ガンマ線とは何か?
ガンマ線というと放射線の一種で、波長がおよそ 10 pm よりも短い電磁波である。ヘリウム4の原子核であるアルファ粒子は一枚の紙すら通過できず、ベータ線の実態である電子では1cmのプラスチック板で十分遮蔽できるが、電磁波であるガンマ線では10cmの鉛板が必要となる。非常にエネルギーが大きい放射線である。
宇宙からもガンマ線はガンマ線バーストという形で観測されており、宇宙のあらゆる方向から、一日に数回観測されている。 ガンマ線バーストを起こす元となる仮想的な天体をガンマ線バースターと呼ぶ。2005年現在では、ガンマ線バーストは極超新星と関連しているという説が最も有力である。超大質量の恒星が一生を終える時に極超新星となって爆発し、これによってブラックホールが形成され、バーストが起こるとされる。
ガンマ線は太陽や、雷雲からも観測される。理化学研究所によれば、冬期の日本本州・日本海沿岸地域において雷雲の活動に伴い自然放射線が増える現象を調査していたところ、雷雲から10 MeV(1×10-9 mSv)のガンマ線を40秒間観測し、雷雲が粒子加速器の働きをしていることが分かった。なお、雷雲からのガンマ線量は1回の胸部X線で浴びる放射線量の2億分の1程度と計算されている。
太陽から奇妙な放射線、原因は裏側にあった
今回、NASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は、太陽の裏側で発生したフレアに伴うガンマ線を3回にわたって記録した。
NASAの宇宙望遠鏡どうしの連携により、地球からは見えない太陽の裏側で発生したフレアに伴うガンマ線が、太陽のこちら側で初めて観測された。太陽フレアに伴って放出された物質が地球に飛来すると、壮麗なオーロラが見られる一方、人工衛星を損傷したり、電力網に大きな被害を与えたりすることもある。今回の観測結果は、太陽から大量の物質が噴出する現象の解明に役立つことが期待される。
観測したのは、2006年10月に打ち上げられた太陽観測衛星「STEREO」。2007年2月6日、NASAの太陽観測衛星「STEREO」2機が太陽をはさんで180度の位置に到達した。太陽の全容を同時に観測することで、新しい太陽の姿が見えている。
もう一つは、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡 (フェルミ望遠鏡)。2008年に打ち上げられたフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は、その名のとおりガンマ線を観測するための天文衛星だ。ガンマ線は光の中で最もエネルギーが高く、ブラックホールや死にゆく星の爆発など激しい天文現象に伴って放出される。
ガンマ線は太陽フレアでも発生する。太陽フレアは、太陽上の活発な領域に蓄えられた磁気エネルギーが爆発的に放出される現象だ。この爆発により加速された粒子は信じられないほど高速となり、ごくわずかな間、太陽自体よりも強烈に輝く。
太陽の直径は地球の100倍以上あり、想像を絶するような高温になっている。地球から最も近い恒星であり、地球のすべてのエネルギーの源である太陽に、皆さんをご案内しよう。
太陽フレアは見えないのにガンマ線が飛んでいる理由
ガンマ線は、太陽フレアの発生に伴い、太陽の活動領域に近いところで生成すると考えられている。ところがフェルミ衛星は、観測できる範囲でフレアが発生していないときにも、太陽からガンマ線が飛んでくるのをとらえていた。
今、その謎が明らかになったと科学者らは考えている。フェルミ衛星と太陽観測衛星STEREO(Solar Terrestrial Relations Observatory)とが連携して、太陽の裏側で発生した太陽フレアが、表側でのガンマ線の放射を引き起こしていることを発見したのだ。
フェルミ衛星は地球の周りを回っているため、地球上の私たちと同じ方向から太陽を見ている。一方、2機のSTEREO衛星は、太陽の周りを回っているので、その表面全体をはっきり見ることができる。フェルミ衛星とSTEREO衛星は、2013年10月11日、2014年1月6日、2014年9月1日の3回にわたり、太陽の両面の活動を観測した。
米スタンフォード大学のフェルミ衛星チームの研究員であるニコラ・オモデイ氏は言う。「私たちは太陽のこちら側でガンマ線を観測しましたが、その原因となったフレアは太陽の向こう側で発生していたのです」。オモデイ氏らの国際研究チームは1月、天体物理学の専門誌『The Astrophysical Journal』に研究成果を報告した。
ガンマ線は太陽フレアのこだま
フェルミ衛星とSTEREO衛星による今回の観測で、太陽の裏側で発生したフレアに伴って放出された粒子が、磁力線に沿って移動し、こちら側の太陽表面でガンマ線の放射を急増させていることが明らかになった。
オモデイ氏は「太陽の裏側で発生した高エネルギー粒子が表側にやってくるには何十万kmも移動してこなくてはなりません」と言い、山の向こう側の花火を例にとって説明する。
「山のこちら側からは花火を見ることはできませんが、音は聞こえます。同様に、私たちは太陽の裏側で発生したフレアを見ることはできませんが、その『こだま』として、太陽のこちら側でガンマ線の輝きが増すのを観測することができるのです」
太陽の向こう側の活動領域について理解することは重要だ。太陽は自転しているため、いずれその領域が地球側に向くことになるからだ。オモデイ氏のチームが観測した太陽フレアでは、高速の荷電粒子の雲が宇宙空間に噴出する「コロナ質量放出」(CME)という現象も観測された。
この雲が広がって宇宙船や宇宙飛行士や惑星の表面に到達すると、大きな被害が生じることがある。コロナ質量放出が地球を襲う時期をあらかじめ知ることができれば、地球上の人々が被害に備えることができるし、美しいオーロラが見られる時期も予想できる。
現在、フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は、太陽のコロナ質量放出と宇宙天気の監視に役立っている。
「太陽の観測はフェルミ衛星の本来の目的ではないのですが、この分野で大きな貢献ができたのはすばらしいことです」とオモデイ氏。「このミッションの価値と、宇宙望遠鏡の重要性を証明できたことを嬉しく思います」
参考 National Geographic news: 太陽から奇妙な放射線、原因は裏側にあった
| 太陽活動と地球: 生命・環境をつかさどる太陽 | |
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