々がゆえにわたしはここにいる」

わたしはここにいる:人間を分解すると、生命の宿らない微粒子となる。
        しかしその微粒子が集合して生命を成している。

>有史以前の運命附録

運命附録:微粒子は生命が誕生する前から存在した。

>ミスティフィカシオンの子供

mystification:神秘化、人を煙に巻くこと。
        素朴(ナイーヴ)な人間などを煙にまいて楽しむこと。
        慈悲心や愛情を装いながら、他人から精神的に搾取すること。

>生涯誕生くりかえす

誕生くりかえす:一つの個体が死に、その個体を成していた
        微粒子は、また別の個体となる。

>趣好と 奇癖と 変種と 狂奔と

奇癖:普通と変わった、妙なくせ。
変種:同種ではあるが、ほかのものと違っているもの。
狂奔[きょうほん]:狂ったように走りまわること。
        ある目的のために熱心に奔走すること。

>無知識 無道徳 無感情 無教養

無知識:遺伝子は知恵も善悪も持たない。

>洞窟・ルドルフ・ラビリントス 純粋思考の領域で
>洞窟・ルドルフ・ラビリントス 詩的創造の領域で
>洞窟・ルドルフ・ラビリントス 不的実験の領域で
>洞窟・ルドルフ・ラビリントス 心理沈黙の領域で

Rudolph II:16世紀プラハ、ヨーロッパ美術の保護者(パトロン)にして蒐集家。
        錬金術にも興味を持ち、周囲に錬金術師を集めた。
        彼にとっての蒐集の意味とは、世界の、そして自然の掌握であった。
Rabyrinthos:迷宮。ギリシア神話にてミノタウロスを閉じこめるために作られた。

>フラジオレットの音色にまたがり、溶けて空気になりながら

flageolet:ハーモニー。意図する音程に軽く別の音を重ねる手法。

>ソリチュード イエス
>孤独 こどく こどく こどく......

solitude:孤独。

私的解釈:人間の本質は内部の微細な存在である。
        それらは決して交わることはない。

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>世界露壇の揺篭で -イン・ザ・ハンズ・オブ・ザ・ワールド-

露壇:テラス。

>天命いまだ姿見せず

天命:変えられない運命、天寿。

>あなたとわたしはすでに不在[いない]のすべて なのに息づく時の流れに

なのに息づく:わたしが居ようが居まいが世界は存在する。

>なぜ宿命の誕生、放蕩 なぜ運命の死線人生

放蕩:酒色にふけって品行がおさまらない様子。
死線:それを越えると殺される線。(広義)生死の境い目。

>なぜ運命の時間砂漠

時間砂漠:時間とは何も生まない砂漠のようなもの。

>運動、流動すなわち無動 なのに息づく時の流れに

すなわち無動:ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

私的解釈:人間の感覚には限界があり、
        世界の真理が分からぬまま生きていかなければならない。

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>水滴すなわち万有始源

>ドン・キ・ディジー・ダンダン

>見えない時間の迷路 在らざるも様々の未来

時間の迷路:未来は予見できず、多くの可能性を持つ。

>時間を意味する言葉に 謎の謎解く「薔薇の園」

謎:時間が存在して初めて知識というモノが生まれる。

>無知または忘却せよと空寂響の意味が囁く
>無意味な不死に逃れるな、真実飲んで知恵に酔え

空寂:人の気配がなく物寂しい様。
        執着・欲望などの煩悩を消し去った悟りの境地。
無意味な不死:終わりがあるからこそ、知恵に興味がわく。

>時間はいつも止まってる 超然得れば万物の
>鍵なる言葉を知るという 網の目時間は止まっている

時間はいつも止まってる:時間は「現在」しか存在せず、止まってるといえる。
超然:世俗的な物事にこだわらないさま。

>冷たい砂漠の雨滴れにも、恍惚感に身をさらせ

恍惚:心を奪われ我を忘れる様子。

>鍾乳洞に響き渡る おびただしいその音響が

音響:鍾乳洞は一滴一滴が積み重なって、大きな結晶を作る。
        人間も細部が積み重なって校正されている。

>水滴すなわち万有始源

水滴:自然哲学の開祖タレスはすべての素(アルケー)は水であるとした。

私的解釈:生きるとは知恵を持つこと。知恵を持つとは迷うこと。

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>海月[かいげつ]藍に死す

海月:くらげ。
        地球上の生物の中でもっともエネルギー効率の高い推進器官を備えた動物。

>遠近 死出の旅路

死出の旅路:生きるとは死に近づくこと。

>わたし風息になる わたし息風になる わたし光蒸気になる

風息:風の向きや速さが乱れるさま。
息風:人は感情によって吐く息つまり風が違う、という仏教の教え。
        「我等が息風とは吐く処の言語なり」


>酔生夢死とはいえ迫りくる死の影に

酔生夢死:何も価値のある事をせず、ただ生きていたというだけの一生を終える様。

>ノスタルジックな自然瞑想 形而上学的感覚

ノスタルジック:懐旧の念を起こさせるさま。この場合は前世。

>森羅万象 万有観照

観照:一切の感情を殺して冷静に、人生や自然や美などの抽象的な物事について、
    それはどういうものかと根本的に思索すること。

>深夜海月パノラマ・カーニヴァル

パノラマ:半円形の壁に歴史的物語を何枚もの絵に描いたもの。
カーニヴァル:謝肉祭。

>波月、夜月、夢月、時月 風月、息月、酔月、冥月
>満月、半月、赤月、青月 失月、影月、無月、不月
>あゝ三日月 月蝕

月:月は様々な形に姿を変えることから、復活、不死の象徴とされた。

>つねに遠のいてゆく

つねに遠のいてゆく:月は常に地球に「落ちて」いる。

>狂想なほどに純粋な禁断の月扉 その正面に立ち「今、開扉かん!」

狂想:非現実的で、とりとめのない考え。
        月(Lunar)はLunatic(狂気)につながる。

>「月する 月にする 月は海の上に昇った
> 波するもののうしろから上方にそれは月した」

Jorge Luis Borges (ホルへ・ボルヘス) の小説より。
「円環の廃墟」創造の夢が円環のうちに閉じ、美しい幻想として結晶した一編。
        火事で廃墟となった円形の神殿で眠り、
        一人の人間を夢見ようとする主人公。
        やがて心臓から少しずつ一人の人間を完成させた。
        しかし、主人公はその人間が火の上を歩いても火傷しないことから、
        自分が幻であることに気づくのではないかと怖れる。
        そして自らもまた夢見られた幻であることを知る。

>メメントモリ・メントモリ・ントモリ・トモリ・モリ・リ

Memento Mori:「死を想え」生が生としてある意味の再認識。
        黒死病大流行時、
        キリスト教徒としての「死に方」の手引きを書いた小冊子のタイトル。
        Ars Moriendi (アルス・モリエンディ、往生術/死亡術) が、
        印刷術の発明と相俟ってベストセラーに。
        その中の言葉がイタリアでの知識人達の座右の銘に。

>しない存在
>始ない存在
>私ない存在
>思ない存在
>至ない存在
>死ない存在

Existance without action
Existance without beginning
Existance without self
Existance without thought
Existance without climax
Existance without death

私的解釈:人間が生き、死んでいく様を、月の満ち欠けに重ねた歌。

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>絶対媚惑「タ・エロティカ」

媚惑:人の心をひきつけ,まよわせること。
erotica:性愛。

>アエリア ラエリア クリスピス オルギア・錬金

Aelia/Laelia/Crispis:16th-17thの錬金術師。
Orgia:秘密の礼拝、ギリシア語「orgia」に由来。

>月 太陽 光 影 デュアリスム存在 リビドー プラズマ

デュアリスム:Dualism、二重性、善悪二元論、身心二元論。
リビドー:一者への合一の手段。
        トランス状態に陥った無感覚が完全存在との合一の手段であり、
        全ての苦しみから解き放たれる瞬間である。
プラズマ:電子,イオン,ラジカル,光子の集団で、
        多様な活性エネルギーを内包している現代の錬金術。
        (プラズマプロセシング)

>幾何学 生殖 アルペド 神秘 リビドー エニグマ

albedo:白化。錬金術における物質変化の三要素の一つ。
        アルベドalbedo→黒化(ニグレドnigredo)→赤化(ルベドrubedo)→賢者の石
enigma:闇そのもの。魔法を学ぶ上で必ず出会うことになる生物。

>創世相姦 万物媾合 すべてがひとつの絶対欲望 ソルティオ

相姦:禁じられている男女の肉体関係。
        旧約聖書においてのアダムとエバ。
媾合:性交。
絶対欲望:人間は絶対的存在から男女にわかれた存在であり、
        性交はまたひとつに戻りたいと願う心から行われる。
solutio[ラ]:溶解する、解決する。

>エロス 媚を競うタナトス原理 リビドー ナトゥラ

Thanatos:ギリシア神。死の意。
タナトス原理:破壊への衝動。
natura:自然。

>聖なる本能 天地開闢以前 リビドー アートマン

開闢:万物の生成の初期、混沌未分のものから天と地とが分かれ出て来たこと。
atman(我):自我の意、インド哲学の重要な概念の一つ。
        原義:breath, soul, vital principle
        人間存在の根本原理。
        the universal spirit、これが別れて男女となる。
        非人格的な世界の根本原理の名称であるブラフマン(梵)と
        対になる人格的原理。
        brahman(梵):"神から与えられたもの"、宇宙の根本原理、万物の本体。

>媚ゆえ焦がれる アプロディテー

Aprodite:愛と美の女神、ガイアの娘ディオーネとゼウスとの子。

私的解釈:人間のハレの状態は、本能状態であるがうえ、絶対者に近い。

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>デフォルメ・デジャヴュ

deformer:主観を通して対象を捉えなおし表現すること。
d j vu:既視感。
    実際は一度も体験したことがないのに、
    すでにどこかで体験したことのように感じること。

>混沌 双ゝ 象徴の種 原初 源流 光塵の種 空なる物質

原初:この世の最初は混沌とし、男女も交わった絶対なる一者の状態である。
光塵:和光同塵。
        自分の才能や学徳を隠し、俗世間に交じって目立たないように生活すること。
        仏教では仏・菩薩が知徳の光を隠して仮の姿となって、衆生を救うこと。 

>麗華 幻想 透明の種 法則なしの 細胞の種

法則なし:世は変化し続ける。

>偶然 融合 膨張の種 変形自在、生命

偶然 融合:人間は偶然細胞が集まって出来た存在である。
膨張の種:絶対なる一者から分離した状態。
変形自在、生命:人間は姿を変えて存在し続ける。

>「どこでもわたし在り、そこにもわたしいる、なんにでもわたし成り」
>「はじめにわたし在り、いまでもわたしいる、あなたにもわたし成り」

在り:神に作られし「わたし」は不偏の存在である。

>沈殿 飛翔 創造の種 衝動 破徳 増殖の種 非力な仮説

非力:人間は偶然できた存在、不安定な存在である。

>卵割 複性 混合の種 極微 滴虫 現象の種

卵割:受精卵の発生初期に起こる一連の細胞分裂。
滴虫:有性生殖によって生じる幼生。←→蠕虫型幼生。

>分離 接合 独立の種 知らぬ記憶、歴史

接合:細胞の融合や核の交換等、有性生殖の方法。

>あゝ、タブーなし

タブー:神聖なものとして禁制されること。禁忌。

>荒唐 妄誕 すなわち無稽の
>息づくだけの姿なし なし なし なし なし なし なし なし なし

荒唐:勝手気ままな思いつき。
妄誕:話などがでたらめな様子。
無稽:現実には全く有り得ないこと。
姿なし:人間は「人間である」と認識されているから
    存在していると思われているに過ぎない。


>ユルカナ ユノトス ヨヤメナ メヤヨス トノユナ カルメカルメ
>ユルカナ ユノトス ヨヤメナ メヤヨス トノユナ カルメカルメ
>ユルカナ ユノトス ヨヤメナ メヤヨス トノユナ カルメカルメ
>ユルカナ ユノトス ヨヤメナ メヤヨス トノユナ カルメカルメ
>カルメ カルメ カルメ カルメ

私的解釈:生命存在は不偏であり、姿を変えて存在し続ける。

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>追想[レミニセンス]の変身譜[メタモルフォーシス] 《荒野より》

追想[Reminiscence]:過ぎ去った日のことを思い出してしのぶこと。
変身譜[Metamorphosis]:Ovid(オヴィディウス)[BC1-AD1]
        ギリシア・ローマの神話・伝説の全書。
荒野より:三島由紀夫『荒野より』
        作家の家に押し入った若者が「本当の事」を愁願する。
        作家はこれに答えようと対峙するが、
        何の為の行為か当事者にもわからない。
        作家の心は広大で、それは街の地図に喩えられるが、
        その街の外側には地図にも載せられていない「ノーマンズランド」があり、
        そこは岩だらけの荒地で、動物も植物もない。作家はそこから来たのか。

>わたしの名の蔭に在る正しき名を知れと

正しき名:「わたし」が真に知感じできるものは「わたし」のみである。
        よって、「わたし」を知るためには、「わたし」を見つめるしかない。

>道はある果てなくも短くも だが、どこにも道標はない

道:人が生きればそれすなわち道である。
        しかし、それが「正しい」のかは分からない。

>ただ前進のみが知るためだ

前進:過去を振り返っても既に知感したもの、
        すなわち「既に知っているもの」しか分からない。

私的解釈:自分が何者なのかを知るには、ただ進むしかない。

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>シュラ-肉体星座αψζ星雲-

修羅:阿修羅の略、インド系神話での悪魔一般。
        狭義では仏教への反逆者で、後に仏教に帰依した一族。
        阿修羅王は美少年で描かれることも多いが、両性具有とされることもある。
肉体星座:人体星座に同じ。
αψζ:星の名前につきもの。

>シュラ 今、燃えん手の足の鼓動に

修羅を燃やす:恨みや憎悪を激しく感じる、の意。

>シュラ 今、熱焼[あつ]く終焉[おわり]知らぬままに

終焉知らぬ:神の造りしこの世は永遠である。

>現身[うつしみ]脱ぎ 荒闇[こうやみ]に吹き 虚空のかぎり

現身:現在の姿、実体。
虚空:現身の反対。

>シュラ 今、沈黙 地動 天・人道凝視[みつ]めつつ

天道:星が動く道筋。
人道:人間が存在した形跡。

>シュラ 今、ありし宇宙[てん]の果てありしなら

今ありし:時制が現在なので「し」は強調、今まさに存在している。

>シュラ 蛍のように蒼白く透けて 臨終[いまわ]のきわに立つ

蛍:蛍の光は熱くない、同様に修羅も燃えずに光を放っている。
青白い:蛍の光を白色矮星になぞらえる。
        白色矮星には最大質量が存在し、それをチャンドラセカールの限界という。
        星は星間ガス→恒星→白色矮星と進化する。
透ける:存在と非存在の中間の姿。

>シュラ 今、生かん嵐・熱風[シロッコ] 捲くなか

シロッコ:サハラ砂漠に発し、アフリカ北岸から地中海周辺に吹く熱風。

>シュラ 幻星[まぼろし]あてて、幾世紀をつつみ

あてて:目当てにして、目指して、あるいは期待して。

>シュラ 今、チャンドラセカールの限界

チャンドラセカール:インドのランプ=月を持つ門番。
チャンドラセカールの限界:白色矮星の最大質量。

私的解釈:宇宙構造を人間に例えた歌。

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>われら自ら棄てた堕天使なり

>人の子と思うゆえこそ 人の子の名を名のり

名を名のる:己を認識し、世界にも認識させる行為。

>謎撒く知恵にわれはわれを忘れてきた

謎撒く知恵:知恵を持つことはすなわち迷うこと。
        迷うことはすなわち生きる目的を持つこと。

>天より墜ちし黎明の子

黎明の子:堕天使ルシフェル。神を裏切り魔王サタンとなる。
        ルシフェルは「暁の子」の意、暁は夜明けの事。
        明けの明星、宵の明星、すなわち金星に例えられる。

>セラピム ケルビム トロネ 主権 力 能力

Seraphim:熾天使。最も神に近い階級の天子、ヘビの化身。
Cherubim:智天使。記録係、エデンの園に至る道を神と共に封鎖。
Thrones:座天使。多くの目を持つもの、神の玉座を運ぶ。
天使の階級で1級~3級

>スコラの時代の暗闇に

スコラ:キリスト神学を「科学的に」論理づけようとする試み。
暗闇:スコラ学はキリスト教の教えを絶対とし、疑うことをしなかった。
        そのため科学的には思考が止まっており、
        この時代は「科学史の暗黒時代」と呼ばれるようになる。

>響き渡った天使的博士ドクトル・アンゲリクス

Doctor Angelics:仮面で顔を覆った偽装天使。
        過去に自分の犯した罪を激しく悔いているが、それが何かは語ろうとしない。

>《トマス・アクィナスの書》も今や不在

Thomas Aquinas:13Cスコラ哲学者。
        神の被創造物たる自然の認識を通して神の認識に至るとし、
        アリストテレス哲学を持ち込んで教義を体系化。スコラ哲学を大成した。
        天使についての詳細な記述をし、天使博士とも呼ばれた。
書:『神学大全』
        「哲学は神学の下女」
        世界はイエスを頂点として段階的秩序をなす、
        と信仰(神学)と理性(哲学)をはっきり区別した上で調和を図った。
        天使を形相を持たない純粋な存在だとした。

>唸り叫んだ熾天使博士ドクトル・セラピクス

Doctor Seraphics:熾天使博士 Seraphim Doctor。

>《ボナヴェントゥラの天使の論》も寓々々……

Bonaventura:13C神学者。
        外部世界を知覚する肉の眼、知識を得る理知の眼、
        超越的リアリティの知識へと上昇するところの黙想の眼の3つの眼を想定。
        アリストテレス哲学(≒唯名論)は学問論のみで知恵論がない、
        プラトン哲学(≒概念実在論)は知恵論のみで学問論が無い。
        アウグスティヌス主義はその双方を備えている、とした。

>聖書 イザヤ エゼキエル モーゼ ソロモン 旧約時代

旧約聖書
Isaiah :ユダヤ人が捕囚になることを預言した書。
Ezekiel:地球最終戦争の項。
Moses  :出エジプト記。
Solomon:列王記の中のソロモン王を巡る数々のエピソード。

>「われはわたしアッシリア
> サルゴン王宮 カナケリブ王宮の彫像 しかるに標識トーテムポール
> 神秘不思議聖誓体 しかるにわれはわたしだてんし」

Assyria:古代オリエント最初の世界帝国を築き上げた帝国。
Sargon II:アッシリア帝国王、反乱の火の手が上がっていた頃に王位につく。
Sennacherib:サルゴン2世の子。
        中東一帯を支配していたアッシリアを撃破、ユダの一族も支配下に。
        だがアッシリアがエルサレム陥落の為に大規模な兵の派遣を行う。
        悲嘆にくれる王に予言者イザヤが祈りが天に通じた事を報告、
        一人の天使が現れ十八万五千人の兵士を殺してアッシリア軍を壊滅。
        (旧約聖書)

>四つの翼 四つの飛翔 マンドルラ守護なる君
>四つの頭は 中心マタイ(人間) 右のヨハネ(鷲)
>左のマルコ(獅子) 下のルカ(牡牛)
>さらに、われは四つの車輪もつ

Mandorla:アーモンドの一種。光輪を表す。
エゼキエル書の予言一章。
        Matthias (Matthew) キリストが人間となったこと。
        Iohannes (John)    キリストが全てを支配する王であること。
        Marco    (Mark)    キリストが献げ物をする祭司であること。
        Luca     (Luke)    キリストが全てを見通す方であること。
バビロンに囚われの身となっているエゼキエルが、
        災厄が悪しき者にも従順な者にも同様にふりかかることを
        何故かといぶかしがっていると、
        天が開いて4つの顔と4つの翼を持つ4つの生き物の姿を見る。
        それらは一緒になって輪をつくり、向きを変えずどちらの方向へも進んだ。
ヨハネの黙示録第四章
        天の玉座の中央とその周りに四つの生き物がいた。
        第一の生き物はライオンのようであり、
        第二の生き物は若い雄牛のようで、
        第三の生き物は人間のような顔を持ち、
        第四の生き物は空を飛ぶ鷲のようであった。

>生まれ空ゆえ望郷なし

望郷なし:空=天は人間に認識できない。

私的解釈:人間の起源を天使に求めた歌。

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>甦れ!無窮の歴史「中世」よ

無窮:朽ち果てることがなく、無限で永遠に続くこと。

>存在創造 不思議な快楽 歯車装置

存在創造:中世科学=錬金術の最大の目的は「無から有を作り出すこと」。

>聖なるデカダン 未完の歴史 硝壜装置

デカダン:頽廃派。質実剛健の気風が失われて、柔弱・不健全になること。
硝壜装置:ガラス瓶、化学・錬金術の実験器具。

>生命造出 錬金道士 気体装置

道士:道を極めた者。

>憑かれた人物 電気[エレキ]魔術師 稲妻装置

電気/稲妻:人間の生命の素は電気であると考えられていた。
        そして現代科学でも、思考は電位によるものであるとされる。

>秘めたる悪魔の鼓動に時をうち 百弦琴の魔曲句をなぜに奏でるか

百弦琴:インド古典楽器サントゥールSantur、聞く人を幽玄の世界へと誘う。

>私のすべて「中世」にして スコラ抽象
>私のすべて「中世」にして 麻痺する思想
>私のすべて「中世」にして 不吉予言書
>私のすべて「中世」にして 精神魔法陣

麻痺する思想:あらゆる事象の原因を神に求め、
        真理をただ一つとみなした為、思考はそこで停止してしまった。
不吉予言書:黙示録。

>金属胎児 聖性[せい]なる実験

金属胎児:スコラ哲学の一つの目標である錬金術。
聖性なる実験:もう一つの目標であるホムンクルス(人造人間)。

>未来のイヴ
>心息[き]の蒸溜器 腐肉体[ふはい]生動 胚貯蔵壜

未来のイヴ:1886 Villiers de L'isle『未来のイヴ』
        電気によって生命を甦らせた女性の話。
心息の蒸溜器/胚貯蔵壜:人工臓器。

>私のすべて「中世」にして 狂気と愚昧
>私のすべて「中世」にして 占星医学
>私のすべて「中世」にして 囈言[うわごと]死術
>私のすべて「中世」にして 光学解毒剤

愚昧:おろかで正しくないさま。
占星医学:神の意志の現れである星の動きを知ることによって人体を治す学。
囈言:病の床で無意識に発する言葉。
        人の意思でないのなら神の意志かもしれない。
死術:手術は人を死に至らしめることもある。
光学解毒剤:光による化学反応を利用した解毒剤、この場合の光は神の力。

>驚愕実験 苦痛実験 残酷実験 悶絶実験 硝煙実験 眼球実験 刻搾実験 惨絶実験

硝煙:火薬が発火する時に出る煙。
惨絶:きわめて悲惨なさま。

中世には様々な実験が行われた。

>癇癪歴史 白眼歴史 癲癇歴史 痙攣歴史 瘋癲歴史 欝血歴史 歪肉歴史 臓餐歴史

癇癪:怒りたくなる気持を抑えている状態。
痙攣:筋肉が病的に収縮すること。
瘋癲:精神状態が不安定な症状。
欝血:血液が滞っている状態。
臓餐:内臓や臓物を食すること。

中世を悲惨な時代と捉えている。

私的解釈:中世のスコラ哲学は、哲学から自然学まで全てを飲み込み
        体系化されていた、完全なる思想であった。

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主要参考文献:
『少女革命ウテナ 決闘のうた解説書 天の巻 第4版』1997,1998 W-SCORE & SUKIYAKI SAKURA
『少女革命ウテナ 決闘のうた解説書 地の巻 第2版』1998 W-SCORE & SUKIYAKI SAKURA
『少女革命ウテナ 決闘のうた解説書 無用の巻 第2版』1998 W-SCORE Reyden Otokichi & SUKIYAKI SAKURA
『少女革命ウテナ アンドゥレセンス黙示録 解説書』1999 W-SCORE & SUKIYAKI, SAKURA
『新明解国語辞典 第4版』1989 金田一京助/三省堂
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