ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
本川裕の社会実情データ・エッセイ

日本の夫婦の「稼ぎと家事」の分担は世界で最も特異だ

本川 裕 [統計データ分析家]
【第22回】 2017年3月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

日本人の妻の家事負担は世界一

 日本の家事労働は妻に一方的に偏っている──。特に米国やフランス、スウェーデンなど欧米諸国と比べると、その傾向は著しいというデータがよく紹介される。実際、欧米では夫がかなり家事を分担しており、日本とは極めて対照的である。

 一方で、こうしたデータに対して、欧米的ライフスタイルに反感を持っている人々、あるいは欧米を持ち上げて庶民を驚かすのが得意な知識人に反感を持っている人々は、そもそも先祖から受け継いだ文化が違うと反論する気持ちが強いと考えられる。確かにすべて欧米の価値観に従うべきと考えるのは、それはそれで合理性を欠く。

 では、欧米以外の国々と比べるとどうなのか。

 世界価値観調査やISSP調査といった、近年、世界の多くの国で行われるようになった国際意識調査では、欧米に限らず、アジア、中東、アフリカなどまで含めて世界各国の国民性を明らかにしている。

 今回は、ISSP調査の結果から、日本人の夫婦の稼ぎ方や家事分担が欧米との比較だけでなく、非欧米圏と比較しても極めて特異である点を、夫婦の家事と所得の二面から紹介することにする。

 まず、家事負担についてだが、図1表1には、洗濯、料理といった6つの家事を主に担当しているのが、妻、夫のいずれなのか、あるいは共同か、第三者によるかという点を調べた結果を示した。

 日本は、料理と洗濯で「主に妻」の割合が、それぞれ、86.3%、88.4%と9割近くになっており、そうじ、買物、家族が病気のときの世話も7~8割と高い割合になっている。

 これらの割合は、ドイツ、フランス、米国といった欧米主要国や北欧諸国と比べて特に高いが、ヨーロッパの中でも東欧諸国やロシアなど、あるいは欧米以外でも、日本と同じように高い国も存在している。しかし、日本のランキングを調べてみると、料理、買物、病気のときの家族の世話の3つの家事で世界一であり、総じて日本は、妻の家事負担が世界で最も大きいということができる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

本川 裕 [統計データ分析家]

統計データ分析家。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師。1951年生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。同大学院単位取得済修了。(財)国民経済研究協会研究部長、常務理事を歴任。現在、アルファ社会科学(株)主席研究員。インターネット上で「社会実情データ図録」サイトを主宰。

 


本川裕の社会実情データ・エッセイ

本連載では、統計データの動きを独自に整理、グラフ化することによって、意外な社会の動きやわが国の状況を追って行きたいと考えている。もっとも堅苦しいものではなく、趣味的な個人の嗜好も含めたざっくばらんなものとしたい。体系的な思想というよりエッセイ形式で人間習俗(モラル)を観察したモラリストの伝統に連なれればと考え、連載タイトルにエッセイという用語を含めた。

 

「本川裕の社会実情データ・エッセイ」

⇒バックナンバー一覧