東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

中国の管理強化 息苦しい社会に懸念

 中国がどんどん息苦しい社会になっている。国や共産党の力が強くなり、言論の自由の抑圧はいうまでもなく、個人情報や通信手段の徹底した管理が露骨になっていることも懸念される。

 中国で昨年十月末、携帯電話の実名登録制を強化するとの通知が出された。すぐに登録しなかったため十二月に突然止められたケースもある。

 規制強化の理由は、携帯を使った詐欺犯の防止などとされた。その国の法律や規則には従うべきであるが、実名登録の強化には、個人情報を厳格に管理して治安維持や独立派のテロ対策に役立てようとの意図が色濃くにじむ。

 登録には派出所に登録した個人情報や会社の登記書類も必要で、携帯電話販売店の窓口では顔写真も撮影されるという。上海のメディア関係者の例では昨年夏、ショートメールのやりとりで「(天安門事件など)政治的に敏感な言葉が多すぎる」との理由で、携帯が使用不能にされたこともあった。

 中国は一月、国内で閲覧できないサイトを見るのに使う「仮想プライベートネットワーク」(VPN)の規制強化にも乗り出した。政府批判の材料になりかねない海外の報道やネット情報を遮断する狙いがあるようだが、個人や社会を徹底して監視する動きは不気味でもある。

 外国人労働者を、A類(ハイレベル人材)、B類(外国専門人材)、C類(一般人材)にランク付けし、ビザ取得などで異なる扱いをする政策も今春、本格運用される。優秀な人材を確保する一方、製造業やサービス業などで国内雇用を守る目的があるようだ。

 とはいえ、人権や個人の尊厳を守るよりも強権統治を最優先するからこそ、年収、学歴、年齢などで人材をランク付けし、不要な人材を排除するという発想が出てきているのではないか。

 中国では都市戸籍と農村戸籍を厳格に分け、農民を「二等公民」と差別してきた歴史がある。それなのに、大都市では地方からの流入を防ぐため、外国人労働者と同様なランク付けによる「新戸籍制度」を導入する動きもある。

 毛沢東をネットで批判した大学教授や地方幹部らが一月、相次いで解雇された。毛支持者の強い批判を浴びた結果ともいう。

 毛時代終焉(しゅうえん)から四十年余。強権による管理の徹底が再び、独裁的な権力者への民衆のおもねりを生んでいないか心配である。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報