トランプ大統領 強いアメリカで指導力取り戻す

トランプ大統領 強いアメリカで指導力取り戻す
アメリカのトランプ大統領は上下両院の議員を前に施政方針を示す初めての演説を行い、国防費を大幅に増やして強いアメリカを目指す考えを示し、オバマ政権で失ったとも指摘される国際社会での指導力を取り戻す姿勢を打ち出しました。
トランプ大統領は現地時間の2月28日午後9時、日本時間の1日午前11時すぎから議会上下両院の合同会議で今後1年間の施政方針を示す初めての演説を行いました。

この中で、トランプ大統領は、外交・安全保障について、「戦争を防ぎ、もし必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。国防費の大幅な増額を求める」と述べて、アメリカの安全のためだとして軍の強化に力を入れる考えを示しました。

そのうえで、「同盟国はアメリカが再び世界をリードするつもりだとわかるだろう。敵も味方も、世界中の国々がアメリカは強く、誇りに満ちていると気付くことになる」と述べて、オバマ政権で失ったとも指摘される国際社会での指導力を取り戻す姿勢を打ち出しました。

また、日本円で110兆円余りに上る国内のインフラ整備を目指すことや不法移民対策、さらに、入国管理を厳格化するための新たな措置を行うことなどを訴え、アメリカを再び偉大にすると強調しました。そして、そのためには国民が対立よりも融和すべきだと繰り返し呼びかけました。

アメリカメディアからは「これまでで最も大統領らしい演説だった」などと評価する声が上がっていて、トランプ政権に批判的な論調のCNNテレビが演説後に行った世論調査でも、およそ8割が好意的な意見を示しています。

首相「機動的な財政政策が大切」

安倍総理大臣は午後の参議院予算委員会で「日本もさらに財政出動すべきだ」と指摘されたのに対し、「110兆円は、われわれの予算よりも大きな額だ。デフレから脱却するうえで金融政策も非常に重要だが、そのスピードを速めていくうえでも機動的な財政政策が大切だ。経済再生と財政健全化を両立する観点から、その時々の経済状況などを見極めて財政出動をするなどの機動的な財政運営を行っており、財政の力によってデフレ脱却にも寄与するようしっかりと重点を置く対象を絞っていきたい」と述べました。

官房長官 駐留経費への懸念なし

菅官房長官は午後の記者会見で、「強い経済の実現や防衛予算の拡大、国境制度改革等によって改めて米国を偉大な国にするとの決意を強調したのが特徴だ。わが国に対する言及は、すでに首脳会談で方向性ができており、今後とも日米間で緊密な連携を取りながら、揺るぎない日米同盟の絆を、さらに強化していきたい」と述べました。

また菅官房長官は、記者団が在日米軍の駐留経費の増額を求められる可能性について質問したのに対し、「マティス国防長官が、『日本は、ほかの米国の駐留国と違う』と明確に日本を評価している」と述べ、懸念は当たらないという認識を示しました。

一方菅官房長官は、トランプ大統領が、国防費の大幅な増額を目指す方針を示したことについて、「正式に具体的な数字がまだ発表されていないので、しっかり注視したい」と述べました。

米第一主義

トランプ大統領は演説の冒頭で、「私は今夜、団結と強さのメッセージを伝えるためにここにいる。われわれが今、目の当たりにしているのは、『アメリカの精神の復活』だ。われわれの同盟国は、アメリカが再び世界をリードしていく様子に気付くだろう。そして、敵、味方を問わず、すべての国が強く、誇らしく、そして自由なアメリカの姿を見いだすだろう」と述べ、今回の演説のテーマとしていた『アメリカの精神の復活』に言及しました。

また、「アメリカは自分たちの国民を第一に考えなければならない。そうした時にのみアメリカを再び偉大にできる」と述べ、国益を最優先に掲げるアメリカ第一主義で取り組む姿勢を示しました。

そして、トランプ大統領は演説の終わりにさしかかると、「われわれの展望は一致して取り組むことによってのみ成し遂げられる。ささいな闘いの時間は過去のものとなった。われわれには夢を共有する勇気が必要だ。すべての国民が『アメリカの精神の復活』を受け入れてほしい」と述べて、対立よりも、ともにアメリカの繁栄を目指すべきだと融和を訴えました。

税、インフラ、規制、通商

演説でトランプ大統領は、「アメリカ国内で、ビジネスをしやすくする一方で国外への移転を難しくすることで、アメリカ経済のエンジンを再び始動させなければならない」と訴えました。

税制改革については、「法人税の税率を引き下げる大規模な税制改革に取り組むととともに、中間層の税負担を大幅に軽減する」と述べましたが、具体的な税率については明らかにしませんでした。

また、国内のインフラ整備に官民合わせて1兆ドル、日本円で110兆円余りに上る投資を実現するため、議会に法整備への協力を求める方針を示し、数百万人の雇用の創出につなげると訴えました。

そして規制緩和をめぐっては「雇用を奪うことになる規制を大幅に削減するための取り組みに着手した」と述べ新たな規制を導入する場合、2つの既存の規制を撤廃する考えを示しました。

このほか通商政策では、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したことを取り上げ、みずからの成果として強調しました。そのうえで、「NAFTA=北米自由貿易協定が承認されて以来、製造業の雇用は、4分の1以上失われた。また、中国がWTO=世界貿易機関に加盟してから6万の工場が失われた」と述べ、中国やメキシコに対して抱える多額の貿易赤字の削減を目指す考えを示しましたが、日本については言及しませんでした。

一方、アメリカの大手企業とならんで通信大手のソフトバンクグループの名前も挙げて、多くの企業が、大統領選挙のあとアメリカ国内に投資や雇用の創出を発表したとして、アメリカ経済へのみずからの貢献を強調しました。

国内テロ対策

トランプ大統領は演説で、「われわれの義務はアメリカ国民を守ることだ。テロ行為などで有罪判決を受けた大多数の人は海外からアメリカに来ている。アメリカにテロの拠点を築きわが国を過激派の聖域にすることを許すわけにはいかない。だからこそ、われわれは入国審査の改善を進めており、まもなくわが国を安全にするための新しい措置を取る」と述べました。

中東など7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令が裁判所の仮処分で執行されない中、トランプ大統領は国の安全を確保するための新たな大統領令に署名する考えを示しており、その内容が注目されています。

壁建設、不法移民政策

トランプ大統領は演説で、「私の政権は、移民政策と国境警備について、アメリカ国民の願いに応えていく。移民対策の法律を実行していくことで賃金の上昇につながり、失業者を救済し、われわれの社会がより安全になる。このため、南部の国境沿いに巨大な壁の建設をまもなく始める」と述べ、メキシコとの国境沿いにすみやかに壁を建設すると改めて訴えました。

そのうえで、「われわれの社会を脅かすギャングや麻薬の密売人、犯罪者を排除する。選挙戦でも約束したように、悪い連中は追い出す」と述べ、不法移民対策の強化を着実に進める姿勢を強調しました。

また、トランプ大統領は、不法移民に殺害された警察官の遺族たちを議会演説にゲストとして招待し、演説の中でも紹介したうえで、「不法移民をわれわれの国に入れるべきではない」と訴えました。

不法移民による犯罪について

トランプ大統領は演説で、不法移民による犯罪について「国土安全保障省に、犯罪被害者を支援するオフィスを作るよう命じた。これまでメディアによって無視されてきた人々、特定の利益団体に抑えつけられてきた人々に声を与える」と述べ、不法移民による犯罪の被害者の支援に向けて動き出していることを強調しました。

また、トランプ大統領は、不法移民の犯罪によって命を落とした少年や警察官の遺族を演説会場に招き、演説の中で紹介しました。このうち、17歳の息子を亡くした父親を紹介した際、トランプ大統領は「彼の息子は刑務所から釈放されたばかりの不法移民に残虐にも殺された。彼の息子は限りない可能性を持っていたのに機会を奪われた」と述べ、遺族らに哀悼の意を表すとともに、今後も不法移民対策に取り組んでいく考えを示しました。

オバマケア

演説でトランプ大統領は、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアについて、保険料が全米で値上がりしているとして「持続可能でなく、崩壊している」と指摘しました。そして、「私は議会に、選択肢を拡大し負担を減らすとともに、よりよい医療保険を提供するためオバマケアを撤廃し、別の制度に変えるよう求める」と述べました。

そのうえでトランプ大統領は「行動が必要だ。すべての民主党と共和党の議員に対し、オバマケアの大惨事から国民を守るためにともに取り組むよう求める。すべての問題が解決可能だ。民主党と共和党はアメリカと国民のために結束すべきだ」と述べ、オバマケアを撤廃し別の制度に変えるため与野党に協力を求めました。

教育政策

トランプ大統領は演説で教育政策について、「教育は市民の権利に関わる問題だ。アフリカ系やヒスパニック系など、不利な環境で育つ子どもたちが公立や私立の学校、在宅学習などさまざまな選択肢の中から、自分たちにあった、教育の場を選べるようにするべきだ」と述べ、教育を受ける方法の選択肢を増やす法案を通過させるよう、両党の議員に呼びかけました。そのうえで、「すべての子どもが貧困の連鎖を断ち切り、大学などより高度な教育を受けられるようにしたい」と話しました。

外交・安全保障

アメリカのトランプ大統領は、施政方針を示す初の議会演説で、外交・安全保障について「同盟国はアメリカが再び世界をリードするつもりだとわかるだろう。敵も味方も、世界中の国々がアメリカは強く、誇りに満ちていると気付くことになる」と述べて、オバマ政権で失ったとも指摘される国際社会での指導力を取り戻す姿勢を示しました。

そのうえで、「アメリカは直接的にそして断固として世界に関与していく。それは同盟国と共有する利益に基づくものだ」と述べて、同盟国と緊密に連携し国際社会の課題に取り組んでいく考えを示しました。

その一方で、ヨーロッパと中東、それに日本など太平洋地域の同盟国や友好国については「戦略的にも軍事的にも直接かつ意味のある役割を果たすとともに、公平な費用の支払いを期待する」と述べ、地域の安全保障に具体的な活動で貢献するよう期待を示したうえで財政面での公平な負担を求める考えを示しました。

国防費

演説でトランプ大統領は、国防費についても述べ、「戦争を防ぎ、もし必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。アメリカの軍を再建するために、アメリカの歴史上で最大規模とも言える国防費の大幅な増額を議会に求める」と述べて、国の予算編成を担う議会に対し、国防費の大幅な増加を求める方針を改めて示しました。

また、2013年以降、国防費の上限を設定し、これを超えた場合は予算を強制的に削減する措置が続いていることについて、「国防費の強制削減を取り除く」と述べて、この措置をやめるよう議会に求めていく考えを示しました。

トランプ大統領は、2018年度予算で国防費を前の年度と比べておよそ10%に当たる540億ドル(日本円で6兆円)増額するよう求める考えをすでに示しています。この増額幅は2018年度の予算の上限、5490億ドルの10%にも当たり、政府高官はこの上限に増額分を上乗せした6030億ドル(日本円でおよそ68兆円)を国防費として要求する考えを示しています。

IS、イラン

演説でトランプ大統領は、国防総省に対して、過激派組織IS=イスラミックステートの壊滅に向けた新たな計画を取りまとめるよう指示したと述べたうえで、「この卑劣な敵を地球上から消滅させるため、イスラム諸国の同盟国や友好国などとともに取り組む」と述べ、中東各国と協力して軍事作戦を加速させる考えを示しました。

また、トランプ大統領は、イランが進める弾道ミサイル計画を非難し、個人や企業に対して経済制裁を科したとしたうえで、イランと敵対するイスラエルとの強固な同盟関係を再確認したと述べ、イスラエルとの関係を重視する姿勢を強調しました。その一方で安全保障面では、国防総省が優先課題に挙げているロシアと中国、それに北朝鮮については、演説で直接言及することはありませんでした。

女性活躍、子育て支援

トランプ大統領は、演説で女性の活躍について触れ、「女性起業家たちが、経営に必要な市場へのアクセスやネットワーク、起業のための資金を確保できるよう支援する協議会をカナダとともに立ち上げた」と述べ、女性経営者を後押ししていく方針を明らかにしました。

また「新たに子をもうけた親が、有給の育児休暇を取得できるよう支援するほか、保育施設などを利用しやすく、また費用も手ごろにするべく民主・共和両党の議員とともに取り組んでいきたい」と述べ、子育て支援にも取り組む姿勢を示しました。

ロビー活動禁止

トランプ大統領は演説で、特定のグループの利益のために政府関係者に働きかけを行う、いわゆるロビー活動について、「われわれは行政機関の職員に対して、退職後5年間のロビー活動を禁止し、さらに外国政府のためのロビー活動を生涯、禁止した。これによって、政府の汚職の沼の泥水をさらい始めた」と述べ、大統領選挙の期間中から主張していた政府高官の倫理改革に、大統領就任後すぐに取り組んでいる事を強調しました。