白杖を使う父、心無い言葉に「もう慣れた」と笑うが息子は黙っていられなかった
駅や街中で、白杖を使いながら歩いている人を見かけたことはありますか?
多くの人は「目が不自由な方なのかな」と、配慮されていることでしょう。
しかし、白杖を持った人が、駅の案内板をみていたり、スマホを使っていたりしたら…、不思議に思うかもしれません。
そんな疑問に対する答えを、お父さんが白杖を使っているサトシさんが教えてくれました。
みなさん、白杖とはどういう物かご存じですか?
多分ほとんどの方は、目が見えない人が道を手探りで歩いたりして、目の代わりのように使うものと認識していると思います。
もちろんそれは正解ですが、今回はそれだけではないということを知っていただきたいです。そのことを認知している人が少なく、困っている人がいます。
どうかこの文章に目を向けていただけた方は、最後まで読んでみてください。
「白杖は全盲の人が目の代わりに使うものではあるけれども、それだけではない。」
と語るサトシさん。
一体他にどんな人が、白杖を使っているのでしょうか。
見えない人が全て全盲というわけではない事実
皆さんは『半盲』って知っていますか?
片方の目、もしくは脳の障がいにより両目共に左半分、または右半分が見えない視覚障がいのことです。中には上半分、下半分が見えない方、中央が見えない方など、様々なケースがあります。
これらに該当する視覚障がい者の方も白杖を持っています。
あまり聞き慣れない言葉『半盲』。
片方の目が全く見えないことではなく、視界の半分が見えないことを指します。
半盲の方の視覚イメージ
半盲にはこの他にも上半分、下半分が見えなかったり、両外側が見えなかったり、両内側が見えなかったり、隠れている部分は全く見えなかったりと、様々な症状があります。
しかし、半分見えていないだけで他は見えているので白杖で道を探ったりせず、ただ持って歩いているだけという方も中にはいます。
私の父は右半分が見えない視覚障がい者で、これにあたります。
以上の話から全盲より見える部分がある半盲の方がましだと思う方は沢山いると思います。
しかし半盲の方は全盲の方にはない苦労があります。それは、「半盲の人も白杖をもっている」ということの認知度の低さによる『他人の目』です。
思い返してみると、確かに白杖を持っているにもかかわらず、それに頼らずに歩いている人を見たことがあります。
半盲の方、特に脳の病気による視覚障がい者は健常者と見た目が全く変わりません。不思議に見えるのも当然です。
そのためにジロジロ見られるし、中には知らないが故に「見えてんじゃねえか」と心無い言葉をかけられるのも何度もあったみたいです。
父はもう慣れてしまってこんなことを笑いながら話してくれますが、決していい気分ではなかったと思います。
私の周りには父以外にこのような方はいませんが、きっとどこかに同じような思いをしている方がいるはずです。
しかし、これは皆さんに認知していただけることで解決できます。
慣れてしまったと笑いながら話す、お父さん。
それを見たサトシさんは、なんともいえない気持ちになります。
父は何も悪いことをしていないのに、なぜ慣れるまで辛い言葉を言われなくてはならなかったのか…。
まずは知ってほしい!
もしそんな不思議な方をみかけたら、皆さんに少しだけ気をつけてほしいことがあります。
そういう方を見かけたら、「この人はどこか見えない部分があるんだな」と思ってください。
何もしなくても、思っていただけるだけで構いません。
そして少しだけ、人混みぶつからないようにする程度でいいので、意識してみてください。
サトシさんのお父さんも、見えない右側から突然現れた女性に、勢い良くぶつかってしまったことがあるそうです。
そして、そのことを今でも気にされているのだとか。
一人ひとりが認知してくれるだけで、救われる人がいるのです。
認知されていないと言うだけで、「見えているのに白杖を持っている」と誤解されて罵声を浴びせられている人がいるという事実は心が痛いです。
私は一人でも多くの方にこの事実が知れ渡ることを祈っています。
サトシさんは「何か行動を起こして欲しい」と語っているわけではありません。
『半盲』という言葉、そしてその症状を持った人がいることを知ってほしいと訴えています。
「白杖を歩いている人の足に当ててしまった」「気づかずに白杖を蹴飛ばしてしまった」など、白杖に関するトラブルはよく耳にします。
筆者も白杖を体験したことがあるのですが、真っ暗な室内で白杖を通して驚くほど沢山の情報が伝わってきたことは、今でも鮮明に覚えています。
「視覚に障がいを持った方々にとって、白杖は大切なものである」と強く感じました。
白杖を使うすべての人に、1日でも早く暮らしやすい日々がやってくるよう努力していきましょう!
投稿者様のお名前は希望により、仮名とさせていただきました。
[文・構成/grape編集部]