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『ラブライブ!』のプロジェクトはなぜ成功した? 木皿陽平の考え

『ラブライブ!』のプロジェクトはなぜ成功した? 木皿陽平の考え

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インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

今、大量にアニメ作品がありますけど、売れる作品って、製作委員会の雰囲気がすごくいいんですよ。

―もともと「アニソン」という意識は薄かったとのことですが、実際アニソンを作るようになってからは、クラシックの経験が活かされているのでしょうか?

木皿:そこに関しては、クラシックよりも歌謡曲なんです。やっぱり、僕は古臭いものが好きで、歌手でいうと藤圭子さんや八神純子さんが好きだし、1980年代のアイドル全盛期の曲とか、ニューミュージックとか、ド演歌も好きで。自分の引き出しは、そこらへんなんですよね。10歳上の姉がいたので、ちょっとませてたんだと思います。

木皿陽平

―ランティス入社以降、転機となった仕事というと?

木皿:『ミルキィホームズ』(ゲーム、アニメ、漫画など、メディアミックス企画として展開。声優の三森すずこ、徳井青空、佐々木未来、橘田いずみによるユニットを結成)ですね。さっきも言ったように、僕は一回音楽と距離を置こうと思った時期があるので、ちょっとドライに制作をやりたいというか、そこまで深入りしないほうがいいと思ってたんですけど、『ミルキィホームズ』をやり始めてまた、がっつり曲作りの現場に入り込んでしまって。

『ミルキィホームズ』の経験は、当然『ラブライブ!』にも活かされています。『ミルキィホームズ』をやってなかったら、μ'sを踊らせようとは思わなかったと思う。

―「声優さんが踊る」というアイデアは、『ミルキィホームズ』ありきだったと。

木皿:もともと『ラブライブ!』は、プロのダンサーさんに振りつけてもらった激しいダンスをアニメーションで再現する、というのが売りのひとつだったので。そこから『ラブライブ!』でライブをやろうと思ったきっかけは、三森さんと徳井さんが『ミルキィホームズ』でバリバリ踊ってたことがあるんですよね。

―そもそも『ミルキィホームズ』が成功した要因は、なんだったと思いますか?

木皿:アニメ自体もすごく売れたのは大きいと思います。それは一緒に仕事をする製作委員会の人たちが、すごい熱量で盛り上げてくれたからなんです。今、大量にアニメ作品がありますけど、売れる作品って、製作委員会の雰囲気がすごくいいんですよ。

『ミルキィホームズ』は、みんなが前向きに議論していました。いろんな人たちの想いが詰まっていれば、掛け算が成り立って、ただの足し算にはならない。あれで成功を体験していたから、他の作品でも「ここはもっとこうしよう、ああしよう」ってできるようになったのかなと思います。

僕、『THE IDOLM@STER』がホントに大好きで、『シンデレラガールズ』にめっちゃ課金していました。

―2010年7月の入社ということは、ちょうど『ラブライブ!』のプロジェクトがスタートしたタイミングだったわけですね。

木皿:そうなんです。もうμ'sのメンバーは決まっていました。いろいろと新しいことに挑戦していくプロジェクトだったんですが、最初は正直厳しくて。とにかく長い目で見て、少しずつ成功に導いて行きましょう、という意気込みでやっていました。

それで、やってるうちに少しずつ結果がついてきて、なにもタイアップを付けずにCDが3千枚売れ、そのあと5千枚になって、次第にテレビアニメ化も決まり、イベントをやったらすごい人数の応募があって。

木皿陽平

―やはり、ライブをやるようになったことが『ラブライブ!』成功のキーと言えるのでしょうか?

木皿:最初は「ライブやったら面白いんじゃない?」くらいの軽い気持ちだったんです。「できるかな?」「やれたら面白いですよね」くらいの感じ。キャストのみなさんに、「1か月で振付を覚えてください」ってビデオを渡して、最初は「え?」ってなりつつ、やってみたら、意外とできたんですよね。ダンスの出来次第では、もっと簡易的なライブにするという選択肢もあったけど、「これなら、ガチでやりましょう」と。

―それが2012年2月の1stライブだったと。

木皿:その話をしたのが2011年の秋くらいで、2月が本番って、今思うとよくできたなって感じですよね。最初はそこまで大変だとは思ってなかったんですよ。キャストのみなさんには本当に感謝です。

実際やってみたら、やっぱりお客さんがすごく喜んでくれたんです。お客さんも、まさかあんなガチでやるとは思ってなかったはず。そこはμ'sのみんながやる気になってくれて、「せっかくやるなら、穂乃果たち(『ラブライブ!』μ'sのメンバー。穂乃果はリーダー)と同じ動きがしたいよね」って、すごく頑張ってくれて、事務所さんの協力もあったおかげで、がっつりやることができました。

―実際に体験する場としての「ライブイベント」の重要性というのは、AKB48をはじめとしたアイドルブームや、ロックフェスのブームともリンクする動きだったように思います。

木皿:そうかもしれないですけど、実際はなにも気にせず作っていたんですよね。ただ、ひとつなにかあるとしたら、僕、前々から『THE IDOLM@STER』(以下、『アイマス』)がホントに大好きで。入社前の有給消化中にゲームをやり込んだり、『シンデレラガールズ』(『THE IDOLM@STER』の世界観をモチーフとしたソーシャルゲーム)にめっちゃ課金したりしていました。給料日とか、息を吐くようにお金を使いまくったりして(笑)。

『アイマス』のライブは度々観に行かせてもらっているんですけど、ホント楽しいんですよね。嫌な現実を忘れさせてくれるわけです。あそこに立ってるのは声優さんたちだけど、目を閉じなくても、そこにいるのは春香や千早(キャラクター)で。2.5次元とかとってつけたことは入れたくない。単純に『アイマス』のライブは『アイマス』なんですよ。ゲームをやるのと同じ感覚でそこにいられるのが素晴らしいと思ったので、そういうことがライブをやる上で大事だという意識はすごくありました。

木皿陽平

―いかに非日常の空間を作るかが重要だったと。

木皿:はい、そこはすごく気にしました。『ラブライブ!』はアニメなので、よりアニメの世界に浸れるようにするために背景に絵を流したり、そういった細かい工夫を考えられたのは、『アイマス』のおかげかもしれないです。

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プロフィール

木皿陽平(きさら ようへい)

株式会社ランティス 制作本部チーフプロデューサー。『ラブライブ!』では音楽プロデューサーを務める。現在は、大橋彩香、SCREEN mode、HopStepSing!などを担当している。

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