クロネコヤマトを中心とした宅急便ドライバーの過重労働が問題になっている。
昨今のネット通販爆発的普及により、宅配便件数が大幅に増加した結果、商品を運ぶドライバーにしわ寄せがいっている現状がある。
クロネコヤマトの労働組合も、労働量の是正を求め、こんなニュースも報じられている。
ヤマトが昼の配達取りやめ検討 正午から14時、来年度にも実施 - 共同通信 47NEWS
もはや一般的になった時間指定配達も、ドライバーを苦しめる一因だ。
過重労働は悲しい事件にもつながっている。
ヤマト運輸社員自殺で提訴 遺族「長時間労働が原因」 - 産経ニュース
この社員は支店長にも関わらず、ドライバーがいないため、自分がドライバーとして荷物を運んでいたとのことである。ドライバー補充を要求しても、その要求は通らなかったらしい。
私はこれらのニュースを聞いていると、心が痛む。他人事のように思えない。
なぜなら、私自身が、彼らの労働環境を過酷にしている一人である、と思っているからだ。
私のクロネコヤマト利用状況
私は、Amazonのヘビーユーザーである。最低でも月に数回はAmazonを利用する。
私はアマゾンプライム会員なので、送料は無料だし、時間指定配達も無料だ。たいていの場合、注文する翌日の20-21時の時間指定配達で、バンバン注文している。
欲しいと思ったら、翌日の仕事が終わったら家に届く。そんな環境だ。
届けてくれるのは、いつもクロネコヤマトのドライバーである。いつも同じ人。40代の男性で、愛想が良いとは言えないが、しっかりと指定した時間に届けてくれる。
私は、冒頭のような、クロネコヤマトの過重労働に関するニュースが流れてからというもの、ちょっとAmazonで注文しづらい。面と向かって接する相手だからこそ余計に、いろいろなことを考えてしまう。
例えば、この前、iPhone用の充電ケーブルを注文した。1,000円にも満たない商品である。それでも、プライム会員なら、送料無料で、時間指定配達も無料だ。
「この商品を、翌日の20-21時の時間指定配達で注文していいのだろうか。この小さな注文が、ドライバーさんに負担をかけることになるのではないだろうか」
そんな考えが頭をよぎった。結局、欲しいけれど迷っていた本も一緒に注文して、配達してもらった。
しかしその時に思った。「これって何かおかしくないか?」
誰かの犠牲の上に成り立つ利便性はいらない
私は、正当な権利として、お急ぎ便だろうが時間指定配達を注文できるのに、ドライバーの負担を気にしてしまう。「これを頼んだら、相手がかわいそうだ」と思って、躊躇してしまう。これは、正常な商取引と言えるのだろうか。
私は、誰かの犠牲の上に成り立つ利便性はいらない。利便性を享受するなら、気持ちよく利用したい。誰かが笑う代わりに、誰かが泣く世界は嫌だ。
例えば、少し前に問題になった「すき家の過重労働」も、誰かの犠牲の上に成り立った利便性である。24時間営業という利便性を担保したのは、狂えるほどの忙しさを一人で回す、いわゆる「ワンオペ営業」であった。
目の前の店員が苦しみながら作る牛丼を、私はおいしく食べることができない。
根本的な原因は、Amazonとの契約条件にある
そもそも、このヤマト過重労働の根本的な原因は、「クロネコヤマトの大口割引」にある。
一番わかりやすいAmazonを例に出すが、Amazonとクロネコヤマトは、両者の契約の中で大口割引を結んでいると言われている。それは、「たくさん出荷するから、配送料安くしてね」というものである。
確かに、Amazonの出荷件数はけた違いだ。しかし、通常の宅配料金で配送していたら、Amazonの「送料無料」はなし得ない。だから、量にモノを言わせて値引きをさせている。
ご覧のように、Amazonの売上は5年前に比べると約3倍にも膨れ上がっている。出荷件数のデータはないものの、売り上げに比して増加していると考えていいだろう。
このAmazonの増加ペースに対して、クロネコヤマトの売上と利益のデータがこちらである。
ほぼ横ばいである。出荷件数は確実に多くなっているであろうが、利益には反映されていない。
忙しいのに会社もドライバーも潤わない
数年前に佐川急便がAmazonの配送から撤退した。佐川もクロネコヤマトと同様に、大口割引で契約していたため、利益が取れなかったものと思われる。そのため、今まで佐川が運んでいたAmazonの商品も、クロネコヤマトが運ぶことになった。
だから、クロネコヤマトは、配達件数に比して、利益がなかなか上がらないのである。仕事が増えても、会社の利益は上がらない。だから、ドライバーの報酬も上がらないのである。
クロネコヤマトは、ドライバーへの未払い残業代も問題になっている。
ヤマト運輸 残業代の未払いなどで是正勧告|日テレNEWS24
サービス残業はもはや常態化しており、ドライバーは労働の正当な対価を受け取れない現状が続いている。
私は、それが一番気に病むところだ。「仕事が忙しいのにドライバーが潤わない」というのは、やっぱり受け入れがたい。
もし、商品を運べば運ぶほど、ドライバーの報酬が上がるなら、私だって喜んで注文する。しかし、現実はそうなっていないようである。
会社の利益をすぐさま人件費につぎこむことはちょっと難しいかもしれないが、Amazonの大口割引が根本的な原因のひとつであることは間違いない。
クロネコヤマトドライバーの労働条件について
ヤマトのドライバーの労働条件がどんな感じか調べてみると、いろいろと記事が出てくる。
ヤマトのセールスドライバーの例だと、朝6時半に出勤して積み込み作業を始め、配達終了後に伝票整理などをして終業するのが夜10時。
引用元:宅配業者は「過重労働の矛盾」に直面している | ブックス・レビュー | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
異常である。少なくとも、私には異常に思える。こんな日々が毎日続いたら、身も心もクタクタだろう。さらには、報酬も上がらないとなれば、ドライバーはモチベーションをどこに求めればいいのだろう。
ちなみに、公式サイトで出しているドライバーの求人はこんな感じだ。
基本月給+インセンティブ+各種手当
・昇給/年1回(人事考課による)
・賞与/賞与年2回(昨年実績)■基本給:187,000円~211,000円
まとめ
できれば、私は今の配送環境を維持したい。買ったら翌日届く今の状況は、とても便利だ。しかし、そのせいで、誰かが大変な思いをしているのだとすれば、そんなサービスは止めてほしい。
個人的な希望としては、まずヤマト運輸がAmazonとの契約条件を見直し、正当な配送料をもらえるようにするべきだろう。その余波で、現在のAmazonの送料無料サービスがなくなったとしてもかまわない。送料無料は、享受しておいてなんだが、はっきり言っておかしい。サービスには対価を払うべきだ。そう思っている。
私は気持ちよくサービスを利用したいし、変な抑圧を受けずにAmazonを使いたい。
そんなことを、このクロネコヤマト問題に思っている。