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首相は国有地売却の疑問解明に指導力を

2017/2/28付
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 大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に評価額より大幅に安く売却された問題が波紋を広げている。野党は安倍晋三首相の昭恵夫人が「名誉校長」を務めていた経緯を含めて、政治家の関与の有無を追及している。政府は深まる疑問の早期解明に向けて事実を検証する責任がある。

 森友学園は広さ8770平方メートルの国有地を小学校の建設用地として1億3400万円で随意契約で購入した。不動産鑑定士の評価額は9億5600万円で、建設工事中に見つかった地中のゴミ撤去費用などのため8億2200万円を減額したという。

 財務省近畿財務局は情報公開法に基づく売却価格の開示要求に当初は応じず、後に一転して公表した。財務省は減額分の金額を見積もったのが、伊丹空港の騒音対策の一環で土地を管理していた国土交通省大阪航空局であることも明らかにした。

 国民の財産である国有地が外部の目が届きにくい形で、しかも実勢とかけ離れた価格で取引された事実は重い。財務省はこれまでの審議で「近畿財務局と学園の交渉記録は残っていない」と説明した。政府は減額分のゴミ撤去作業がどう実施されたのかすら詳細に把握していないという。

 麻生太郎財務相は取引について「適正な手続きによって処分を行った」と繰り返し答弁している。だが経緯が不透明なままでは野党が「政治家が関与したとの疑念を持つ」と指摘するのは当然だ。

 さらに野党は学園が土地の取得に動き出した後の2014年末に昭恵夫人が学園の講演会に参加し、名誉校長に就任した点を問題視している。学園が小学校開設の寄付金を「安倍晋三記念小学校」という名称で集めていたことも明らかになっている。

 首相は衆院の審議で「私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員もやめる」と断言している。それならば政府内の調査や関係者の国会招致に自ら指導力を発揮すべきだ。どういう経緯で昭恵夫人は学園を訪れ、名誉校長に就任し、経営内容をどの程度知っていたのかなど疑問点は多い。

 今回の国有地の売却が政治家や官僚の思惑でゆがめられていたとすれば言語道断だ。国民に疑念を持たれること自体が政治不信を増大させかねない。与野党は疑惑の早期解明に向けて一致協力して取り組んでほしい。

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