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15世紀のハングル文献 解題 |
≪訓民正音≫[훈민정음] 1446年(世宗28)
【解例本】
この本は解例があることから「解例本」とよばれる.1940年安東郡臥龍面周下洞で発見され,現在は澗松文庫所蔵(故全鎣弼氏旧蔵).発見当時初めの2張が落張であったが,≪世宗實
録≫の記事に
依拠し補写された.漢字音とその傍点の表記が≪東國正韻≫に違背している.特に母音で終わる場合,終声位置に“ㅇ”を置かず,“ㄹ”末音を“ㄷ”末音で処理した点が大きく異なる.句読点と권성を使用した点も特異である.ハングル文献資料にこの2種を使用したのは世宗当代の文献に限られる.
全33張1冊
木版本
板匡 縦16.8cm×横23.3cm
例義:7行11字.
解例,解例序:8行13字(解例序は1文字下げて12字)
内容
御製序:訓民正音の創製目的
例義篇:新文字の音価,運用法.終声,並書,脣軽音,傍点などの規定.
解例篇・・・(集賢殿の学者による)
制字解:制字原理,制字基準,子音体系,母音体系,音相
初声解:初声とは何かを再び説明
中声解:中声とは何かを再び説明
終声解:終声の本質,八終声法,四声などを説明
合字解:初・中・終声文字を合わせて表記する例(25単語), 声調
用字例:初・中・終声別の単語の表記例(94単語)
解例序:新文字の創製理由,創製者,文字の優秀性,本の編纂者(鄭麟趾による)
※執筆に参加した集賢殿の学者:鄭麟趾,申叔舟,成三問,崔恒,朴彭年,姜希顔,李塏,
李善老
【諺解本】
≪月印釋譜≫の巻頭に載り伝わる.原刊本の例義を翻訳したもの.歯頭音字(ᅎᅔᅏᄼᄽ)と正歯音字(ᅐᅕᅑᄾᄿ)の規定が追加され,制字解で中国語の歯音を記録する時に使用するという規定が足された.内題である「世宗御製訓民正音」がある,張1に若干の変更あり.
原刊本
西江大図書館 所蔵本
本の大きさ:縦32.5cm×横22.5cm
四周双辺,有界,7行16字,註は双行16字
内題:世宗御製訓民正音
版心題:正音
巻末題:訓民正音
半葉匡郭:縦21.7cm×横17.5cm
版口:大黒口(上下)
魚尾:上下内向黒魚尾
육당文庫(高麗大 アジア問題研究所[中島注:中央 図書館?]) 所蔵本
単行本.故朴勝彬氏旧蔵本.張1が補写され,張2以下も部分的に補 写された.
【異 本】
解例本
世宗王朝実録※1(太白山本) ≪訓民正音≫
政府記錄保存所釜山支所所 蔵本.第133巻36張裏-37張裏.
世宗王朝実録(정족산本) ≪訓民正音≫
ソウル大学校奎章閣所蔵.第113巻38張裏-40張表.
排字礼部韻略※2本 ≪訓民正音≫
世宗大王記念館所蔵.
列聖御製※3本 ≪訓民正音≫
박종국氏所 蔵.
경세訓民正音図説本 ≪訓民正音≫
延世大学校人文科学研究所影印本
※1≪世宗王朝實録≫:1473年/成宗4.活字本(乙亥字).元来の 名称は≪世宗莊憲大王實録≫.163巻154冊.
※2≪排字禮部韻略≫: 1679年(肅宗5)朴東傅が彫板.
※3≪列聖御製≫:太祖から哲宗まで歴代王の詩文集.一度に作られたのではなく数代にわたり完成された.104巻59冊.
諺解本
≪訓民正音≫
≪月印釋譜≫(1572年/宣祖5)に所収(重刊本).喜方寺覆刻本.世宗大王記念館所 蔵.
≪訓民正音≫
日本宮内庁本.ソウル大学校中央図書館所蔵.
【影 印】
解例本:ハングル学会(1946年)
諺解本:西江大人文科学研究所(1972年)
落張の原刊本とその重刊本:啓明倶楽部(1932年)
その他多数
≪龍飛御天歌≫[용비어천가] 1447年(世宗29)
ハングル創製後の最初の文献.全10巻5冊.韻文資料.朝鮮王朝の建国を詠んだ歌と,その注釈を載せた本.太祖の4代祖である穆祖から太宗まで化家為国の業績を詠んだ125章のハングル歌詞とその
訳詩を本文とし,各章ごとに注解を加え作ったもの.現在初刊本は巻1,2の1冊のみ伝わる.ハングル歌詞はもちろん,漢文の注解にあらわれる固有名詞及び官職名のハングル表記は語彙資料として活用されうる.ハングル歌詞は分綴を部分的に導入し,“ㅊ,ㅌ”などの終
声が使われた点が特徴.句読点も使用されている.
【原刊本】
ソウル大学校図書館가람文庫所 蔵本
巻1,2の1冊.初刷本.内賜本で“宣賜之記”という印記はあるが,内賜記がない.
序第3章一部と本文1張一部が落張.
本の大きさ:縦36cm×横22.4cm
四周 双辺,有界,9行(大小字共に)20字,小字は双行
内題:龍飛御天歌
版心題:龍飛御天歌
半葉匡郭:縦25.4cm×横27.4cm
版口:大黒口
魚尾:上下内向黒魚尾
ソウル大学校奎章閣所蔵本
2帙の複本.ひとつの帙は巻5,6の第3冊がない.後刷本.字の摩滅が激しく,補刻もあり.
高麗大図書館晩松文庫所蔵本
同じ系統の本である巻1,2と巻7,8の2冊.
【編 次】
第1冊
龍飛御天歌序(権踶,鄭麟趾)
龍飛御天歌箋(権踶,鄭麟趾,安止)
巻1:第1章-9章
巻2:第10章-12章
第2冊
巻3:第13章-17章
巻4:第18章-26章
第3冊
巻5:第27章-40章
巻6:第41章-49章
第4冊
巻7:第50章-58章
巻8:第59章-77章
第5冊
巻9:第78章-97章
巻10:第98章-125章
龍飛御天歌跋(崔恒)
【重刊本】
1612年版(光海君4):ソウル大学校奎章閣所蔵
10巻5冊の完帙.“万暦本”ともいう.
太白山本と五台山本の2帙.
原刊本の覆刻であるが,誤刻と改刻が少なくない.
1612年版(光海君4):世宗大王記念事業会所蔵
上記ソウル大 学校奎章閣所蔵と同じ“万暦本”.
巻1,2と巻5,6の2冊.
“宣賜之記”という印記はあるが,内賜記はない.
1659年版(孝宗10):ソウル大学校奎章閣所蔵
10巻5冊の完帙.“順治本”ともいう.
字体が原刊本とまったく異なる.
内賜記と,“宣賜之記印”という印記がある.
誤刻と改刻あり.
1765年版(英祖41):ソウル大学校奎章閣所蔵
“乾隆本”ともいう.
乾隆30年の内賜記と,“宣賜之記印”という印記がある.
1765年版と同じく字体が原刊本とまったく異なる.
順治本の覆刻で,誤刻と改刻もそのまま從い傍点の漏落も甚だしい.
1472年(成宗3):ソウル大学校奎章閣所蔵
筆写本.“実録本”ともいう.
≪世宗實録≫の“악지”(巻136-147)中, 巻140-145に漢詩の一部と正音歌詞が載る.
筆写本のため傍点の間違いと相当の誤写がある.
順治本の覆刻で,誤刻と改刻もそのまま從い傍点の漏落も甚だしい.
その他,≪樂學軌範≫に≪龍飛御天歌≫のハングル歌詞が巻5の6面から7面に収録されている.第1章“海東章”から第16章“逃亡章”までと,第125章“千世章”の17章の歌詞があるが,傍点はなく,表記にもかなりの差異が認められる.詳しくは≪樂學軌範≫の項を 参照.
【影 印】
1612年版を底本として1937〜38年(奎章閣叢書4,5,京城帝国大学法文学部)と1972年(亜細亜文化社)に影印で刊行.≪龍飛御天歌≫のハングル歌詞と漢詩は≪世宗
實録≫の「악보」(巻137〜47)中の刊140〜45にも載っているが,
写本のため誤字が多い.
≪釋譜詳節≫[석보상절] 1447年(世宗29)
世宗の命により首陽大君(後の世祖)が昭憲王后の冥福を祈るため著作した釈迦の一代記.首陽大君の序文によれば,まず釈迦譜を作り,それを諺解したものというが,他の諺解書とは異なり原文がなく,また文
体も諺解文とは異なる. ハングルで表記された最初の散文資料.甲寅字の漢字と共に使われたハングル活字が書誌学研究にも貴重な資料となる.
“釋”は“釈迦牟尼”の略稱で,“譜”は“一代の行蹟記”(家系の記録),“詳節”は“仔詳節録”という意味である.よって,≪釋譜詳節≫とは“釈迦牟尼の家系と一代記を重要なことは詳しく,そうでないものは減らして記録したもの”という意味.
【原刊本】 零本.24巻中6巻が現存.活字本(甲寅字,銅鑄字).
国立中央図書館 所蔵本
巻6, 9, 13, 19.
1935年黄海道長壽山の某寺の古塔が梅雨の雨で崩れて中からあらわれたものを,東国大学校の前身である中央 仏教専門学校教授江田俊雄氏が発見.1938年3月15日現国立図書館に180円で売却し現在に至る.
四周単辺,無界,8行15字,註は小字双行
縦29.7-29.9cm×横20.5cm
半葉匡郭:縦22.0-22.2cm×横15.7-15.9cm
版口:黒口
魚尾:上下内向黒魚尾
版心題:釋譜,巻次張次の表示有
漢字活字:甲寅字銅鑄字,ハングル活字: 正音銅鑄字
紙質:藁精紙[고정지]
東国大学校図書館 所蔵本
巻23, 24
巻23は最初の2張が落張,巻24は最後の1張が落張.
四周単辺,無界,8行15字
縦32.5cm×横20.8cm
半葉匡郭:縦22.2cm×横15.8cm
版口:黒口
魚尾:上下内向 黒魚尾
版心題:釋譜二十三,釋譜二十四,張次表示有
漢字活字:甲寅字銅鑄字,ハングル活字: 正音銅鑄字
【重刊本】
沈載完 教授 所蔵本
巻11 1560年(明宗15)前後.全羅道無量寺で刊行. 木版本.
千柄植教授 所蔵本
巻3
四周単辺,有界,8行15字
縦28.2cm×横19.2cm
半葉匡郭:縦21.6cm×横16.2cm
版口:黒口
魚尾:黒魚尾[中島注:上下内向黒魚尾?]
版心題:釋譜三,その後に張次表示
【底 本】(●は千柄植(1985)參照.○は李丙疇(1972)による[金英培(1972)所 収])
※釋迦譜の張次については金英培(2000:31-32)に言及あり.
巻3:釋迦譜 巻1 釋迦降生釋種種成佛緣譜 第4 釋迦氏譜 法王化相(明法王下降迹)[迹=적]
巻6:釋迦譜 巻1, 2, 3 現生誕靈迹: 第3,集藝歷試迹:第4,出家尋ヘ迹:第5
釋迦譜 巻1 釋迦降生釋種種成佛緣譜 第4
釋迦譜 巻2 釋迦子羅云出家緣記 第13
釋迦譜 巻3 釋迦祇洹精舍緣記 第20 [洹=원]
巻9:藥師瑠璃光如來本願功コ經全譯
巻11:釋迦昇忉利天爲母説法,地 蔵菩薩本願經上下 等
釋迦譜 巻3 優塡王造釋迦栴壇像記 第 23 [栴=전]
釋迦譜 巻3 波斯匿王造釋迦金像記 第24 [斯=사]
巻13:妙法蓮華經 巻1 序品 第1,方便品 第2
巻19:釋迦譜 巻6 隨喜功コ品 第18,法師功コ品 第19,常不輕菩薩品 第20,如來神力品 第21
巻23:
釋迦譜 巻3 阿育王弟出家造釋迦石造記
釋迦譜 巻4 釋迦雙樹輕涅槃記
釋迦譜 巻4 雙巻大般泥洹經
釋迦譜 巻4 釋迦八國分舍利記
釋迦譜 巻4 釋迦天上龍宮舍利寶塔記
巻24:
釋迦譜 巻5 阿育王造八萬四千塔記
釋迦譜 巻5 釋迦獲八萬四千塔宿緣記
釋迦譜 巻5 阿育王息法益壞目因緣經 等
【影 印】
ハングル学会(1961) 巻6, 9, 13, 19
大邱 丘大学(1963) 巻11
金英培(1972),≪注解 釋譜詳節〔第23・24〕≫, ソウル:一潮閣.
大提閣(1973),韓国古典叢書 第1輯
世宗大王記念事業会 巻6, 9, 11, 13, 19
千柄植(1985),≪釋譜詳節 第三 注解≫,ソウル: 亜細亜文化社.
※巻6, 9, 13, 19の影印から原典の校正が削除されているので,影印本の利用には注意が必要. また,影印本1961年のハングル学会のものをはじめとして頁表示が間違っているものがあるので引用時には注意が必要.
≪月印千江之曲≫[월인천강지곡] 1447年(世宗29)
首陽大君が作った≪釋譜詳節≫を見て,世宗が自ら釈迦の功コを称誦して作った本.580余曲からなる.全3巻(上,中,下).≪龍飛御天歌≫の次に古いハングル表記の韻文資料.漢字をハングルの下に夾註で表記したのが
他の文献には見られない特徴.
現在巻上が陳錤洪氏所蔵で傳わり,巻中と巻下の落張が国立中央図書館所蔵の≪釋譜詳節≫(巻6,9)に挿入され伝わる.この本が単独で重刊されたことはないが,≪月印釋譜≫に編入され刊行されたことがある.原刊本と
対照すると,この時≪釋譜詳節≫よりは甚だしくないが,歌詞の修正と,注釈の添加が行われている.
≪龍飛御天歌≫と同じく分綴表記が見られ,終声に“ㅊ,ㅌ,ㅍ”を使用している.
【影 印】
原刊本 巻上 1961年 通文館で原尺影印
≪國語学≫1(1962年) 南廣祐の解題あり
朴炳采(1991),≪論註 月印千江之曲≫,ソウル:世英社.
など多数
≪東國正韻≫[동국정운] 1448年(世宗30)
世宗の命令で申叔舟,成三問,崔恒等が編纂した韻書.全ての収録字を韻により分類し,その中で平上去入の順序で羅列する方式で編纂されている.申叔舟の序文によれば編纂は1447年(世宗29).
この本で規定した漢字音はハングル創製以後全ての文献で漢字音表記に適用されたが,伝承音と相当離れていたため15世紀末からは使用されなくなる.
【原刊本】
建国大学校所蔵本
澗松文庫所蔵本. 巻1・6.零本2冊.内賜本.
【影 印】
ソウル大学校大学院(1958年) 李崇寧の解題あり
建国大学校出版部(1973年)
≪舍利靈應記≫[사리영응기] 1449年(世宗31)
世宗が内仏堂と佛像を造成してすぐに,希求していた舍利の出現祥瑞があることを記録した本.語彙資料としての価値を持つ.活字本(甲寅字).金 守温の記録.本の最後にこの仕事に参与した信眉をはじめとする多くの人の名前が“精勤入場人名”として書かれたが,その中に“韓실구디”,“朴검동”等ハングルで表記された人名が約50あらわれる.
【原刊本】
東国大学校図書館 所蔵本
高麗大学校 亜細亜問題研究所 육당文庫 所蔵本
※この本に関する書誌的事項は次を参照
安秉禧(1977),초기 한글 표기의 고유어 인명에 대하여,≪언어학≫2, ソウル:언어학회.
≪洪武正韻譯訓≫[홍무정운역훈] 1455年(端宗3)
明の韻書である≪洪武正韻≫(1375年/洪武8)にハングルで表音した本.申叔舟等が10余年にわたり編纂.≪洪武正韻≫の
体裁はそのままに,その反切を分類,整理して31声母の字母を各小韻の代表字の前に表示し,また其の字母と代表字の間にその小韻の字音をハングルで表示し,時には代表字の下の反切の次にその俗音(当時の中
国北方音)を表示した.
【原刊本】 16巻8冊.活字本(ハングルは木活字,漢字は?).
高麗大学校図書館 화산文庫 所 蔵本 巻1, 2の1冊がない
高麗大学校図書館 晩松文庫 所蔵本 巻9
延世大学校図書館 所蔵本 巻3, 4の1冊
【影 印】
高麗大学校出版部(1974年) 화산文庫 所 蔵本
≪月印釋譜≫[월인석보] 1459年(世 祖5)
世祖が≪月印千江之曲≫と≪釋譜詳節≫を合編して,1459年(世宗5)に刊行した.合編の方法は≪龍飛御天歌≫に
従い,≪月印千江之曲≫を本文にし,≪釋譜詳節≫を注釈にしたもの.合編においては,調巻と文章に相当な改変を加えた.調巻を見ると,≪釋譜詳節≫巻11と巻19の内容が各々≪月印釋譜≫巻21と
巻18にあらわれ,同じ巻13が≪釋譜詳節≫は≪法華經≫巻1,≪月印釋譜≫は巻2と3の
内容を見せる等々,巻11から巻次が変わっている.文章は,月印千江之曲は漢字と読音の位置,漢字音終声ㆁ,夾註追加など部分的改変と,曲次の変動があるが,≪釋譜詳節≫は大幅的な添削があった.そのため,≪月印釋譜≫はまったく新しい資料になる.
完本は24巻と考えられているが,現在零本としてのみ伝わる.現在まで知られている原刊本と所蔵者は以下の通り.
【原刊本】
巻1・2:西江大学校図書館所蔵
木版本,縦32.5cm×横22.5cm
四周双辺,有界,7行16字,註双行
半葉匡郭:縦21.7cm×横17.5cm
版口:黒大口
魚尾:上下内向黒魚尾
版心題:正音,釋譜序,月印釋譜[序,一,二],張次表示有
巻7・8:某氏所蔵
巻9・10:故 梁柱東氏旧蔵
巻13・14:延世大学校図書館所蔵
巻17・18:
江原道 홍천 寿陀寺所蔵
全羅南道 장홍 宝林寺所 蔵(巻17のみ)
巻23:三省出版社 金宗圭氏所蔵
この本は完本が覆刻されたことはないものと思われる.部分的に地方寺刹で16世紀に覆刻された.現在伝わる重刊本を刊年順に 挙げると以下の通り.
安東 広興寺版(1542年/中宗37) 巻21:終戦以前の後刷本もあり.
淳昌 無量窟版(1559年/明宗14) 巻23:延世大 学校図書館所蔵.
淳昌 無量窟版(1562年/明宗17) 巻21:延世大 学校図書館所蔵,沈載完教授所蔵.
豊基 喜方寺版(1568年/宣祖1) 巻1・2:木版が朝鮮 戦争以前まで保存され現代の後刷本もあり.
忠清道寒山地竹山里 白介万家 刻本(1569年/宣祖2) 巻21: 木版が公州甲寺に現存(欠張あり).
豊基 毘盧寺版(1572年/宣祖5) 巻7・8:巻7は 慶尚北道 某氏所蔵.巻8はソウル大学校図書館一蓑文庫所蔵.巻8は所在不明の巻7と共に송석하 청사진본の底本.
巻8:16世紀中葉の覆刻本.高麗大学校 アジア問題研究所 육당文庫 所蔵.
巻22:16世紀中葉の覆刻本.誠庵文庫所蔵.保存状態が 悪い.
巻22:16世紀中葉.三省出版社 金宗圭氏所蔵.
三省出版社 金宗圭氏所蔵本(巻22)の書誌事項
木版本,縦31.6cm×横17.5cm
四周双辺,有界,1面7行
月印千江之曲部分は1行大字14字
釋譜詳節部分は1文字下げて1行中字15字
全72張,落張はない
半葉匡郭:縦20.5cm×横17.0cm
版口:黒口(上下)
魚尾:上下内向黒魚尾
版心題:釋譜二十二(1-29張),月印二十二(30張以降)
紙質:楮紙
金宗圭氏所蔵本(巻22)に所載の≪月印千江之曲≫其四百四十五から其四百九十四の50章と,底経である≪大方便佛報恩經≫の“悪品友”全文を金英培(2000:50-68)で見ることができる.
≪月印釋譜≫は≪釋譜詳節≫と共に,正音創製直後の散文資料として貴重である.重刊本でさえも,見るにまれだという理由からだけでなく,
国語史資料として持つ価値のため,より重要な文献である.
【影 印】
原刊本
巻1・2:西江大学校人文科学研究所(1972年),世宗大王記念事業 会(1992年)
巻7・8:世宗大王記念事業会(1993年)
巻9・10:延世大学校東方学研究所(1956年),世宗大王記念事業 会(1994年)
巻13・14:弘文閣(19??年)
巻17・18:寿陀寺本 東方学研究所(1957年),世宗大王記念事業 会(1995年),宝林寺本 ≪한글≫150号(1972年),張泰鎭編(1986)
巻23:弘文閣
重刊本
巻23:淳昌 無量窟版(1559年/明宗14) ≪東方 學志≫(1963年)6輯
巻1:豊基 喜方寺版(1568年/宣祖1) 国語学会で≪古典選叢≫(1960) 巻1のみ
豊基 毘盧寺版(1572年/宣祖5) 巻7:동악어문학회(1968年)
豊基 毘盧寺版(1572年/宣祖5) 巻8:東方学研究所(1957年)
≪楞嚴經諺解≫[능엄경언해] 1461年(世祖7/活字本),1462年(世祖8/木版本)
≪大佛頂如來密因修證了義諸普薩萬行首楞嚴經≫(略稱≪楞嚴經≫≪大佛頂首楞嚴經≫)を世祖がハングルで口訣をふり,韓継禧・
金守温等が慧覚尊者信眉の助けを受けながら翻訳した本.世祖・金守温・信眉等の跋によれば元来1449年(世宗31)世宗の命で世祖が翻訳に着手したが,最終的に1461年(世祖7)10月校書館で活字(乙亥字)で400部を刊行した.
【原刊本】
10巻10冊,活字本(乙亥字)
巻1:誠庵文庫
1a-99b.刊経都監木版本にある進箋文と彫造官名列銜がない.朱筆の校正がこの本にのみない.
巻2:ソウル大学校図書館奎章閣.
1a-109a.木版本10巻10冊中第2巻のみ活字本.朱筆の校正がある.改装する時,天が少し切断された.
巻3:東国大学校図書館
本の大きさ:縦37.8cm×横24.5cm
四周単辺,有界,9行16字
半葉匡郭:縦27.5cm×横20.5cm
版口:白口
魚尾:上下内向黒魚尾
版心題:楞嚴經巻三
巻5:ソウル大学校가람文庫,日本天理大 学図書館
가람文庫本:李秉岐氏舊蔵本.1a-78b.表紙に“大佛頂首楞嚴經”と活字で印刷された題簽がある.朱筆の校正がある.“龍門寺”という印記と,表紙に墨書で“神興寺”とある.
天理大本:巻6と共に今西春秋氏旧蔵本.朱筆の校正がある.
巻6:日本天理大学図書館
1a-98b.義海の“而入切”(木版本115a1行)以降がない.朱筆の校正がある.
巻7, 8:東国大学校図書館,世宗大王記念事業会,김병규氏, ソウル歴史博物館
東国大本:巻7は1a-84b,巻8は1a-120b.要解の“音跋”(木版本140a5行)以降がない.
世宗大王記念事業会本(巻7):37b-84a.前後なし.37bは木版本41a8行以下に該当.
世宗大王記念事業会本(巻8):1a-118b.以降なし.活字本119aは木版本137a9行以下に該当.
東国大本,世宗大王記念事業会本共に朱筆の校正がある.この校正は巻5と異なり,ほぼ完全に一致する.
巻9:金亨奎氏,世宗大王記念事業会
金亨奎本:1a-102b.103a以降は木版本118a2行以下に該当.
世宗大王記念事業会本:27a-106b.前後なし.27aは木版本31b3行以下,107aは木版本122b2行以下に該当.
2巻共に朱筆の校正があり,巻7,8と同樣に2巻の校正はほぼ完全に一致する.
首葉欄の上に“校正”“龍門寺”という印記と,表紙に“神興寺”という墨書がある.
改装時に地が少し切断された.
巻10:世宗大王記念事業会
本文と跋文からなる.本文1a-81b,跋文1a-4aで4b以下がない.この跋文は世祖の“御製跋”に口訣をふり諺解したもの.
本文中37a-40bが落張.これを2張に縮小補写した.ただし,漢文懸吐部分のみ.諺解は省略し,諺吐を漢字の略体吐で修正.
朱筆の校正は本文のみ.
この活字本は急いで刊行したため誤謬が非常に多い.そのため,翌1462年誤謬を修正し,刊経都監※1で木版本を刊行した.ここには桂陽君璔の箋(1462年8月21日)と雕造官[雕=조]である 刊経都監都提調※2以下の 列銜がある.こうして,この 木版本が≪楞嚴經諺解≫の定本になった.この時活字本は大部分を回収し朱墨で校正したり,印刷した紙(主に巻末の“音釈”部分)を校正することによって,木版本との統一を図ったものと思われる.現前の活字本はほとんどそのような修正がある. 現在活字本は巻4のみ伝わっていない.
※1 刊経都監は朝鮮時代仏教の経典を翻訳して刊行した機関.1461年(世祖7)から1471年(成宗2)まで.
※2 都提調 朝鮮時代6゙の属衙門[속아문]・군영等重要機関に設置した咨文名誉職.
木版本は埋木,または補印による
仏教用語の漢字読音表記の修正があり差異があるが※3,1462年版の印出本が多く伝わっている.ソウル大学校と東国大学校の図書館にある全帙が代表的.特に
東国大本は題簽まで印出当時のものと考えられる.16世紀の覆刻本もある.
木版本の≪楞嚴經諺解≫は刊経都監で刊行された最初の仏教諺解であるため,その本の形
態,翻訳樣式,正書法などは,後に刊行された刊経都監の仏教諺解書の規範となった.
※3 このような補印については安秉禧(1974),석보상절의 교정에 대하여,≪國語学≫2,ソウル:国語学会.(安秉禧1992に収録)参照.
【影 印】
活字本
겨례문화(19??年) 調査中
朝鮮学報(19??年) 8?輯 調査中
木版本
東国大学校(1959年)
大提閣(1977年)
世宗大王記念事業会(1996-98年)
経書院(2001年)
≪阿彌陀經諺解≫[아미타경언해] 1461年(世祖7)
≪阿彌陀經≫は≪佛説阿彌陀經≫の略稱.淨土三部
経のひとつ.一切諸仏所護念経(護念経,彌陀経)とも言う.これに口訣をふり,翻訳したのが≪阿彌陀經諺解≫である.この本の諺解文は≪月印釋譜≫巻7にあらわれる釋譜詳節部分とほぼ一致する.まず1461年(世祖7)に校書館で活字本が刊行された.その後,1464年(世祖10)に刊経都監で木版本が刊行
された.
【原刊本】
活字本:1461年,誠庵古書博物館所蔵,乙亥字本
本の大きさ:36.7cm×23.3cm
四周単辺,有界,9行21字,註双行,大文字は1行16字
半葉匡郭:縦27.0cm×横19.4cm
版口:白口
魚尾:上下内向黒魚尾
内題:佛説阿弥陀経
版心題:阿弥陀経
ハングル活字2種(中・小)が使われる.
内容は木版本とほぼ一致する.口訣の傍点表記,仏教用語の漢字 読音,諺解“둘어범그러이실”(6a; 둘어실, 木版本7a)が異なるのみ.
木版本:不伝(中島注:大邱個人所蔵?)
【重刊本】
1558年(明宗13):全羅道徳龍山双渓寺で覆刻. 東国大学校図書館所蔵,조명기氏所蔵.
それ以外に壬辰倭乱後の重刊本数種が伝わる.その中の1つを底本として影印が出版される.
その他の重刊本*
(?)1636年 仁祖14年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 重刊本,水巌寺版
(?)1648年 仁祖26年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 重刊本,水巌寺版
1702年 肅宗 28年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 覆刻本,奎章閣,国立図書館所蔵,固城 雲興寺版
(?)1727年 英祖29年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 妙香山 普賢寺版
1753年 英祖29年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 覆刻本, 桐華寺版
国立図書館所蔵本
ソウル大奎章閣所蔵本(2冊)
東国大学校所蔵本(4冊)
延世大学校所蔵本
天理大学図書館所蔵本
誠庵古書博物館所蔵本
1759年 英祖35年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 重刊本,奉印寺版
1799年 正祖22年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 雲門寺版
1871年 高宗8年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 水落山徳寺版
1881年 高宗18年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 普光寺淨願社版
1883年 高宗20年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 普光寺版
1898年 光武2年 ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 表忠寺版
【影 印】
≪季刊 書誌學報≫10(1993年):活字本,崔銀圭の解題あり
정양사(1958年):≪佛頂心經≫と共に影印
亜細亜文化社(1974年):同上,李熙昇の解題あり
大提閣(1977年):≪金剛經諺解≫≪佛經諺解≫と合本.
金英培他(1997):活字本,双渓寺本,桐華寺本
≪阿彌陀經諺解≫に関するより詳しい解題はこちらのページを参照のこと.
≪法華經諺解≫[법화경언해] 1463年(世祖9)
温陵戒環が要解し,一如が集註した≪妙法蓮華經≫に世祖が口訣をふり,
刊経都監で翻訳をつけ刊行した本.全7巻.巻首に刊経都監都提調尹師路の箋(1463年9月2日)と都提調以下の雕造官の列銜がある.本の体裁と翻訳樣式等は全面的に
木版本≪楞嚴經諺解≫と一致する.
現在多くの本が伝わるが,原刊本と見られる本は非常に稀で,大部分が覆刻本.
【
原刊本】
임창순氏所蔵本:1472(成宗3)年印出.全帙あり.落張あり.状態は最もよい.毎巻頭の内題編著者記名行の内,編著者名のみあり,譯者名の行があいている※1.
ソウル大学校図書館所蔵本
誠庵文庫所蔵本:巻2上・下, 3, 4, 7の5冊.世祖朝の高僧である 学悦の手沢本.
東国大学校図書館:巻1・6
※1 刊経都監刊行の諺解書の訳者と口訣作成者の記名を削除したのは1472年(成宗3)“金 守温跋”,1495年“学祖跋”を持ち印出された≪圓覺經≫≪蒙山和尚法語略錄≫(以上金 守温跋),≪禪宗永嘉集≫≪金剛經≫≪般若心經≫に全て共通する.≪禪宗永嘉集≫≪金剛經≫≪般若心經≫等では刊経都監当時の跋文まで削除されている.このような 事実は刊経都監が廃止された状況と関連したものと考えられる.仏教諺解の印出年代推定において記名行の空白は有力な基準になる.(安秉禧(1992:509)註14より)
【
重刊本】
覆刻本は版心題を略字で表示する等,粗雑な部分はあるが,翻訳は原刊本通りになっているため,原刊本と同一の資料と見ても無妨である.
有刊記の覆刻本:1523年(中宗18),1545年(仁宗1),1574年(明宗2)
重刊本(体裁と内容が異なるもの)
国立中央図書館所蔵本
巻1, 2,2巻2冊※2
1500年宮中の施主で刊行(刊記あり)
原刊本の注釈文を削除し本文のみ翻訳.翻訳は原刊本と同じ.
各字並書の廃棄.漢字音表記において東国正韻式漢字音を止揚.
誠庵文庫所蔵本
巻4,1冊
※2 安秉禧(1971), 개간 법화경언해에 대하여, ≪東方學誌≫12. (安秉禧(1992)に所収)参照.
【 影 印】
東国大学校(1960年):原刊本と重刊本を集めた全帙
大提閣(1977年):同上
世宗大王記念事業会(2000年-)
≪禪宗永嘉集諺解≫[선종영가집언해] 1464年(世祖10)
唐の永嘉玄覚の≪禪宗永嘉集≫に宋の行靖が註をつけ,淨源が科門を修正したものを諺解した本.2巻1冊.世祖がハングルで口訣をふり,慧覚尊者信眉等が翻訳し,刊経都監で刊行.巻頭に刊経都監都提調
黄守身の箋(1464年1月5日)と, 黄守身以下関与者の列銜があり,巻末に信眉と孝寧大君の跋がある.
【
原刊本】
巻上:東国大学校図書館所蔵(完帙?)
巻下:ソウル大学校図書館一蓑文庫所蔵
【 後刷本】
1495年(燕山君1)印出:東国大学校図書館所蔵.巻下1冊. 巻末に木活字の学祖の跋文あり.
【 重刊本】
1520年(中宗15):慶尚道長水寺で原刊本を覆刻したもの.冊版現存.(ソウル大所蔵?)
【 影 印】
弘文閣(1983年)
≪金剛經諺解≫[금강경언해] 1464年(世祖10)
≪金剛般若波羅蜜經≫または≪金剛經六祖解諺解≫の略稱.≪金剛經≫の經部分と六祖
恵能の口訣にハングルで口訣をふり翻訳した.口訣は世祖,翻訳は韓繼禧,校正は孝寧大君・海超等が担当し,刊経都監で刊行した.刊経都監都提調黃守身の“進金剛心經箋”(1464年4月7日)と孝寧大君・海超・金
守温等の跋文と“飜譯廣轉事實”(金剛經事實)に刊行經緯がある.箋の後に黄守身等刊行関与者が列記されている.
【 原刊本】 上・下2巻
跋文まである原刊本が伝わる.所蔵などは要調査.
1495年(燕山君1)印出:임형택教授所蔵.
跋と“飜譯廣轉事實”が削除されている.巻末に学祖の跋文(木版)がある.
1495年印出本と似た巻下零本:ソウル大学校図書館一蓑文庫所蔵
8・15開放直後これと同系統の巻上1冊を底本(所蔵者未詳)とした石版本が刊行される
【 重刊本】
1575年(宣祖8):原刊本の覆刻.全羅道安心寺で刊行.冊版が6・25以前まで保管されていた.
1932年:上の冊版を한용운氏が補修して印出※.
※補板があるため利用に注意が必要 ≪金剛經諺解≫≪圓覺經諺解≫等,冊版の発見経緯と補板印出については以下を参照.
한용운(1931),국보적 한글 經板의 발견 경로,≪불교≫89.
한용운(1933),한글經 印出을 마치고,≪불교≫103.
【 影 印】
大提閣(1977年):石版本を底本としたもの.≪阿彌陀經諺解≫≪佛經諺解≫と合本.
弘文閣(1992年)
≪般若心經諺解[반야심경언해]≫ 1464年(世祖10)
≪般若波羅蜜多心經略疏顯正記諺解≫の略称.≪心經諺解≫とも.唐の法蔵の≪般若心經略疏≫に対する宋の仲希の註解本にハングルで口訣をふり翻訳した単巻の本.≪金剛經諺解≫と同時に刊経都監で刊行された本で,刊経都監都提調
黄守身の“進金剛心經箋”と刊行関与者も同一.口訣は世祖,翻訳は韓繼禧等.≪金剛經≫とは異なり韓繼禧の跋文がある.
【
原刊本】
ソウル大学校図書館一蓑文庫所 蔵本
최범술氏所蔵本:1464年の冊版で1495年(燕山君1)に印出したもの.同年の 学祖の跋あり.
【 重刊本】
1553年(明宗8):黄海道深源寺で刊行(原刊本の覆刻*)
1564年(明宗20):全羅道淳昌無量寺で刊行(原刊本の覆刻*)
【 影 印】
일지사(1973年): ソウル大学校図書館一蓑文庫所蔵本
보련각(1975年):최범술氏所 蔵本
≪圓覺經諺解≫[원각경언해] 1465年(世祖11)
唐の佛陀多羅の翻訳である≪大方廣圓覺修多羅了義經≫にたいし,やはり唐の宗密が≪圓覺經大疏鈔≫をつくり,それを底本に世祖が口訣をふり,信眉・孝寧大君・韓繼禧などが翻訳し,1465年(世祖11)に刊経都監で刊行したもの.10巻10冊の木版本.巻頭に刊経都監都提調である黄守身の箋(1465年3月19日)と黄守身・朴元亨・金守温などの雕造官が列記されている.巻頭の内題の次に「御定口訣/慧覺尊者臣僧信眉孝寧大君臣補仁順府尹臣韓繼禧等譯」という記録がある.内容は釈迦如来と12菩薩(
文殊,普賢,普眼,金剛蔵,彌勒,清浄慧,威徳自在,辯音,浄諸業障,普覺,圓覺,賢善首)との問答を通して大圓覺の妙理とその観行を説いたものである.
【 原刊本】
心岳本:巻3之1(1-4a落張),巻3之2(103張以下落張)の零本.
一蓑本:ソウル大奎章閣所蔵.巻下2之1(巻8の最後の張が落張).
一蓑本:ソウル大奎章閣所蔵.巻上1之2(4-192張),巻下3之1(4-135張).後刷本の可能性も.
ソウル大奎章閣所蔵本:原刊本の後刷本.巻1の序(1-72a落張),巻上1之1(92張以降落張),巻上2之2(1-17張).
【原刊本の覆刻本】
ソウル大奎章閣所蔵完帙本
ソウル大奎章閣所蔵本:巻上2之3(1-47張),巻下1之1(1-65張以下落張)
ソウル大奎章閣가람文庫所蔵完帙本
誠庵古書博物館所蔵本:巻上2之2(20-173張,落帙本)巻上2之3(1-47張)
ソウル大奎章閣一蓑文庫所蔵本:巻上2之2(43-173張)
高麗大アジア問題研究所육당文庫所蔵本:巻下2之2・3,巻下3之1・2
田川孝三所蔵本:巻上2之1,2之3
【重刊本】 1575年(宣祖8)全羅道安心寺刊行
東国大図書館
ソウル大奎章閣
【書誌事項】ソウル大奎章閣本(重刊本の覆刻)による
木版本,縦32.0cm×横23.3cm
四周双辺,有界,9行
本文大字17字,注解と翻訳文は双行小字17字
半葉匡郭:縦21.8cm×横18.0cm
版心題:圓覺(序:圓覺經序,箋:圓覺經箋,雕造官:雕造官)
版口:黒口(上下)
魚尾:上下内向黒魚尾
内題:大方廣圓覺修多羅了義經
巻末題:大方廣圓覺修多羅了義經
【 影 印】
大提閣(1977):安心寺版を底本.縮小して1冊に.
弘文閣(1995):가람文庫本を底本.5冊.
寶蓮閣(1982):底本不明
世宗大王記念事業会(2002-):弘文閣(1995)をもとにするが序など一部未公開の原刊本も.
≪牧牛子修心訣諺解≫[목우자수심결언해] 1467年(世祖13)
≪牧牛子修心訣≫とも.高麗の僧,普照国師智訥(号:牧牛子,1158-1210)の≪修心訣≫を信眉が翻訳し,1467年(世祖13)に刊経都監から刊行した46張1冊の木版本である.禅の理論書.巻末に「成化三年丁亥歳朝鮮國刊經都監奉教雕造」という刊記と,版下本の筆写者である安惠・柳ユ・朴耕の名前がある.
【 原刊本】
ソウル大奎章閣一蓑文庫所蔵本:巻首に≪四法語≫が合綴されている.
김경숙氏所蔵本:≪四法語≫が≪修心訣≫の後ろに合綴されている.
日本 東洋文庫所蔵本
【 原刊本の覆刻本】 鳳栖寺本,1500年(燕山君6)刊,≪四法語≫合綴,1冊54張.
国立中央図書館所蔵本
ソウル大奎章閣所蔵本
延世大図書館所蔵本
刊記:弘治十二年 庚申冬有日 慶尚道 陜川地 伽耶山 鳳栖寺 開版
【書誌事項】 ソウル大奎章閣一蓑文庫所蔵本
木版本,縦23.0cm×横16.9cm
四周双辺,有界
9行17字,翻訳文は小字双行17字
半葉匡郭:縦18.8cm×横13.4cm
版口:黒口(上下)
魚尾:上下内向黒魚尾
版心題:修心訣
内題:牧牛子修心訣
巻末題:牧牛子修心訣
【 影 印】
アジア文化社(1973):ソウル大奎章閣一蓑文庫所蔵本
≪蒙山和尚法語略錄諺解≫[몽산화상법어약록언해] 1467年(世祖13)
≪樂学軌範[악학궤범]≫ 1493年(成宗10年)
成俔,柳子光,申末平,朴[耒昆],金福根が正調 楽舞の保存のため編纂した楽書.9巻3冊(各3巻1冊).成俔(1439-1504)の序文がある.編纂は1493年(成宗10年)8月に完了したが,刊行及び印出に 関する記録は殘っていない.成宗以後にも数度にわたり重刊或いは覆刻された.内容は雅楽,唐楽,ク楽の3門に分け,作律と用律,そして楽器などを説明したもの.高麗歌謠(“動動”,“井邑詞”,“處容歌”,“三眞勻(鄭瓜亭[정과정])”)のハングル歌詞(巻5)とハングル表記の音楽用語※1(巻2,4,7,8,9)がある.また,≪龍飛御天歌≫のハングル歌詞が 巻5の6面から7面に収録されている.第1章“海東章”から第16章“逃亡章”までと,第125章“千世章”の17章の歌詞がある.傍点はなく,表記にもかなりの差異が認められる.ㅸや各字 並書も用いられていない※2.楽譜や楽書類に書かれたハングル歌詞は実際に歌唱されていた当代の歌の歌詞がそのまま採録されたものと考えられる.
※1 語彙資料としての音楽用語については李賢熙(2001:89-93)参照.
※2 詳細は李賢熙(2001:94,95)を参照.
【原刊本】(の可能性があるもの)
木版本:日本 蓬左文庫所蔵本,16世紀中葉の印出と見られる
9巻3冊(各3巻1冊)
四周単辺
魚尾:黒魚尾
李友閔(?-1574)の蔵書印あり
傍点なし
その他は不明
【重刊本(光海(君)本)】
1610年(光海君2年):ソウル大学校奎章閣所蔵.全帙.太白山史庫に内賜されたもの.巻9末尾に李廷龜の跋文あり,“萬曆三十八年庚戌仲秋日”の刊記あり.若干の修正が加えられている.李廷龜の跋文は
楽書庁提調,
監造官及び監校の列銜が書かれた面が同じ張次がふられているのにもかかわらず,この部分のみ前の部分と異なり四周単辺になっている.これは孝宗本,英祖本も同様.
1611年(光海君3年):ソウル大学校奎章閣所蔵.五台山史庫に内賜された本.全帙.その他同上.
その他零本で巻7,8,9の1冊がソウル大学校奎章閣に所蔵されている.
木版本
四周単辺,有界,11行24字
冊大:縦36cm×横24cm
半葉匡郭:縦27.7cm×横18.7cm
版口:大黒口
魚尾:上下内向三葉花紋魚尾(単線,単弧)
光海君時代のその他の重刊本
高麗大学校 中央図書館本:9巻3冊
蔵書閣本:零本1冊(巻4,5,6)
国立中央図書館本:9巻3冊
成均館大学校 中央図書館本:9巻3冊
【重刊本(孝宗本)】
1655年(孝宗6年):光海本を底本とした覆刻本.≪樂章謄 録≫の記錄によると8部のみ作られる※3.8部中4部が奎章閣所 蔵.版式は光海本と同樣.
江都史庫蔵本:順治12年(1665年)3月11日の内賜記あり
五台山史庫蔵本:同上
太白山史庫蔵本:同上
毎冊初張に侍講院(世子侍講院:春坊)の蔵書院がある版本
※3 ≪孝宗實録≫巻14,6年3月癸未條と≪樂章謄 録≫乙未(孝宗6年)3月11日條に 関連記事があり,刊行の始末を知ることができる.
【重刊本(英祖本)】
1743年(英祖19年)
木版本.半葉匡郭:縦39.0cm×横25cm.光海本を底本とした覆刻本でありながら,英祖の“御製樂學軌範小序”と“御製荷皇恩三章”及び“荷皇恩簇子圖”を巻1巻頭に新しく追加し,成俔の序文を李廷龜の跋文の跋文の直前に移動させる.一種の補刻本とも言える.“御製樂學軌範小序”部分は四周双辺,7行16字,大黒口,上下内向四葉花紋魚尾,“御製荷皇恩三章”と“荷皇恩簇子圖”部分は上下内向四葉花紋魚尾になっている以外は本文と
同様.“御製樂
學軌範小序”と“御製荷皇恩三章”は張次も別途ふられているが,“荷皇恩簇子圖”には張次表示がない(詳細は李賢熙(2001:76-78)を参照).
【筆写本】
筆写本である≪俗樂歌詞※4≫(ソウル大学校奎章閣가람文庫所蔵,2種あり)の付録としてつけられている.光海本やその後の版本の≪樂學軌範≫巻5から高麗歌謠と数編の
楽章のみを縮約して記録したもの.誤字が多い.ㅿ,ㆁの使用はない.
※4 ≪樂章歌詞≫ないし≪國朝歌詞≫と言われる文献とその内容が等しい.詳細は李賢熙(2001:78)註22を参照.
【影 印】
原刊本
延世大学校 人文科学研究所(1968年) 김지용の解題あり
重刊本
太白山史庫本:古典刊行会(1933年) この影印は北朝鮮で再影印される
英祖本:国立国学院 伝統芸術振興会(1989年)[韓国音楽学資料叢書28] 成慶麟の解題あり
大提閣(1973年):どの版本かは明記されていない.版式から光海本か孝宗本どちらかの影印と思われる.
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[最終更新日時:2011/09/18 21:32:28]