結果的には数で勝る与党のペースで進んだということだろう。2017年度予算案が衆院を通過した。
2月中に通過するのは3年ぶりだ。とはいえ、忘れてならないのは多くの宿題が積み残されたままだということだ。
衆院予算委員会が始まって以降、予算案自体の議論以上に焦点となったのは、政府が近く提出予定の組織犯罪処罰法改正案、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)、文部科学省の天下り問題の3点だった。
その論戦はどうだっただろう。
組織犯罪処罰法改正案は共謀罪の要件を絞り込んだ「テロ等準備罪」を新設するものだ。これに関する金田勝年法相の答弁はしどろもどろとなり、一時、「法案の国会提出後に議論すべきだ」との文書を公表して批判を招いた。改正案はまさに国会提出後に大きな議論になるだろう。
南スーダンのPKOでは、防衛省が開示要求されていた現地の自衛隊活動の日報を当初、廃棄したと説明しながら、その後一転して公表した。日報に記された「戦闘」の表記の解釈をめぐっても稲田朋美防衛相が答弁に窮する場面が相次いだ。
仮に衆参で与野党勢力が逆転した「ねじれ国会」であれば、与党側が「予算成立に支障をきたす」と早々と両氏の閣僚更迭を決断したかもしれない。それほど閣僚としての資質に疑問を抱かせた答弁だった。
文科省の天下り問題も全容は解明されていないのが実情だ。
そして審議終盤に浮上した学校法人「森友学園」の問題だ。なぜ国有地が格安の価格で同学園に売却されたのか。疑念は広がる一方だ。
改めて指摘しなければならないのは安倍晋三首相の答弁だ。批判されるとすぐムキになる一方で、経済政策に関しては相変わらず政府に好都合な数字ばかりを挙げて「旧民主党政権に比べてこれだけ良くなった」と自賛する姿が目立った。
アベノミクスは順調に進んでいるようには思えない。政権発足から5年目を迎え、こうした国会議論のままでは「次」には進まない。
深刻さを増す人口減少問題にどう対応するのか。そんな国民の不安に応える質疑も乏しかった。これらに関しては具体案を提示できない民進党など野党にも責任があるだろう。
米国でトランプ大統領が就任し、早々に日米首脳会談が行われる中での予算委審議だった。各種の世論調査では今回の会談を評価する声が多いためだろうか。野党の方が「今後の日米関係はどうあるべきか」の論戦に消極的だったように思える。
審議の場は参院に移る。数々の宿題をこなすため、参院での徹底審議を従来に増して求めたい。